第一子にとって下の子誕生は、初めての大失恋。長男・長女が「自分の人生を生きられていない」と悩みやすい理由

2024年5月2日(木)12時30分 婦人公論.jp


今回は、第一子として生まれた子が置かれる環境と、その影響について(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

「兄弟姉妹」の関係性は、成長する過程で大きな影響を与えます。心理カウンセラーとして20年以上活動を続けてきた根本裕幸さんいわく、「兄姉がいるか、弟妹がいるか、また何番目に生まれたかによって、人生観や性格がある程度決まる場合がある」とのこと。今回は、第一子として生まれた子が置かれる環境と、その影響についてご紹介します。

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親の期待を一身に背負う第一子


基本となる兄弟姉妹の心理の話をしたいと思います。

スタートは第一子です。

第一子は文字通り初めての子どもですから、両親も緊張感を持って子育てに向き合います。ミルクをあげるのもオムツを替えるのも初体験ですから、どんなオムツがいいのか、断乳はどうしたらいいのか、いろいろと考え、試行錯誤します。

泣きやまなければ「どうしたんだろう?」と心配になりますし、体調がすぐれないようであれば、すぐに病院に駆け込みます。

ある程度大きくなっても、このデリケートな子育ては変わりません。

公園デビューも、予防接種も、幼稚園の入園も、習い事も、ランドセルを買うのも、すべてのイベントが初めてなのですから当然でしょう。

第一子の子育ては、このように慎重かつ丁寧になると同時に、親は子どもに対して惜しみなく愛情を注ぎます。

ただ、そうした親の緊張感が常に向けられているので、過保護に育てられることになり、その影響で第一子自身も神経質で「緊張しい」な性格になりやすいものです。

また、親がたくさん愛情を注いでくれるのはいいことですが、同時に期待もたくさんかけられます。その期待に応えるべく、良い子・優等生に育ちやすくなるのです。

このように、親との距離感が近くなるがゆえに、ときに近すぎる関係になることもあります。いわゆる「べったりな親子」です。

これには両親の夫婦仲や性格、さらには経済状況などの要素も絡み合うのですが、親の過保護が過干渉となり、なかなか自立できない子が多いのもまた、事実です。

弟妹誕生による兄姉の大きなハートブレイク


さて、ひとりっ子の場合はここで終わりますが、弟妹がいる兄姉には続きがあります。

第一子が「我が世の春」を謳歌している最中に第二子が生まれると、彼・彼女は大きなハートブレイクを経験します。なぜなら、自分だけに向けられていた両親の目が一気に第二子に向いてしまうからです。

「そりゃあ、小さい子の方が手がかかるんだから仕方ない」とわかるのは、ある程度大きくなってから。弟妹と歳の差(おおよそ5歳以上)がある場合はそれほどダメージは大きくないのですが、その差が小さければ小さいほど、親の愛情が100から0になってしまったように感じて、ショックを受けるのです。

ここで第一子は第二子に奪われた親の愛情を取り戻そうとして頑張ります。

まず第一子がとるのが、「手のかからない子になってお母さんに褒められる」という“戦略”です。お手伝いをしたり、自分のことを自分でやったり、お母さんの気持ちを読んで行動したりするのです。

もちろん、これは本心からではありません。ただでさえ弟妹に親の愛情が向いている(ように感じている)わけですから、ここで良い子になって注目を浴びたいわけです。

このハートブレイクは、まさに「初めての大失恋」と言えるほどの痛手を第一子に与えます。

「お姉ちゃん・お兄ちゃんでしょ」と言われると…


親としては上の子も下の子も平等に愛情をかけようと思うのですが、実際手がかかるのは幼い方ですから、つい上の子には甘えてしまうこともあるでしょう。

「お姉ちゃんなんだから自分でやって」「お兄ちゃんなんだから妹に意地悪しちゃダメでしょ」「お姉ちゃんなんだから弟に譲ってあげて」「お兄ちゃんなんだから我慢しなさい」

そんなふうに「お姉ちゃんなんだから」「お兄ちゃんでしょ」という言葉をかけられた人は、少なくないのではないでしょうか?

こうして、長男・長女は自分が望むことを我慢して、わがままを言わなくなります。

その結果、「自分がほしいものがわからない」という状態になりやすく、「親が喜びそうなものをほしがる」という、いじらしさを見せることもあります。

この心理が定着すると、親が望むような人生を歩む人が多くなり、大人になってから「自分の人生を生きられていない」とカウンセリングに来られる方も多いのです。

ともすると、人生の問題は親子関係にあると捉えがちなのですが、実は弟妹の存在が大きく影響していることがおわかりになると思います。

それでも弟妹は兄姉に勝てない


ここで視点を第二子に向けてみましょう。

第一子という強力なライバルがいる家族に飛び込んできた第二子は、生まれながらにして親の愛を第一子から奪う経験をします。これが人によっては「罪悪感」として心に刻まれることもあるほどです。

さて、前述のように、第二子は第一子に向けられていた親の愛情を自分に向けさせることに成功するのですが、だからと言って第一子がかつて受けていたような100%の愛情を受け取ることは叶いません。

年が近ければ近いほど第一子にだって手がかかるわけですから、50%以上は獲得できたとしても、100%には程遠いわけです。そのとき、第二子はさらに親から愛情を向けてもらおうと、第一子に対して強い競争心を抱きます。だから、何でも第一子のマネをしようとしたり、第一子の物を奪おうとしたりする。

よく弟が兄のおもちゃを取ってケンカになり、お母さんが間に割って入るシーンがありますが、まさにそんなことが日々繰り返されるのです。


第二子は親から愛情を向けてもらおうと、第一子に対して強い競争心を抱きます(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

エスカレートする兄弟ゲンカ


そこでお母さんが「あなたは大きいんだから、弟に譲ってあげなさい」と言えば、兄は傷つくと同時に弟に恨みを持つようになります。

また、弟は競争に勝って、兄に対して優越感を感じるようになります。

体の大きい兄はお母さんから見えないところで弟に復讐するのですが、母という味方を手に入れた弟は即座にそれを母に密告し、そこで兄がまた怒られる。

この争いは、日常的にどんどん激化していくことになります。

このような背景から、年の近い兄弟は小学校高学年くらいまで常にケンカすることになりやすいのです。

最近は、そうした事情を汲(く)んで「どうしたの?」と兄と弟の双方に事情を聞くお母さんも多くなりました。これなら、一方的に弟が優先されることなく、平等に扱っていることを子どもたちにわからせることができます。

そうすると、兄も兄でちゃんと自分のおもちゃを手に入れられますし、弟は弟で「お兄ちゃん、僕もそれで遊びたい」とお願いすることができるようになり、仲の良い兄弟になりやすい傾向があります。

とはいえ、第一子は自分より幼い子と一緒に育つため、面倒見がいい兄姉になると同時に、争い事を好まず、誰とでも仲良くなろうとする平和主義的な一面を持つ傾向があります。

自由で奔放な第二子に対して、穏やかで優しい第一子という関係を持つきょうだいも多く、大人になっても「何かあるとお姉ちゃんに頼る弟」や「破天荒な妹の面倒を見る兄」が少なくないのはそのためです。

※本稿は、『兄弟姉妹の心理学 弟がいる姉はなぜ幸せになれないのか』(WAVE出版)の一部を再編集したものです

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