「劣等感」をもつことは、健康で健全である証拠。「認められようと努力する」ことは、生まれた時から始まっていた
2024年4月15日(月)12時30分 婦人公論.jp
アドラーが教える、劣等感との向き合い方は——。(写真提供:写真AC)
フロイトやユングと並ぶ心理学界の巨匠で、“自己啓発の父”とも呼ばれるアドラー。アドラーを長年にわたり追い続け、「アドラー」、「アドラー心理学」に関する著書を多く著してきた岩井俊憲さんが、数多ある本の中から選んだ、アドラーの本質を理解するための言葉をご紹介します。今回は、コンプレックスについて。アドラーが教える、劣等感との向き合い方は——。
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人間の社会文化のすべては劣等感から生まれた
「劣等感」は、異常ではない。むしろ、人間が進化していくにあたって、重要な要素だ。例えば、科学の進歩は人間が「未知のことを知りたい」「将来が不安だから備えておきたい」という願望があるからこそ成り立つ。
この欲望があり、科学の進歩があるからこそ、種としての人間の運命を改善してきているのだ。だから、人間の社会、文化のすべては、劣等感から生まれるともいえる。
『人生の意味の心理学 上』より
劣等感があるから向上心をもつ
劣等感を抱き、「不完全である」「弱い」「安全ではない」からこそ、人は目標を設定するものだ。
生まれてすぐの頃であっても、主張し、親の注目を自分に向けようとし、親からのケアを強いる傾向がある。赤ん坊のこの行為は、人の「認められようと努力する」という行為の最初の兆候ともいえる。
人は、劣等感に刺激されて向上心をもつ。成長したいと願い、そしてそのために努力しようとする。
『人間知の心理学』より
劣等感は健康の証
劣等感があることは、病気ではない。あなたが今日あるのは、劣等感のおかげだといってもいい。
むしろ劣等感をもつのは健康で健全であることの証でもある。あなたが努力を重ねて今日まで成長できた刺激になっていたことに気づいてほしい。
『生きるために大切なこと』より
劣等感が問題になるとき
誰もが劣等感をもっている。だから劣等感自体には問題はない。むしろ健全で建設的な向上心につながるきっかけになるものだ。
劣等感が問題とされるのは、劣等感から生まれた無力感があまりに大きすぎる場合だ。大きすぎて向上心まで殺してしまうと病的なものになる。
『生きるために大切なこと』より
理想に向かって向上する
「理想の状態になりたい」「向上したい」と願うこと。これこそが、人間の行動のすべての動機づけの源になっている。
この願いが、人間が生きるうえでの一本の太い線になっていて、下から上へ、マイナスからプラスへ、敗北から勝利へと導かれるように行動することになる。
そして、「理想の状態になりたい」「向上したい」という願いを、「他の人も幸せにする」「他の人も豊かにする」という方法で行動する人こそが、最も人生の課題を真の意味で克服できるといえる。
『人生の意味の心理学 上』より
「向上したい」と願うこと。これこそ人間の行動のすべての動機づけの源になっている(写真提供:写真AC)
※本稿は、『超訳 アドラーの言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです
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