筆記具の動きで集中力の予測が可能に…三菱鉛筆ら実証実験

2023年6月12日(月)18時45分 リセマム

実測した脳波と、予測脳波の時間順プロット

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三菱鉛筆は2023年6月9日、東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二教授とストーリアとの実証実験により、筆記具の加速度データから集中力を予測できることが判明したと明らかにした。教育や作業などの場面で応用できると考えられるという。

 三菱鉛筆では今回、東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二教授とストーリアとの共同研究として、筆記具の動きと脳波を記録し、筆記具の動きから脳波を予測する実証実験を実施した。

 実証実験では、筆記具に装着し加速度を測定できるアタッチメント型のIoT機器として、ストーリア製の試作品「Penbe」を使用した。筆記動作をセンシングできるようにし、筆記動作センシングと同時に、脳波計を被験者に取り付け、集中力やタスクパフォーマンスとの関連が知られている脳の前頭葉のガンマ波成分を計測。筆記動作(加速度)とガンマ波について、ディープラーニングの1つである「長短期記憶ニューラルネットワーク手法(LSTM手法)」を用いて、時系列的に分析した。

 アラビア語学習経験のない被験者を対象に60分間アラビア語の書き写しを行い、その後10分間ずつ絵画と数理クイズのタスクを課した。アラビア語を書き写す60分間では、集中を阻害するため、外部から各種の妨害(動画視聴やフリートーク)を行った。

 その結果、外部から妨害を行った時間帯は、妨害の少ない時間帯に比べて、ガンマ波強度/デルタ波強度比率の平均が低いことが判明。ガンマ波強度/デルタ波強度比率が、集中度合いの指標として用いることが妥当と確認できたという。

 筆記動作からLSTMネットワーク手法を用いて予測したガンマ波強度/デルタ波強度比率と、実際のガンマ波強度/デルタ波強度比率は、時系列変化の推移がほぼ一致することを確認。ガンマ波強度/デルタ波強度比率が0以上になる時間帯を「集中」、0以下になる時間帯を「不集中」と分けると、感度(実測した脳波に対し、筆記動作から正しく予測できた割合)は83.0%になったという。

 三菱鉛筆では「この実験によって、LSTM手法を用いて筆記具の加速度データからデルタ波を予測できることが示された」と考察。脳波を直接測定することなく、日常的に使用する筆記具から脳内の状態を予測できることを意味しており、教育や作業など、さまざまな場面で応用できることが考えられるとしている。

 実験を踏まえて、三菱鉛筆研究開発センター品川は「日常的な筆記の動きによって、集中力を予測することができるようになれば、より簡便により多くのデータを収集することにつながり、これらのデータを用いて、より質の高い教育の実現をはじめとする多様な社会的課題解決の可能性をも探ることができる」とコメントしている。

 研究成果をまとめた論文は、2023年度人工知能学会全国大会に採択された。

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