難病発症で働き方が変化。キャリアも妊娠も諦めなくていい

2023年4月12日(水)16時45分 ソトコト

ー足立春奈さんの3つのルールー
RULE1. 23時就寝でホルモンバランスを整える
RULE2. オンとオフは切り替えない
RULE3. 人の力を借りる
Profile
ar編集長・足立春奈さん
あだち・はるな 1985年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、新卒で2008年主婦と生活社に入社。JUNON編集部で編集者としてのキャリアをスタートさせる。2012年ar編集部に異動。Webディレクターも経験しながら、2019年12月より社内最年少の同誌編集長に。5歳男児の母としての顔も持つ。



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難病発症で人生のどん底を味わうも、母の言葉で仕事復帰


フェムテックtv:足立さんのキャリアスタートについて教えてください。
足立さん:入社当初からar編集部を希望していましたが、最初に配属されたのは『JUNON』という雑誌の編集部。そこがもうすごく大変で、休みなくめちゃくちゃ働いていましたね。それからarがリニューアルするタイミングで異動になりました。
フェムテックtv:編集の仕事は休みもなければ、徹夜も多い印象です。
足立さん:しょっちゅうしていましたね。会社に2連泊して近所の銭湯に通っていたことも。会社の警備員の方には「いい加減、帰ったほうがいいです」と言われたこともあります(笑)。だけど29歳のときに体を壊して以来、無茶な仕事の仕方はやめました。“ネフローゼ症候群”という難病で、3カ月間入院したんです。そのとき“代われない仕事なんてないんだ”と思い、仕事のスタンスが一気に変わりました。
フェムテックtv:念願だったar編集部で働き始めて、数年後のことですよね。焦りはなかったのでしょうか?
足立さん:人生でいちばんどん底。“終わったな、私のキャリア……”と思いました。いきなり病院の大部屋で人と過ごすこともストレスだし、これから仕事に復帰できるかもわからない。病院の先生からは「ストレスがかかる仕事は、辞めるに越したことはない」と言われていたんです。
ただ母は「ずっといまの仕事がしたくて出版社に入ったのも知っている。あなたにとって仕事を辞めることの方がかえってストレスになると思う。たとえ大変でも、病気と寄り添って働いたほうが豊かな人生になるはず」と言ったんですね。確かにそうだなと。退院後、30代は病気と併走して働きました。
フェムテックtv:30歳のときに結婚。ライフステージが変わっていきましたよね。
足立さん:結婚して恋愛に煩わされることもなくなり仕事に邁進するようになったら、我ながら上り調子になりました。20代のときって、人のペースに合わせて仕事しなくちゃいけなかったんですよね。企画が通らなきゃ帰れないし、自分の強みもわからない。外部スタッフさんたちからも舐められている気になるというか、まだまだ新人扱い。それが30代になったら、自分のペースで仕事ができるようになりました。締め切りをすっぽかされるとか、意図をくんでくれない、みたいなことはなくなった気がします(笑)。








“いつかできたらいいな”ではできないと産婦人科に通い、妊活スタート


フェムテックtv:仕事に復帰して1年後くらいに妊娠されましたが、病気のときとは違う、上り調子のときだからこその不安はなかったのでしょうか?
足立さん:めちゃくちゃありました。“上り調子だから、子どもはいまじゃない”と思っていたんです。ただその頃、生理が1週間くらいこない時期があったんですね。“妊娠してたら今の仕事、どうしよう…!”と思った矢先、生理がきました。そのときガッカリした自分がいたんです。そこで“自分は子どもがほしいんだ”と改めて気づきました。当時、ホルモンバランスもガタガタで基礎体温も安定していないことが判明した時期。“いつかできたらいいな”なんて、悠長なことを言っていられないなと。そこから産婦人科に通い、1年後に妊娠。産休に入り、出産して半年ほどで仕事に復帰しました。
フェムテックtv:怒濤の日々ですが、さらに翌年に副編集長に昇進、同年に編集長になっていまに至ります。現在の1日のスケジュールを教えてください。
足立さん:7時半に起きてご飯の準備などをして、8時半に夫が子どもを保育園へ。そこから自分の準備をして編集部に行き、17時半には退社します。最近は息子がサッカーにハマっているので、暗闇の中で1時間ほど一緒にやるか見守って、帰宅してから夕飯づくり。息子の習い事をチェックして、お風呂に入らせて、寝かせ終わるのが22時頃です。私も23時には寝ています。以前、ホルモンバランスがガタガタのときに産婦人科の先生に取材したら「絶対に23時に寝てください」と言われて。実践したら、本当に整ったんです。20代のときより、今のほうが元気かもしれないですね。
フェムテックtv:どんなに忙しくても、睡眠は大事ですよね。日々の暮らしの中で、リラックスする時間はありますか?
足立さん:唯一、私が編集者に向いている生まれ持ったポテンシャルだと思うところが、ゆっくりする時間、ボーッとする時間は、1ミリもいらないと思うこと。その時間があるなら、寝ます。それくらい、オンとオフを切り替える時間はいらないんですよね。テレビなどもほとんど観ないので、インプットはもっぱら人に会って話を聞くことですね。
ただゴルフにはハマっていて、月1くらいでコースを回っています。いまのスコアは110くらいですが、1回でもいいボールが打てたら、それが私の実力だと思うんですよ。“次はもっと出るはずだ!”って。負けず嫌いなんだと思います。血気盛んなのを静めるにはちょうどいい時間なのかもしれません(笑)。





