縄文時代にタトゥーはあったか ― 返答を探るアートプロジェクト「縄文族 JOMON TRIBE」が激アツ!“文様”の正体とは!?

2019年11月26日(火)17時0分 tocana

 フックを貫通して吊り下げる「ボディサスペンション」、マイクロチップやマグネット、電子機器などを身体に埋め込む「ボディハッキング」、あるコンセプトに基づいて全身改造を行ってドンデモない外観を手に入れる「コンセプトトランスフォーメーション」など、驚異の身体改造の世界を紹介し続けるケロッピー前田。そんな彼が日本国内でいま最も力を入れているアートプロジェクトが、縄文時代のタトゥーを現代に復興する「縄文族 JOMON TRIBE」だ。さて、今度はどんなカルチャーの現場を見せてくれるのだろうか?


(聞き手=角由紀子)


※ケロッピー前田 過去のインタビュー


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——縄文タトゥー、格好いいですね!


ケロッピー「ありがとうございます! 5年前からタトゥーアーティストの大島托とコラボレーションして推進するアートプロジェクトです。いま、ちょうど展覧会を開催中(阿佐ヶ谷TAVギャラリー、12月1日まで)です。早く観に来てくださいよ」


——もちろんです。これ、モデルさんたちって、どういう思いでこんなことに……


ケロッピー「ここで誤解しないで欲しいのは、これはアートプロジェクトなんです。『縄文時代のタトゥーを現代人の身体に彫る』というコンセプトが最初にあって、それに賛同したモデルさんが身体を提供してくれています。ですから、それぞれのモデルさんの個人的な思いよりも、数千年あるいは一万年というスケールの時を超え、縄文時代の文様に命を吹き込み、未来へと伝えていこうというプロジェクトの成果なんです」




——そういう壮大なスケール感が、日本の一般的なタトゥーのイメージを覆すような新鮮な印象というか、日本の歴史の古層に眠っていたものを呼び覚ますような普遍性を感じさせます。


ケロッピー「そう言ってもらえると嬉しいですね。とにかく、5千年前とか、1万年前とかに作られた土器や土偶は現代の視点から見ても非常に素晴らしい。そのように時を超えて伝えられた文様をタトゥーとして現代人に蘇生することから、その文様に秘められた意味や役割をもっと体感的に理解したり、受け入れたりできるようにしたいと思っています。まずは、最初の作品シリーズを見てください。2016年、阿佐ヶ谷のTAVギャラリーにて発表しました。これは僕らが土器のポーズと呼んでいるものです」




——これって、本当に土器みたいに見えますね! もはや人間ではないみたい!


ケロッピー「縄文時代にタトゥーがあったのかについて、たとえば、1969年に考古学者の高山純が『縄文人の入墨』という本を著して、縄文時代の土偶にみられる文様はタトゥーではないかと主張しています。僕らは土偶だけでなく、縄文土器の文様もタトゥーとして人間の身体に彫られていたんじゃないかと考えています。土器のポーズはそれをわかりやすく見せています」



——ケロッピーさんたちが推進している縄文タトゥーは、3年前に発表されたときから大きな話題になりました。不思議なのは、見慣れてくると、ますます自然に縄文のものとして受け入れられます。縄文の文様って、何なんでしょうね?


ケロッピー「ドイツの日本研究家ネリー・ナウマンは、縄文の文様は蛇だろうと主張しました。それを受けて、『月と蛇と縄文人』などの著書で縄文人の世界観を“再生のシンボリズム”とした北海道の考古学者・大島直行先生の解釈は、僕らが縄文タトゥーの復興を実践していく上で大いに助けになりました」



——大島直行先生の記事はTOCANAでも書いていただきました。実際に縄文遺跡をリサーチに行かれた話も好きなんですよ。


ケロッピー「ええ、僕らはこのプロジェクトを進めるにあたり、北海道の縄文遺跡のリサーチをしています。たとえば、函館市縄文文化交流センターを訪ねて、国宝の『中空土偶』などを見ています。上野の博物館などで見るだけでなく、実際に遺跡を訪ねるといいのは、石器や骨格器などの日常的に使う道具を見れたり、膨大な無名の土器たちと出会い、発掘現場や遺跡などを見て廻ることで、当時の条件でどんなタトゥー技法が可能なのか、文様はどのように扱われたのかについて、具体的な材料をもとに僕らなりの想像を巡らせることができます」


——えっ、この作品って手彫りなんですか?


