不倫、セックスレスより増える「不仲」問題、変わる夫婦像、離婚はアリなのか?

2023年7月27日(木)6時0分 JBpress

 夫婦の形が多様化するなか、ごく普通の夫婦に「夫婦カウンセリング」を受ける人たちが増えている。

 カウンセリングというと、こころの診療においてカウンセラーが相談者の悩みに耳を傾け、面談を繰り返し、助言したり気づきを与えたりすることで問題を解決していく行為を想像する人が多いかもしれない。

 しかし、カウンセリングを必要としているのはこころの悩みを持つ人だけではないのだ。

 いま夫婦はどんな問題に直面しているのか。

 2000組の夫婦をサポートしてきた夫婦カウンセラーであり、現在話題になっている書籍『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』 (SYNCHRONOUS BOOKS)の著者でもある安東秀海さんに夫婦が抱えている問題について聞いた。全3回の第1回。

(文・曽我部健)


コロナ以降に急増している夫婦の「不仲」とは?

 夫婦関係の問題と聞いて、多くの人が思い浮かべるのが不倫や浮気だろう。

 しかし、夫婦カウンセラーの安東秀海さんはカウンセリングの傾向として「コロナ禍以降、変化がある」と語る。

──夫婦カウンセリングに変化がある、その傾向とはなんですか。

「不仲」です。ささいなことでケンカになり、口もきかない期間が長く続くような著しく関係がこじれてしまった状態を指します。

──夫婦仲がよくないということは、何か理由があるのでは? それこそ不倫・浮気だったりセックスレスだったり。

 もちろん理由は細かくいろいろとあるはずなのですが、「コレ」といったはっきりとした原因がないのが「不仲」の大きな特徴です。

 例えば離婚がテーマになるような相談の場合、以前までもっとも多かったのが「不倫・浮気」をきっかけとするもので、全体の3割近くを占めていました。

 その次に相談が多かったのが「価値観の違い」「モラハラ」「育児方針の違い」「セックスレス」などです。

 いずれも問題の性質としては、非常に具体的ですよね。

 はっきりとした原因があり、それによって夫婦関係に大きな問題が生じているわけです。しかし、いまご相談が増えている「不仲」は少し違います。

──具体的に何かあったわけじゃないのに夫婦仲が悪い?

 不倫や浮気で夫婦仲が悪くなるのは、ある意味当たり前の話です。

 一方、「不仲」にはそうしたわかりやすい原因が存在しません。顕在化した大きな問題がないにもかかわらず、ちょっとした口論や、行き違いをきっかけに1カ月も2カ月もお互い口をきかない、話かけても相手に無視される。こうした相談がとても増えています。


妻が夫の考え方を許せなくなった理由

 安東さんによると、「不仲」の原因のひとつと考えられるのはコロナ禍以降に多くの企業が取り入れた在宅ワークだという。

 お盆休みや年末年始の休みに夫婦で久しぶりに長時間一緒に過ごしたらケンカになった、というのはよく聞く話だ。同じ原理から、コロナ禍以降の在宅ワークで夫婦仲が悪くなり、「不仲」にまで発展してしまう夫婦が増えているようなのである。

──かりに1週間以上も妻に口をきいてもらえない夫がいるとしましょう。問題を解決するためにどうアドバイスしますか。

 夫婦関係の問題というのは、3つの階層で捉えると理解しやすいと思います。まず表層にあるのが「コミュニケーションの問題」で、その下の中層にあるのが「考え方・価値観の違い」、そして、もっとも深い層にあるのが「感情のわだかまり」です。

──コミュニケーションの問題、考え方の違い、感情のわだかまりの3つの層。それぞれの階層はどのように違うのですか。

 今回の「不仲」でいうと、夫婦間でケンカが増えたり、相手が口をきいてくれなかったりというのがコミュニケーションの問題に見えます。

 ただ、コミュニケーションの問題というのは表面的なことで、妻が怒って1週間も口をきいてくれないとしたら、原因を振り下げて考える必要があります。

──その原因が「考え方の違い」であり「感情のわだかまり」ですすか。感情のわだかまりだったら、わだかまりを解けば問題が解決しそうですが、考え方や価値観の違いはやっかいです。

 ところが、逆なんです。

 人間は誰しも考え方や価値観が違うもので、その違いは夫婦になってから突然生まれたものではありません。人それぞれ考え方が違うのは当たり前なんですね。

 場合によっては違うことをわかったうえで結婚している。だとすれば、本当の問題は、以前なら許せていたこと、気になっていなかったことが、いまは許せなくなっていること。

 なぜ考え方や価値観の違いを「許せなくなったのか?」ということです。

──それが一番下の層にある「感情のわだかまり」?

 そうです。夫婦をめぐる問題の多くは、この「感情のわだかまり」が作用していると言っても過言ではありません。

「感情のわだかまり」が口をきいてくれない原因だとすれば、相手(夫はあるいは妻)はそこを考える必要があります。


妻の怒りの裏側には「心の傷」がある

 とはいえ、感情のわだかまりを解いて夫婦関係を改善するのは簡単なことではない。そのわだかまりというのは昨日今日生まれたわけではなく、長い時間をかけて少しずつ妻の心の中に蓄積され、複雑に絡み合ってきたものかもしれないからだ。

──どうやってわだかまりを解消すればいいのでしょうか。

 まず理解しておく必要があるのは、感情のわだかまりは深ければ深いほど解けるのにも時間がかかり、相応のエネルギーを必要とするということです。

 場合によっては1年以上かかることもあるかもしれません。夫婦カウンセリングでも、「感情のステージ」にはもっとも多くの時間を費やします。

──なるほど。夫(あるいは妻)側の意思や覚悟が問われそうですね。

 わだかまりを解くのに1年や2年もかけるくらいなら、離婚したほうがいいという判断もありうるでしょう。

 たとえば、子どものいない30代の夫婦で、遠くない時期に子どもをほしいと思っているようなケースでは、時間をかけてわだかまりを解くより別々の道に進んだほうがお互いに幸せかもしれません。

 ただ、夫婦関係を改善する意思があるなら、必ず方法はあると思います。

──具体的に教えてください。

 パートナーが口をきかないのは、多くの場合、あなたに怒っているからです。だからといって、それを恐れたり、自身も「怒りモード」で接すると、当然うまくいきません。

 では、どうするのか。

 ここでは「こんなに怒るくらい、妻(または夫)は傷ついているんだ」と理解をしてみることです。

──妻が1週間以上も口をきかないくらい怒っているのは、心が傷ついているからだと。でもそれは「私に」でしょうか。

 「夫(または妻)側」に原因がない場合もあるかもしれません。でも怒りの感情の裏側には「傷」があります。

 いったい妻(または夫)は何に傷ついているのか?

 まずはよく考えてみることが大事です。何か気づきを得られることがあるかもしれません。もし気づくことがなくても、妻(夫)を理解しようとする、その「姿勢」が状況を変えることがあるんです。

 次回は、相談に応じた具体的な事例を紹介していく。(第1回ここまで)

筆者:安東 秀海

JBpress

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