侍ジャパン次期監督選びが難航中…大谷翔平との関係性がカギ

2023年6月22日(木)10時0分 JBpress

 やはり難航している模様だ。野球日本代表・侍ジャパンの次期監督候補が各方面で乱立している。

 今年3月の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本を3大会ぶりの世界一へ導いた栗山英樹監督は水面下で続投を強く求められていたが、任期満了で退任。侍ジャパンを統括するNPB(日本野球機構)およびNPBエンタープライズ側は新監督の選任を8月中に決める意向を示しているものの、事はそう簡単に進みそうもない。


「連覇」の重責

 候補者たちにとっては2026年の次大会WBCでも連覇が求められる侍ジャパン次期監督の重責が逆に大きな足かせとなっており、諸手を挙げて自ら火中の栗を拾いに行くような人材は現在までのところ誰もいないという。代表選手らとの人間関係や最も肝心な手腕も候補者の選定作業を行っていく上で慎重な判断材料となっていることから今も足踏みが続いているようだ。

 一部メディアからはシアトル・マリナーズで会長付特別補佐兼インストラクターの役職に就くイチロー氏と、そしてニューヨーク・ヤンキースでGM特別アドバイザーを務めている松井秀喜氏の名前も侍ジャパン次期監督候補として取り沙汰されている。だが、この両氏については「まずない」とみていい。

 まずイチロー氏はマリナーズの現職として多忙を極めており、仮に侍ジャパン監督のオファーを引き受けるとなれば20026年のWBCまで活動の拠点を米国シアトルから帰国して日本に移さなければならなくなる。マリナーズを退団するか、あるいは長期休職を申し入れて了承してもらうかの選択肢しかないだろう。

 まだNPBエンタープライズが創設される以前の日本代表ならばまだしも、今の侍ジャパンで監督業を担うとなれば二足のワラジの片手間では到底不可能だ。何よりイチロー氏自身は「現在のライフスタイルにとても満足している」と周囲に漏らしているという。

 ちなみに侍ジャパンの監督は大会や壮行試合、合宿期間中のみチームに帯同すればいいというわけではなく、キャンプ中やレギュラーシーズン中も代表メンバーをチェックするためNPB各球団の視察に奔走しなければならず、スポンサー回りやメディア取材なども含めればほぼ年間を通じてスケジュールがビッシリと詰まっており、想像以上の激務にさいなまれることになる。


下馬評に挙げられる松井秀喜氏、選手時代にはWBCの出場経験なし

 松井氏も同様だ。現役引退後はニューヨークを拠点にヤンキースの現職だけでなく、主に子どもたちを相手に日米で野球教室を定期的に開催しながら野球界の発展と振興に務めている。

 さらに松井氏は家族と過ごすプライベートをとても大切にしており、たとえオファーがあったとしても愛する奥さんや子どもたちと長期間離れ離れになる日本での単身赴任生活を選ぶとは到底思えない。

 松井氏自身もつい先日、ニューヨークで行われた野球教室で取材に応じた際、侍ジャパンの次期監督候補に自らが挙げられていることを質問され、一笑に付しながらやんわりと否定している。

 そもそも松井氏は「ここまで再三にわたって自身の名が候補者として挙げられている古巣の巨人監督にもまるで興味がなく、どちらかと言えばヤンキースでのコーチ業のほうに関心がある」ともっぱらだ。かつての現役時代に所属していたヤンキースからOKをもらえずWBCには一度も参加しなかった松井氏がいきなり“無縁”の侍ジャパン監督に就任するというシナリオ自体にも、やや無理がある感は否めない。


現時点の最有力候補は工藤公康

 さて、そうした中で浮上してきているのは「最有力候補」として取り沙汰されている工藤公康氏である。

 現役時代は西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)、福岡ダイエーホークス(現福岡ソフトバンクホークス)、巨人、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)で活躍。現役引退後はソフトバンクの監督を務め、チーム黄金期を作り上げ「名将」としてその名を轟かせた。クライマックスシリーズ、日本シリーズでも勝負強さを発揮し「短期決戦の鬼」と称されてもいる。

