TIS担当者は、高校生のアイデアに何を感じたのか - 『第10回マイナビキャリア甲子園』を終えて

2024年5月17日(金)16時0分 マイナビニュース

企業・団体が出題するテーマに対して、高校生チームが課題解決に挑むアイデアコンテスト『第10回マイナビキャリア甲子園』が今年も開催された。今大会には、過去最多となる1万人以上が参加。Innovation部門のファイナリストに残ったTIS代表の『バーベキューの集い』(聖光学院)も決勝大会で健闘した。
企業の担当者は、どのような思いで高校生たちの活躍を見守ったのだろうか? マイナビキャリア甲子園の協賛企業のひとつ、TISの担当者にコンテストの裏側について聞いてみた。
○■コンテストに参画した理由
話を聞いたのは、TIS コーポレートコミュニケーション部の宇津早季子さん。普段は、TISおよびTISインテックグループのブランド推進、広告制作などを担当している。マイナビキャリア甲子園では、プロモーションや審査など全体の管理進行を担当した。
——『第10回マイナビキャリア甲子園』に参画した理由について教えてください。
ヘルスケアは当社が力を入れている社会課題領域の1つです。2025年に開催予定の「日本国際博覧会(大阪・関西万博)」では「大阪ヘルスケアパビリオン」にも協賛しています。ご存知の通り「人生100年時代」と言われるようになり、人々の平均寿命が延びている現代ですが、医療・ヘスルケアには人手不足による医療現場の過重労働、通院が困難な方の診療、生活者の医療・健康データの分散など多岐に渡る課題への対応が求められています。
ヘルスケアというと、病院や高齢者の問題を想定されるでしょう。もちろん、そういった観点でのアイデアも大歓迎ですが、まずは「高校生にとってのヘルスケアとは」という視点を持ってみて欲しかったんです。私たちTISにとって「高校生に必要なヘルスケア」というアイデアは、なかなか出てきません。この領域をビジネスとして手掛けていると、無意識のうちに発想のしがらみを持ってしまい、アイデアの幅が狭まってしまうことが考えられます。そこでITもヘルスケアもまだ詳しく知らない、高校生の皆さんに考えて欲しいと思いました。できるできない、正しい正しくないは気にしないで、まっさらな気持ちで考えてもらいたかったんです。
○■テーマに込めた想い
——今年、TISが設定したテーマは『人々の健康増進や医療現場のサポートなど「ヘルスケア」をテーマに、デジタル技術を使った“未来の医療・健康サービス”のアイデアを提案せよ』でした。このテーマには、どんな想いを込めましたか?
ヘルスケアは医療を必要とする高齢者にフォーカスされやすい領域でもあります。でも実際のところ治療が必要な段階だけではなく、健康なときからヘルスケアを意識することで、あらゆるライフステージでの“健やかな生活”に結び付いていきます。
あらゆる年代・属性の人が健康に安心して暮らせるよう、ITを使ってどんなことが実現できるでしょうか? 私たちは広く目を向けていきますし、また高校生にも考えてもらうきっかけになれば、と思い今回のテーマを出題しました。
——マイナビキャリア甲子園、そして高校生に期待していたことは?
普段、ヘルスケアについて考えることが少ないであろう高校生が、ヘルスケアについて自由に課題を見つけ未来を思い描いたらどんな化学反応が起きるのか、そんなことを期待しました。具体的な課題や生み出すべき価値は規定しなかったので、かなり自由に考えていただけたのでは、と思います。
当社グループは『ITで、社会の願い叶えよう。』をブランドメッセージとしています。ITは「こんなことが出来たらいいのに」「こんな未来になって欲しいな」という願いを原動力にして新しい技術が生まれ、進化するものだと思います。そのため、テーマにも出来るだけしばりを設けず、高校生が「ヘルスケア領域でこんなことが出来たらいいのに」と、自由な願いを持てるようにしました。小説家ジュール・ヴェルヌは『人間が想像できることは、人間が必ず実現できる』と語ったといいます。まずは大きな夢を語る、これはとても大切なことです。
——実際に参画してみて、どう感じましたか?
