「気付くと崖の下に居て、見知らぬ男に見下ろされていた16歳の私。『とりあえず』と足を縛られたあと...」(神奈川県・60代男性)

2023年5月17日(水)11時0分 Jタウンネット

シリーズ読者投稿〜あの時、あなたに出会えなければ〜 投稿者:Tさん(神奈川県・60代男性)

Tさんは16歳の時、初めて「夜通しのツーリング」に出かけた。

そしてその途中で事故を起こしてしまい......。

<Tさんの体験談>

16歳でバイクの免許を取得し、無謀にも初めて夜通しでツーリングに出かけた時のことです。

朝方の箱根峠は濃霧で視界がほとんどありませんでした。慣れないツーリングと濃霧の中、いつの間にか睡魔に襲われて......。

目を開けると上には空が

ヘルメット越しに当たったガードレールの衝撃を今も忘れることができません。

どの位時間が経過したのか分かりません。目を開けると空が見え、何人もの人がガードレール越しに私を見下ろしていました。

「事故った!」。そう認識し、何とか立ち上がろうと体を動かそうとしましたが、首と左手以外は全く動きません。私はガードレールに衝突して10メートル近く崖を落っこちたようです。

そして近くに1人の男の人が立っていました。

「動ける?とりあえず足を縛るね、血が出てるから」

その人は私の足を縛ると、私を抱き起こし、おんぶして崖の上まで上がってくれたのです。正直、体中が痛かったのですが、反応することもできませんでした。

崖の上に戻るころには友人以外は誰もいなくなっていて、友人は泣きそうになりながら「とりあえず家に連絡してくるから」と言いました。

携帯電話のない時代で、箱根の山の中なので公衆電話もありません。友人は麓まで電話をかけに行きました。そして、気が動転していたのでしょう。私の実家がある世田谷までバイクで直接報告しにも行ったそうです。

トラックで病院まで連れて行ってくれた人に...

私は助けてくれた方のトラックの助手席に座らせてもらい、初めて自分が血だらけになっていることに気が付きました。その人は静岡の日本赤十字病院まで私を運ぶ最中、私の意識が無くならないよう「どうしちゃった?居眠り?どこから来たの?何歳?」など色々と聞いてくれました。

それでも、ところどころ意識が無くなって、記憶に残っているのは病院に着いて私を抱きかかえて病院に入るところです。

病院ではほとんど記憶がなく、翌日になりました。頭部及び全身打撲、左足裂傷、右鎖骨骨折と聞かされました。

目が覚めたときにやっと気分も落ち着き、病院の方に私を運んでくれた男性の事を聞くと、私を預けた後、名前も言わずにいなくなったそうです。

現代では考えられないことでしょう。今なら携帯電話で警察に連絡して記録は残るのでしょうが、当時は警察にも連絡しないで終わった時代です。

助手席は血だらけになっているでしょうし、私は意識がもうろうとしていたので、お礼の言葉も言っていません。

あれから何十年も経過しましたが、事あるごとに思い出し、感謝することしかできません。今私にできることとして、事故等に遭遇した時に見過ごすのではなく、おせっかいかもしれませんが、少しでもお手伝いができればと思っています。

誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!

Jタウンネットでは読者の皆様の「『ありがとう』と伝えたいエピソード」を募集している。

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(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)

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