日本は「不要な看板」だらけ? 西宮市が挑む「看板革命」、ムダな標語も街から撤去

2019年4月13日(土)11時0分 Jタウンネット

錆びて汚い、インクが剥げて一部が読めない、何のために置かれているかわからない——こうした看板を街で見かけることがある。


こうした役割が果たせていない看板を撤去する取り組みが兵庫県西宮市で行われる。その気合いは相当なもので、あまりに看板をバッサリ切り捨てているとインターネット上でも話題になっている。


啓発看板も問答無用


2018年1月1日に西宮市公共サインデザインマニュアルが策定され、既に1年以上が経過している。「公共サイン(看板類)の適正化」との取り組みは、


「情報が伝わらず美観を乱す看板を撤去」
「新たに置く際の必要な看板を設置するルール」



の2点をポイントにしている。


ネット上で突如話題になったのは前者の方。役割を果たしていない不要な看板と位置付けているが、これについて、市の公式サイトでは、


「『あいさつしましょう』など道徳やマナーを啓発する看板もよく見かけますが、本来、道路や公園、広場などの公共空間は、市の施策や啓発活動を宣伝する場ではありません。これらの啓発は必要ですが、看板を設置することでの効果は期待できません」



確かに啓発は必要であっても道路にある必要はない。ましてや、道路の看板を見て、あいさつをしようと考えることはないはず。


ほかにも錆びて文字が消えかかった看板も撤去の対象になる。


こうしたものだけでなく、必要なものであっても適正化のメスが入ることになる。「ごみのポイ捨て禁止」や「犬のフンは持ち帰ろう」などお馴染みのものに加えてゴミ捨て場の看板も新しいものに変わる。


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デザインの不統一など意図が伝わらないものを新ルールのもと「わかりやすい」ものへと変えていく取り組みだ。


あまりに見慣れすぎたため、適正化の取り組み自体が突飛に見えてしまうが赤色が退色して文字が読み取れない、経年劣化で読み取れないものが放置されていること自体が問題だ。


2019年4月11日、Jタウンネット編集部は西宮市の都市デザイン課の担当者に話を聞いた。全国的にも珍しい取り組みだが、何がきっかけだったのか。


「2015年度くらいですかね。夙川公園(編注:桜の名所で多くの人が集まる)の立て看板は数が多い、デザインが統一されていなくてわかりにくいなど問題があることがわかりました」



せっかくの景観が台無しになりかねない事態に、市は公園に限らず調査を行った。その結果、飛び出し注意、駐停車禁止など交通系の注意喚起の看板だけで市内に2500か所もあった。内容が重要であっても、多すぎてはあまり意味がない。


また、市にはこんな事情もあった。


「民間の屋外広告物に許可を出しているが、役所がポンポン看板を置いている現状は良くない。公共の襟を正す」



こうして始まった取り組みは最初の1年で協議を積み重ねてスロースタートだったが、大きく変わった場所もあった。それはゴミの集積所だ。ちょうど、ごみに関する条例が変わり、看板を変えるタイミングであったことから、切り替えを実施。市内で1万か所近くがデザインマニュアルに基づくものへ変わった。


情報量が多く、絵柄が過剰と言われていたごみ集積場の看板は、ダークグレーをバックに白抜きの文字とピクトグラムが使われたシンプルなものへ変貌を遂げた。


「高齢の方からはわかりにくい、街に色が無くなるとクレームはありましたが、若い方からはわかりやすいと好評です」



高齢者も慣れてくれば、わかりやすいと意見が変わるかもしれない。


ルールのもとで設置することでコストダウンも見込まれる。最終的に、


「説明書きが少なく、わかりやすいものを目指す」



と担当者。景観に調和する低明度、低彩度のダークグレーやダークブラウンを基調に白抜きの文字。絵はピクトグラムを使用、ないものは新たに作っていく。


ツイッターでは、


「無意味な標語や看板をバッサリ切り捨てる西宮市、最高や」
「正しい税金の使い方」



といったコメントが寄せられている。


他の自治体からもこの取り組みについて聞きに来ることもあるといい、全国的な流れになる可能性もある。

Jタウンネット

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