 2016年には野球殿堂入りも果たし、2022年シーズンでソフトバンク監督を退任して以降は野球解説者に身を転じてフリーの立場。現況と過去の実績も加味すれば「最有力」と持てはやされるのも十分にうなずける。

「ただ、工藤氏本人があまり乗り気ではないらしい」との情報も球界内部では飛び交っており、やはり当人としても日の丸を背負い込む日本代表指揮官の激務に対し、易々とは決断が下せず二の足を踏んでいるようだ。

 どうやらそうした背景には工藤氏に複数のNPB球団も来季以降の次期監督候補として触手を伸ばそうとしているといわれ、それも同氏の決断を鈍らせ、躊躇させる要因につながっているのではないかとの見方もある。

 他の候補者としては前巨人監督の高橋由伸氏や、2009年の第2回WBCで日本代表を世界一連覇へと導いた元侍ジャパン監督でもあり現巨人指揮官の原辰徳監督の名前までも持ち上がってきている。

 しかしながら高橋氏は過去の巨人監督時代に3シーズン一度も優勝できず辛酸を舐めた苦い経験からネット裏の評論家として野球を見つめ直したいという思いが強く、現場復帰には消極的だ。

 しかも同氏は実際、2021年東京五輪まで侍ジャパンを率いた稲葉篤紀前監督からバトンを引き継ぐ有力後任候補として栗山監督就任の前に名前を挙げられたこともあったが「強い難色を示し、結局断った」と言われている。

 一方の原監督も今季限りで巨人の監督を途中退任して今年11月以降は代表監督一本に専念するのであればともかく、まだ球団側との3年契約があと1年残されている。前回と同じ兼任監督が現在の侍ジャパンでは不可能であることぐらい、経験者の原監督ならば百も招致であろう。

 では、他に誰がいるのか。


メジャー経験のある吉井理人氏は適任だが

 千葉ロッテマリーンズの現指揮官で第5回WBCでコーチを務めた吉井理人監督を推する声もあるようだが、今年で就任1年目の同監督も原監督と同じく“兼任”のまま侍ジャパンを率いていくのはやはり余りにも無謀過ぎる。

 ただ吉井監督は元メジャーリーガーでもあり、MLBも当然知り尽くしているだけに3年後の次回WBCでも主戦メンバーとなる大谷翔平投手(現ロサンゼルス・エンゼルス)や吉田正尚外野手(ボストン・レッドソックス)、鈴木誠也外野手(シカゴ・カブス)、同年8月には39歳となるもまだまだバリバリやれそうなダルビッシュ有投手(サンディエゴ・パドレス)、あるいはロッテ所属の佐々木朗希投手とのコミュニケーション面も考えれば、これ以上の人材はいない。


井口資仁氏、井端弘和氏の名前も

「吉井監督が難しいならば、同じ元メジャーリーガーでシカゴ・ホワイトソックス時代にはレギュラーとしてワールドチャンピオンにも輝いた実績も誇る前ロッテ監督の井口資仁氏が適任。井口氏を推薦し、猛プッシュする有識者や有力な球界関係者は結構多い。

 大谷を筆頭とした日本人メジャーリーガーと顔を突き合わせて監督と選手の関係性を築き上げていく上で侍ジャパンの次期監督に“MLB経験者”の経歴があることは間違いなく大きなアドバンテージになってくる。

 それから、もう1人は中日、巨人で活躍し、巨人では内野守備走塁コーチも務めた井端弘和氏。

 現役時代は侍ジャパンの一員として第3回WBCにも参加し、2017年の一時期には稲葉ジャパンでコーチに就いていたこともあった。昨年はU-12野球日本代表監督に就くなど野球を知り尽くす優秀な指導者だけに『井端を日本代表の監督として任せてみてはどうか』とプッシュする意見はWBC東京ラウンドを主催する巨人の親会社・読売新聞グループ本社サイドから特に聞こえてくる」(侍ジャパン関係者)

 果たして混沌とする“侍ジャパン次期監督レース”の行方はどうなるのか。次期監督を決定する上で二刀流起用となる大谷を筆頭とした日本人メジャーリーガーとの関係性も重要なポイントとなるのは間違いない。

筆者:臼北 信行

JBpress

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