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2020年1月26日(日)14時0分 tocana

 宗教の自由が認められていない中国では、イスラム教徒が迫害を受け、キリスト教徒もその信仰を制限されていることは周知のとおりだ。一方で、仏教や道教といった、中国に昔からある宗教だけは例外とされてきたはずだった。ところが習近平政権になってから、それらすらも許されなくなってきている。数々の仏教寺院や道観が閉鎖に追い込まれているというのだ。ここ最近でも、中国各地の寺院で、信仰の対象となっていた仏像が当局によって撤去される例が相次いでいる。


 イタリア・トリノを拠点とする新興宗教研究センターが運営する、中国の宗教と人権をテーマにしたオンラインマガジン「BITTER WINTER」によると、昨年2月2日、河北省北部の石家荘市平山県 の崖に彫られた全長57.9メートルの立ち姿の観音像「滴水観音」が、当局によって爆破された。この観音像は、崖に彫られた観音像としては世界最大のものだったという。2001年にタリバンがアフガニスタンのバーミヤンで、約1500年前に作られた磨崖仏を爆破したこともほうふつとさせる所業である。



 ただ一方で、そうした心配が全くない寺院もある。


 イタリア・トリノを拠点とする新興宗教研究センターが運営する、中国の宗教と人権をテーマにしたオンラインマガジン「BITTER WINTER」(12月15日付)によると、河南省汝州市にある「中原一点紅」という廟がその典型のようだ。2017年に建てられたばかりの同廟には、仏像などの宗教的オブジェがない。代わりに境内に建っているのは、毛沢東像だ。2018年の開光の際には、1000人以上が集まったという。建物内も同様で、観音像の代わりに祭壇には、毛沢東と習近平国家主席の肖像画が並べられている。そこには、まるで二人が神であるかのように一心不乱に祈りを捧げる女性がいた。



 廟だけでなく、この辺りでは一般家庭でも両名の肖像画を祀っており、貧困家庭ですら貼っている。村人の話によると、住職は昨今の風潮にしたがっているだけだという。他の廟や寺院が破壊されても、毛沢東像さえあれば迫害を受けることはないからだ。


 河南省平頂山市郟県にある仏教寺院では、6年前から毛沢東像と国旗を掲げている。同県に住む仏教徒の一人は、「もし五星紅旗と毛沢東像がなければ、その寺院は邪教とみなされる。現在では、それらを祀っている寺院こそが正しいのだ」と説明。まるで“踏み絵”である。また、別の高齢の仏教徒は、「毛沢東の時代は、宗教による信仰を一切排除し、毎日彼こそが救世主であると歌わされていた。それがいまや、習近平が宗教の信仰を取り締まっている。彼らは神はいないと叫び、自身が跪いて拝まれる対象になろうとしている」と嘆く。


 習近平政権が行っているのは、中国版“廃仏毀釈”といったところだろうか。この動きがさらに広がるようであれば、チベット仏教徒との衝突にまで発展しかねない。


参考:「Bitter Winter」「YouTube」

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