提案のレベルの高さにとにかく驚きました。個人的には、高校生向けビジネスコンテストに関わるのは初めてだったんですが、自分の過去から想像していた高校生像と、マイナビキャリア甲子園に参加された高校生の皆さんの姿は、大きくかけ離れていました。弊社のサービスの研究はもちろん、国内外のヘルスケアの現状と課題を研究し、独自にインタビューや調査を行い、課題を設定し、ビジネスモデルを含めて解決法を提案する——。もはや同じビジネスパーソンとして『ヘルスケア領域で世の中を良くしたい』と願う仲間のように感じました。
ただ、プレゼンの舞台に立っていないときは、やはり高校生。緊張して震えている様子も見られましたし、仲間と楽しくふざけあっている姿もありました。そういったあどけなさを見ると、余計この場に臨んだことへの勇敢さを感じ、尊敬の念を抱きましたし、私たち自身ももっと世の中を良くしていくために頑張るぞ! という気持ちにさせてもらいました。
○■どのようにアイデアを磨いた?
——高校生とは、どのようにアイデアをブラッシュアップしていきましたか?
アイデア自体が素晴らしいものでしたので『なぜそれが課題と言えるのか?』『誰に対してどんなベネフィットがあるのか?』『どうやって収益をあげてビジネスとして成り立たせるのか?』といった、アイデアの裏付けを中心に一緒にブラッシュアップしていきました。
今回のテーマであるヘルスケア領域と、新規事業立ち上げの各部門長を中心に、対面とオンラインで打ち合せを重ねました。終盤には、提案の中身だけではなく、どういった順番で話したらより相手を引き付けられるか? より魅力的に伝えられるか? といったプレゼン方法の模索もしましたね。それ以外にも、ステークホルダーへのインタビューやアンケートの実施など、納得いく提案を作るために妥協せず、本当に全力でやりきってくれたと思います。
——高校生とのやり取りの中で、印象的だったエピソードがあれば教えてください。
対面での打ち合せが終わり、次の打ち合せの日程をどうしようか、と話していた際にちょうど期末試験の時期と重なることが分かりました。通常であれば日中学校で試験を受け、その後は試験勉強に時間を使うものですが、「今は試験よりこの甲子園を頑張りたいよね」と4人で頷きあい、試験勉強を後回しにしたスケジュールで打ち合せ日程を決めていました。私たちとの打ち合せだけではなく、4人でのディスカッションやプレゼン資料準備にも相当な時間を使っているはず。そこまでの気持ちで取り組んでいると知り、「絶対に一緒に優勝しよう」と私たちも一層強い気持ちになりました。
○■コンテストを振り返って
——コンテストを終えて今、どのように総評しますか。
私たちが出題したテーマに、多くの高校生が本気で挑んでくださったことがとても嬉しかったです。応募いただいたみなさん、ありがとうございました。そして決勝大会まで一緒に挑んでくれた『バーベキューの集い』の皆さん、素晴らしい挑戦をありがとうございました。本当に良い提案だったと思います。他の決勝進出チームのような派手さはなかったかもしれませんが、ビジネスとしての実現可能性も含めると一番の提案だったと思っています。
テーマ出題時のメッセージや解説で、何度か「自由な発想で」と言ってきました。IT分野では、今はないものが数年後には当たり前に存在している、なんてことがたくさんあります。そこで大切なのは「こんなこと出来たらいいな」という夢を描くことです。その期待通り、本当に自由な発想で、多くの驚くべき着眼点をもった夢のあるご提案をいただきました。私自身、審査しながら「こんなサービスあったらいいな」と何度も思い、とてもワクワクさせてもらいました。今回の甲子園は幕を閉じましたが、これからも自由な発想と夢を持って色々なことに皆さんが挑戦し、それがご自身や社会に豊かさをもたらすことを期待しています。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら

マイナビニュース

「高校生」をもっと詳しく

「高校生」のニュース

「高校生」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