「学生時代、制服を裂かれたことがある在日韓国人の母。『この人よ!』と泣きながら持ってきた記事で紹介されていたのは...」(東京都・20代女性)

2023年7月6日(木)11時0分 Jタウンネット

シリーズ読者投稿〜あの時、あなたに出会えなければ〜 投稿者:Mさん(東京都・20代女性)

その日、Mさんは課題のために記事を印刷していた。ある男性のことが書かれていたという。

それを見た母親が「この人、この人よ!」と言いながら涙を流しはじめ......。

<Mさんの体験談>

ある日、私が課題をコピーしていたら、母が印刷された記事を持ってきました。

「ありがとう」と言って受け取ると、母が「この人、この人よ!コートの人は!」とポロポロと泣くのです。

何度も聞かされた母の過去

「コートの人」と聞いて、子供の頃から何度も聞かされた母の過去を思い出しました。

母は在日韓国人で、学生時代、下校中に制服を裂かれたことがあったそうです。

当時は、あちこちで同じような事件が起きていましたが、まさか自分にも起きるとは思っていなかった母。制服を破られ、ひどい言葉をぶつけられ、立つこともできず......。

幸いケガはありませんでしたが、恐ろしさと恥ずかしさでずっとしゃがんでいたそうです。

そんな母に学生服の男子高校生が近づいてきました。

男性が近づいてきたので、周りの女性も母も身構えていたのですが、その男子高校生は着ていたコートを脱いで、「よかったら、どうぞ」と一言だけ言い、渡してくれたのだとか。

母はその人からもらったコートを上に着て、無事に帰宅できたのです。

コートの人は、いま...

それから30年、母は今でもそのコートを大事にしまっています。そして、衣替えになると、コートを見つけては、思い出を語るのです。父も私も、「また、その話か」と思いつつも、静かに聞いています。

コートの人がいなかったら、もっと悲しい思い出として残っていたと思います。もしかしたら、母の初恋だったのかもしれません。

コートの裏に書いてある名前を頼りに、助けてくれた人を探そうとしたこともあったらしいのですが、結局、恥ずかしさや怒り、日本人と韓国人、身の危険など、さまざまな葛藤があって探すことを諦めていたそうです。

記事には、母を助けてくれた人が現在何をしているかが書かれていました。東京で母子家庭や恵まれない子供たちの支援をしているそうです。母は「やっぱり、こういう人だったんだ」と嬉しそうでした。

私の課題から、母が思い出の人を見つけるなんて、タイムマシンのようだと感じています。母にとっては、それ以上だったと思います。

冬の日に、あなたが母を助け、それから母はずっとあなたに感謝していました。あなたのおかげで、母は日本人を嫌いになれなかったそうです。

それから、母は日本人の父と結婚して、私が生まれました。今、私は日本で暮らし、学んで、恋をしています。あなたが母を助けてくれたおかげで、今の私があります。

30年前のコートの人へ、ありがとうございました。

誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!

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(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)

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