「社会人2年目」手取りが減るのは本当なのか試算してみた

2024年4月17日(水)8時0分 マイナビニュース

社会人2年目になると、住民税が給料から天引きされて、手取りが減ることを知っていますか? どんな仕組みでどのくらい天引きされるのか、住民税について詳しく解説します。さらに、住民税の計算方法を知ると新たな事実が!「3年目はもっと減る?」これについてもお答えします。
社会人2年目は住民税が差し引かれる
社会人2年目になると、手取りが少なくなるといわれる理由は、社会人2年目から住民税が差し引かれることが大きく影響しています。
住民税は、その年の1月1日に日本国内に住所がある者に対して課税される税金です。都府県民税と市町村民税をあわせて一般的に住民税といいます。住民税の課税方法は、前年の1月1日から12月31日までの所得をもとにして算出した税額を翌年度に納付します。そのため、前年の所得がない新入社員は住民税の徴収はありません。住民税は後払いというわけです。
住民税は、前年の所得をもとに課税される「所得割」と、所得にかかわらず均等に徴収する「均等割」で成り立っています。
所得割は、道府県民税4%、市町村民税6%で、あわせて10%です。均等割は、令和6年度以降は、都府県民税1,000円、市町村民税3,000円、森林環境税(国税)1,000円のあわせて5,000円となっています。
*住民税の徴収方法
住民税の納付の方法には、「普通徴収」と「特別徴収」の2種類があります。給与所得者や年金受給者が給与や年金からあらかじめ差し引かれる方法が「特別徴収」です。「普通徴収」は納税者本人が自ら納付する方法です。
<特別徴収>
会社員や公務員などの給与所得者は、その年の6月から翌年の5月までの12回に分割して給与から天引きされます。前年の所得がない新入社員は住民税の徴収はなく、2年目の6月から徴収されます。また、年金受給者も「特別徴収」によって年金額からあらかじめ差し引かれます。
<普通徴収>
「普通徴収」は、自営業者など、給与所得者以外の人たちの徴収方法となります。市町村から交付された納付通知書を使用し、6月、8月、10月、翌年1月の年4回に分割して納税者が自分で納付します。
このように会社員は、会社が本人に代わって住民税を納付する「特別徴収」であるため、確実に住民税を納められる一方で、住民税がいくらなのかを意識しない、あるいは住民税を収めていることすら忘れている人もいると思います。
そこで、住民税の税額がどのようにして決まるのか、住民税の計算方法を次にみていきましょう。
住民税の計算方法
住民税は前年の所得をもとに計算する「所得割」と、所得に関係なく定額である「均等割」をあわせた金額です。最初に所得割を計算し、そこに均等割を足して住民税を出してみましょう。
1. 総所得金額を出す
収入が給与だけの人であれば、給与収入から給与所得控除額を引いた金額が給与所得になり、これがそのまま総所得金額となります。他にも収入がある人は、各収入から必要経費を引いた所得金額を合計して総所得金額を出します。
「給与収入」−「給与所得控除」=「給与所得」
このほかに収入がなければ「給与所得」=「総所得金額」になる
2. 総所得金額から所得控除の額を引き、課税所得を出す
「所得控除」は、個人的な事情を考慮して、必要経費とは別に所得から引く金額のことです。物的控除と人的控除があり、物的控除は医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除など、人的控除は基礎控除、配偶者控除、扶養控除などがあります。住民税の所得控除は、所得税の控除額と一部異なっています。
<主な所得控除の額>(所得税の控除と異なるもの)
「総所得金額」−「所得控除」=「課税所得」
3.課税所得から所得割を計算する
「課税所得」×4%=「道府県民税所得割」
「課税所得」×6%=「市町村民税所得割」
所得割額から、さらに税額控除である「調整控除」※を引きます。
※調整控除とは、所得税と住民税の人的控除に差があることで、個人の税負担額が変わることのないように、人的控除の適用状況によって決められた額が控除されるものです。
4. 所得割に均等割を足して住民税を出す
「所得割」+「均等割」=「住民税」
実際に計算してみよう
社会人2年目に、給与から徴収される住民税を計算してみましょう。
<条件>
・東京都在住Aさん(24歳会社員・独身)
・年収300万円(1年目の給与収入)
・社会保険料は45万円(年収の15%)とする
・その他の特別な条件なし
「給与収入」−「給与所得控除」=「給与所得」
300万円−98万円=202万円
参考: No.1410 給与所得控除|国税庁
「総所得金額」−「所得控除」=「課税所得」
202万円−88万円(社会保険料控除45万円+基礎控除43万円)=114万円
「課税所得」×10%−「調整控除」=「所得割」
「課税所得」×4%−「調整控除1,000円」=「道府県民税所得割」
「課税所得」×6%−「調整控除1,500円」=「市町村民税所得割」
114万円×4%−1,000円=4万4.600円
114万円×6%−1,500円=6万6,900円
4万4.600円+6万6,900円=11万1,500円(所得割)
「所得割」+「均等割」=「住民税」
11万1,500円+5,000円=11万6,500円
Aさんの住民税は11万6,500円となりました。
*毎月天引きされる金額
会社員の徴収方法である特別徴収は、12回に分割して毎月の給与から天引きされます。12分割したときに100円未満の端数がある場合は、最初の納付月に加算されます。Aさんの場合は、2年目の6月に支払われる給与から9,800円が、7月から翌年5月までに支払われる給与から毎月9,700円が天引きされます。
2年目の6月: 9,800円
2年目の7月から翌年5月まで: 9,700円
3年目は手取りがもっと減る?
所得税や住民税は、1月1日から12月31日までの1年間に得た所得をもとに計算します。そのため、4月入社の新入社員の場合、2年目の住民税の計算に使われる給与所得は4月から12月までの9か月間に支払われた給与になります。また、年2回ボーナスが支給されるケースでは、ボーナスは基本的に半年間などの査定期間をもとに支給額が決まるため、入社1年目は査定期間が足りず、夏のボーナスは支給されないか、支給があっても寸志程度である場合が多く、満額支給されるのは冬のボーナスからです。つまり、2年目の住民税の計算に使われる収入金額は、1年分の収入ではないことと、ボーナス1回分であることが多いため、2年目以降に考えられる年収より少なくなります。
入社3年目になると、住民税の計算のもとになる所得は、1年目の1月〜3月までの3か月と2年目の4月〜12月までの9か月を足した12か月間の所得となり、ボーナスも年2回満額支給されるようになるため、住民税の税額が2年目よりも増えることになります。
仮に、入社してからいっさい昇給がなければ、住民税の徴収分だけ、1年目より2年目、2年目より3年目の方が、手取りが減ることになります。
実際は、僅かながらでも昇給がある会社の方が多いと思いますので、いくらかでも昇給していれば、手取り額の減少はそれほど気にならないかもしれません。ただ、月ごとの手取り額の差(4月、5月に比べて6月以降の手取りが減ること)は意識しておくといいでしょう。
石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら

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