フェムテックtv:仕事と育児との両立はどのようにしていますか?
足立さん:とにかく人の力を借りることだなと思っていて。編集長になると、決めることが死ぬほどある。だけどそれを全部一人でやろうとすると、とてもじゃないけど手が回らない。全部の裁量権を持つのは危険だなと思うので、部下たちに譲渡し、任せています。
子育てもそう。うちは夫と私で、1日おきにワンオペ交代制にしています。一人で育てようとしない。夫が育児をしている時間は口を出さず全部任せる。変な罪悪感を持たないのも大事だなと思います。“お迎え遅くなってかわいそう”とか後ろめたい気持ちで働くより、せっかくなら、前向きに働きたい。将来、子どもが「仕事行きたくない〜」なんて思いながら仕事してほしくないですからね。“お母さんは好きでこの仕事をしているんだよ”というスタンスでいます。








産むこと、働くこと……自分の軸にあることを、メディアを通して発信したい


フェムテックtv:arがフェムケアについての企画を取り上げた、最初のきっかけを教えてください。
足立さん:うちの読者には、ボディとかスキンケア(の特集)号が売れるんですよね。arの強みってなんだろうと考えたときに“着飾るより素の自分を磨くのが好きだよね”と思いました。そうなると、生理のこととか体のことって外せない。キレイって健康の上に成り立つよねというところがきっかけです。20代の頃って“大丈夫だろう”と思って病院に行かないことは“あるある”ですが、いまはもう、秒で行きます。このまえ“目に閃光が走った!”と思って病院に行ったら「ただのドライアイです」と言われましたけど(笑)。
フェムテックtv:“気になることがあったら病院へ行く”のは、ご自身の病気の経験も大きいのでしょうか?
足立さん:そうですね。ネフローゼ症候群ってむくみが発症する病気なんですが、太ったのかなと思って病院じゃなくてしばらくキックボクシングに行ってたんですよ。そうこうしているうちに1日で(体重が)5kgくらい増えて、これはヤバイと思い、町の病院へ。「うちでは治療できない」と総合病院、さらに大学病院へ移され、即入院でしたからね。
フェムテックtv:病気を曖昧にさせてはいけないですね。ちなみにフェムケアについての企画の反響は、いかがでしたか?
足立さん:生理に関してはアンケートの戻りもいいですし、吸水ショーツなども好意的に受け止められているなと感じます。主な読者層は20代ですが、妊活に関してはまだまだ他人事のような気もしますね。
フェムテックtv:足立さん自身が愛用しているフェムケアアイテムはありますか?
足立さん:吸水ショーツですね。3日目くらいから自由になるし、ナプキンの煩わしさから解放されるし、何より産後の尿漏れにもいい。骨盤底筋の衰えは、産後の体でいちばん変わった部分かもしれないです。
フェムテックtv:確かに生理だけでなく、産後の尿漏れ対策にもいいですね。そのほかに、フェムケアで注目しているトピックスはありますか? 
足立さん:AMH検査(卵巣予備能検査)です。二人目の子どもがほしいと思っているのですが、いまがいちばんキャリアに迷っているんですね。編集長だし、だけどタイムリミットも迫っているからそんなことも言っていられないし……。卵子の数を知った上で計画を立てなければと思っています。
“妊娠ロマンティック主義”のようなものは、もうやめたほうがいい。二人が愛し合った先に妊娠するのが理想じゃなくて、いろんな形の妊娠があるのが当然という前提があれば、少し変わってくるのかもしれないと思いますね。
フェムテックtv:向き合わなければいけないことが、たくさんありますよね。足立さんは、今後どんなライフプランを描いていますか?
足立さん:一生仕事はしていたいなと思います。それが編集の仕事ではないかもしれないけれど、何かを発信して誰かのためになることはしていきたい。4月から30代女性向けのフェムケアサイトを立ち上げる予定ですが、自分のライフステージに寄り添うものをつくるのはすごく楽しいです。20代の頃は彼氏からLINEの返事がないことに悩んで、それを誌面づくりに反映するとか、それはそれで楽しかったんですけどね(笑)。





フェムテックtv:新たな媒体の誕生、楽しみにしています! では最後に、足立さんにとってのウェルビーイングな社会とは?
足立さん:私たちの生き方ってすごく多様化していて、働く、産む、休む…色んな選択肢があるけれど、そのどれも間違っていなくて、それぞれが認め合えればと思っています。
サイトを立ち上げるにあたって「子供を産んで働くことが不安だ」といったような声を多く聞くようになりました。まずはそんな不安を持った女性が少しでも減るよう、情報を発信していきたいと思っています。
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