ケロッピー「原始的な手彫りの技法もリサーチしています。タタウと呼ばれる技法ですが、垂直に針のついた棒を肌に当て、もう一本の棒で叩いてインクを入れる方法があります。もちろん、これらのタトゥー作品のほとんどすべては最新式のタトゥーマシーンで彫られています。黒の面積が多い作品がありますが、こんなに均一に黒一色で皮膚を覆いつくすタトゥーは最新式のロータリーマシーンでないと彫るのは難しいんです。縄文時代の文様をモチーフとしながら、現代的なタトゥーデザインとして仕上げていくことも鑑賞していただきたいポイントですね」




——なるほど、そうなんですね。黒の存在感がハンパないですよ。


ケロッピー「一方で、このプロジェクトは、タトゥーを通して全人類史を俯瞰するスケールを見据えています。実際、世界的にタトゥーのアカデミックな研究や先住民のタトゥーのリバイバルなどが進んでいます。『縄文族 JOMON TRIBE』は、そのようなタトゥーカルチャーの新たな潮流ともシンクロするものなんです」



—— 縄文タトゥーは、世界のタトゥーアートの動向も踏まえて生まれてきたものなんですね。


ケロッピー「たとえば、1991年にアルプスで発見された人類最古のミイラ、アイスマン。5300年前のものと言われていますが、全身に60ヶ所以上のタトゥーを施していました。その発見は、タトゥーという行為が少なくとも5千年前には行われていた証であると同時に、その行為の起源はもっと古くまで遡れることを意味します」


——おおっ、タトゥーって、いつから行われていたんでしょうかね?


ケロッピー「およそ3万年前には登場していた洞窟壁画と、タトゥーではどっちが古いのかという議論もあります。縄文に関しては、最初の文様はタトゥーとして身体に刻まれ、それがのちに土器に転写されて現代に伝えられたのではないかと僕らは考えています」


——もはや人類創世にまで立ち戻る勢いですね!


ケロッピー「僕らのイマジネーションである部分もありますが、実際にタトゥーとして彫っているリアリティは疑いの余地がないものです。つまり、単に過去のものを現代に甦らせるということではなく、縄文の文様を未来へと開かれたものとして伝えていきたい」


——なんだか、元気が出る話ですね!


ケロッピー「いま、この21世紀に日本から世界に発信するカウンターカルチャーは何かと聞かれたら、僕は“縄文”に関わるものだろうと思っています。ただ、それは従来の縄文のイメージから飛躍するもので、もっとワイルドでパンクで、自主独立の力強さを持って、日本の原始のエネルギーを解き放ってものでしょう。そんな原始の文様のパワーをタトゥーという形で観て感じて欲しいですね」


——おおっ、すごいことになりそうですね。実演パフォーマンスは30日、展示は12月1日まで、私も絶対に行きます!


(つづく)



【ケロッピー前田のイベント情報】


大島托 × ケロッピー前田「縄文族 JOMON TRIBE 2」
開催中 –12月1日(日)
TAV GALLERY(東京都杉並区阿佐谷北1-31-2)[03-3330-6881]
13:00〜20:00(水木休み)
詳しくはこちら:https://tavgallery.com/jomontribe2/


11月30日(土)17:00 – 18:00:縄文タトゥーパフォーマンス/18:00 – 19:30 (1,000円ワンドリンク):アーティストトーク:大島托 × ケロッピー前田 ゲスト:黒瀬陽平(美術家、美術批評家)


【縄文関連イベント】


※「縄文族 JOMON TRIBE 2」@TAVギャラリー観覧後、気楽にお寄りください。
ケロッピー前田 presents 縄文パースペクティブ
@阿佐ヶ谷TABASA(杉並区阿佐ヶ谷北2-13-18 マスキビル202)
詳しくはこちら:https://tabasaasagaya.tumblr.com


11月26日(火)20:00 – 22:00
大島托 × ケロッピー前田 ゲスト:望月昭秀(フリーペーパー『縄文ZINE』編集長)、山岡信貴(映画『縄文にハマる人々』監督)


11月29日(金)20:00 – 22:00
大島托 × ケロッピー前田 ゲスト:縄と矢じり(廣川慶明 草刈朋子)、ヌケメ(美術家、縄文族)

tocana

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