アート、音楽、文学…年を取ったからこそ歴史の重みが心に響く、欧州ひとり旅。散歩感覚で観光でき、気軽に食事できるカフェの多さもソロ旅にぴったり

2024年4月26日(金)12時30分 婦人公論.jp


イメージ(写真提供:photo AC)

ひとり旅は何も決めずにふらりと旅する楽しさもあるけれど、目的があれば充実度はさらにアップ。自分だけの《楽しみ》《好き》を思う存分に味わう3人の旅スタイルを紹介します。今回のテーマは「欧州」。ひとり海外旅行の達人がおススメする旅先は——。(構成=大野麻里)

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日本語が聞こえない環境で心を解放《欧州》


海外旅行の経験はほとんどなく、英会話もおぼつかなかった私が、ひとり海外旅行にハマったのは約30年前。仕事、子育て、親との関係など悩みの多い時期でした。そんな時、確定申告でたまたま20万円近くが還付されて。

そのお金を使ってしたかったことを実現してみよう、新しい視点が持てるかもしれないと、小さな頃から親しんできた海外文学の舞台、ヨーロッパへのひとり旅を決めたのです。

イギリスから東欧まで列車で周遊し、味わったことのない自由な空気に圧倒されました。夢見てきた景色やシックな街並み、そこに息づく人々の暮らしが目の前にある。日本語から遠く離れた環境に身を置き、人々との出会いを重ねるうちに、心が解放されていくのを感じました。

同時に、見知らぬ人とコミュニケーションがとれる、トラブルに対応するために行動できるという自分の力に気づくこともできたのです。

そこから1年に1〜2回、1週間を目安に、欧州ひとり旅を続けるように。その数38回。60代になった私がいまだに欧州の旅に魅力を感じているのは、アート、音楽、文学が大切にされているのはもちろん、古いものや成熟しているものに価値を置く文化が根づいているから。

それに欧州では、若者はもちろん、リタイア世代も、自らの楽しみや知的好奇心をさらに深めるためにひとりで旅することは一般的なんですよ。

バルト三国の1つ、ラトビアの首都リガでアール・ヌーヴォー様式の建物群を愛でながら歩いたり、ワインの世界的産地であるフランスのブルゴーニュ地方でぶどう畑やワイナリーをバスで巡ったり、スペインのアンダルシアでアルハンブラ宮殿の目が眩むような繊細なイスラム建築に出合ったり。

その時の感慨や興奮は今も鮮明です。年を重ねたからこそ、歴史の重みに裏打ちされたそれらの価値がより心に響いたのでしょう。

女性ひとり旅のしやすさという点でも欧州は安心です。都市部は公共交通機関での移動がしやすく、美術館、歴史的建造物など見どころが集まっているため、散歩感覚で楽しめる。またカフェ文化が定着しているので、ひとりでも気おくれせず軽食が食べられる飲食店が多いのも魅力です。

私は旅する国と街を決めると、1冊のノート(「ソリストノート」と名付けました)を用意。表紙裏に地図を貼り、中面に飛行機の搭乗番号、ホテルの住所や行き方、列車とバスの時刻表、現地語の挨拶、行きたい場所の情報などを記載します。クレジットカードの番号と緊急連絡先、パスポートのコピー、海外旅行保険で受けられる医療機関の電話番号も忘れずに。

ちなみに、私はいつも現地での大まかな移動手段(鉄道や高速バスなど)と宿だけを日本で予約しておき、日帰り旅や観劇に出かけるなどは現地で臨機応変に決めています。


イメージ(写真提供:photo AC)

安全に旅するために心がけていることも。流しのタクシーに乗らない、街歩きの際はスマホや小銭、ソリストノートをコートのポケットに入れて手ぶらで歩くなど、基本的な防犯対策は常に意識しています。秋冬は17時で暗くなってしまうので、19時までに夕飯を済ませて宿へ。

なにより大切なのは、困った時は迷わず助けを求めることです。以前スリに遭ったことがあり、その時はホテルのスタッフに警察署まで付き添ってもらったり、飛行機トラブルが起こった時は、周囲に助けを求めて深刻な事態を免れた経験も。「教えて」「助けて」とお願いすれば、誰かが必ず力を貸してくれますから。

最後に旅の予算について。私は旅を続けていくために、総額20万円に収めることをルールにしてきました。コロナ禍以降は難しくなりましたが、それでも昨年のジョージア旅行は、10日間で約25万円。最も安価な乗り継ぎ便を利用して節約しました。欧州方面は、飛行機も宿も晩秋から早春(クリスマスなどを除く)が最安値シーズンです。

宿泊費の高騰は悩みの種ですが、小規模なB&B(宿泊と朝食が提供される宿)なら、1泊6000円〜8000円程度で満足できる部屋が見つけられる。星付きのホテルとは違う、古い建物をリノベーションした宿やオーナーのこだわりが感じられる宿が多く、滞在するだけで旅の醍醐味を満喫できます。

欧州の古都はバリアフリーが充実しているとは言えませんが、困っている人に手を貸す文化が浸透しているため、私もまだまだ旅を続けられそう。39回目は、ブーツの形をしたイタリアの《踵》の地域を旅する予定です。今からワクワクしています。

おすすめ旅先3選


プラハ(チェコ)


旧市街を彩る歴史的建造物の規模と密度は欧州でも指折り。初めて訪れた時、思わず歓声を上げてしまいました。

広場や橋の上、城などで毎日演奏会が開催され、夜も安全で、女性ひとりで気楽に利用できるビアレストランが充実しているのも嬉しいところ。

ルネサンス時代の建物が集中する世界遺産チェスキー・クルムロフへも、路線バスを使って約3時間で行けます

ポルト(ポルトガル)



ポルトの街なみ(写真提供◎寺田さん)

民族音楽ファドが聞こえてくる旧市街地の小路は詩情に溢れ、世界有数の美しい書店のひとつ「レロ書店」、壁一面がアズレージョと呼ばれる青いタイルで飾られたポルト駅など、名所旧跡を訪ねなくとも街歩きが旅のメインテーマに。川沿いの老舗醸造所で味わったポートワインや、店ごとにレシピが異なるサングリアとシンプルな海鮮料理のおいしさは忘れられません

パリ(フランス)



パリのカフェ(写真提供◎寺田さん)

美術館や博物館、歴史的建造物、市場、老舗デパートなど、見どころが凝縮。ほとんどの場所に地下鉄でアクセスできて便利ですから、ひとり旅にぴったりではないでしょうか。

パサージュと呼ばれるガラス天井付きのアーケードをぶらぶらしたり、歩き疲れたらセーヌ川やサンマルタン運河の遊覧船から街を眺めたりするだけでもロマンチックな気分が倍増!

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