パリ五輪内定のレスリング・藤波朱理「兄の影響で4歳から始めた。やめたいと思ったことは、これまで一度もない」

2024年5月14日(火)12時30分 婦人公論.jp


チャンピオンベルトと金メダルを手に、報道陣に笑顔を見せる。2023年の世界選手権で(撮影:粟野仁雄)

レスリング女子53キロ級でパリ五輪代表に内定した藤波朱理選手、20歳。昨年9月にベオグラード(セルビア)で行われたレスリング世界選手権での優勝が、代表選出の決め手となった。長らく負け知らずで、連勝記録は吉田沙保里さんの119を抜き133に(3月21日現在)。パリでは金メダル候補の筆頭格といわれている(取材・構成・撮影:粟野仁雄)

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ウィニングランは 父とともに涙で


これまで生きてきて一番嬉しかったのはやっぱり、初めてのオリンピック代表を決めた昨年の世界選手権優勝です。勝利が決まった直後、セコンドを務めていたコーチの父をマットに呼んでタックルしました。このパフォーマンスは事前に「優勝したらやろうね」と2人で決めていたものです。

日の丸を持ってのウィニングランに父を誘ったのは、打ち合わせなし。2人でマットの上を走る間、いつしか父も私も泣き顔になっていました。

ここまですべてが順調だったわけではありません。17歳だった2021年、初出場した世界選手権では全試合テクニカルフォール(時間内に10点以上の差で勝利すること。現・テクニカルスペリオリティー)で優勝できたので、22年には連覇を目指していたのです。

それが大会直前に怪我をして、夢は消えてしまいました。それだけに23年の大会優勝とパリ五輪出場決定の感激はひとしおでした。

23年の大会では、準々決勝でエクアドルの選手にタックルからポイントを先に取られました。国際大会では4年ぶりの失点になります。それでも、30秒のインターバルで、父から「いつも通りにいけば大丈夫だ」と言われて、落ち着きました。

怖がらずに攻めた結果、フォール勝ち(相手の両肩を1秒以上マットにつけて勝利すること)に。その勢いで決勝は、元世界王者のワネサ・カラジンスカヤ選手(ベラルーシ)に、テクニカルスぺリオリティーで勝つことができました。


2023年、世界選手権の決勝ではカラジンスカヤ選手を果敢に攻めた

テレビで見た リオ五輪の感動


レスリングは7歳年上の兄(勇飛さん。全日本選手権フリースタイル74キロ級元王者。現在は総合格闘家)がやっていたのを見て、自分もやりたくなり、4歳から始めました。それからは男の子をやっつけるのが楽しくて楽しくて。

レスリング以外の遊びをしたいと思うこともあまりありませんでした。母から「もっと女の子らしいことをすれば」などと言われたこともなかったですし。

レスリングという競技は、武器はもちろん、道具をまったく使わない「裸の人間同士の格闘技」であるところが魅力です。やめたいと思ったことは、これまで一度もないんですよ。

「将来、絶対にオリンピックのマットに立つんだ」と決めたきっかけは、中学生の時にテレビで観た2016年のリオデジャネイロ五輪でした。女子48キロ級の決勝で、アゼルバイジャンの選手にリードされて大ピンチだった登坂絵莉(とうさかえり)さんが土壇場で劇的な逆転優勝を飾った。それを観て感動したんです。

最近、その絵莉さんに食事に連れて行っていただきました。憧れの選手といろんなお話ができて、嬉しかったです。


至学館大学の出稽古で。左から父・俊一さん、藤波選手、登坂絵莉さん、栄和人監督

強豪ぞろいの名門へ出稽古に


三重県の高校を卒業後、22年に東京の日本体育大学へ進学。今年2月後半の2週間は、武者修行のため愛知県大府市の至学館大学を訪れた。オリンピック3連覇の吉田沙保里さんや4連覇の伊調馨さんが在籍した大学だ。

——高校生の頃、栄和人(さかえかずひと)監督が指導するこの道場で時折、練習させていただいていました。今回は4年ぶり。すごく懐かしかったです。

オリンピック金メダリストや世界チャンピオンが輩出してきた空間なので、パワースポットみたいな感じ。自分に力を与えてくれるような気がします。

この時期には日本レスリング協会主催の合同合宿がなかったので、私から「強豪ぞろいの名門・至学館大学に出稽古に行きたい」と言い出して、父に頼んでもらったのです。

至学館の強豪たちや、女子で2人の選手がパリ五輪代表に内定している育英大学などから来た、レベルも意識も高いトップクラスの選手たちと一緒に、密度の濃い練習ができました。栄監督からは基礎練習の大切さをしっかりと教えていただいた。出稽古の申し出を快く受け入れてくださり、感謝しています。

スタミナはあるほうだと思います。パワー不足が当面の課題でしたが、サーキットトレーニングや走り込みなどに時間を割いたことで、少し自信がついてきています。

<後編につづく>

婦人公論.jp

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