妻の不倫発覚、修復は不能なのか? 夫が絶対にやってはいけないこと

2023年8月4日(金)6時0分 JBpress

 共働きなど大きな社会の変化の中で「夫婦」の関係はどうあるべきなのか。

 2000組の夫婦をサポートしてきた夫婦カウンセラーによる『夫は、妻は、わかってない。夫婦リカバリーの作法』 (SYNCHRONOUS BOOKS)が話題だ。

 著者の安東秀海氏によると「妻の不倫・浮気」に対する相談が増えているという。最近では有名女優の不倫が発覚し大きな話題となった。

 果たしてその背景は? 夫婦のリカバリーは可能なのか。安東秀海氏へのインタビュー、全3回の第2回。

(文・曽我部健)


妻による不倫・浮気はなぜ増えているのか?

 前回は、浮気やセックスレスなどのはっきりとした原因がないにもかかわらず、著しく夫婦関係がこじれてしまった「不仲」の相談がコロナ禍以降に増えていることを紹介した。

【前回:不倫、セックスレスより増える「不仲」問題、変わる夫婦像、離婚はアリなのか?】
 一方、夫婦カウンセリングの相談内容で、依然として多いのが「不倫・浮気」。安東氏の相談においては全体の3割を占めている。

 特徴的なのは、妻の不倫や浮気に悩んでいる夫たちだ。
──妻の不倫や浮気と聞くと、広末涼子さんの騒動が思い出されます。ああいうケースが増えているのでしょうか。
「男性の不倫や浮気に様々なケースがあるように、女性の不倫や浮気にも様々なケースがあります。広末さんのような、と一括りにしてしまうのはちょっと乱暴ですが、妻側の浮気や不倫をきっかけにカウンセリングにお越しになるご夫婦は増えています。
 また、以前は女性がカウンセリングにお越しになり、その後、夫が連れてこられるケースが圧倒的に多かったのですが、ここ数年は男性がおひとりでカウンセリングを利用されるケースも多くなっていますね」
──妻の不倫や浮気が増えているのはなぜでしょう。
「『増えた』と言えるかどうか。

 夫婦カウンセリングが認知されるにつれ、私たちのところにご相談にいらっしゃるケースが増えているということなのかもしれませんので、女性側の不倫だけが増えているとも考えていません。
 ただ、男性の浮気には、気持ちの伴わない、いわゆる身体だけの関係が一定数含まれるのに対して、女性の浮気や不倫の多くは精神的な繋がりや充足感を求めてのケースが多いようです。

 そういった傾向を考えると、結婚生活や夫婦関係で、満たされないものや何か精神的な空白のようなものを抱えている女性が増えているのかもしれません」


妻たちの埋まらない「心の空白」

 なぜ妻たちは不倫・浮気をするのだろうか。長年、カウンセリングをしていてこれまでと現在で何か変化があるのか。安東さんはその理由のひとつに妻の「心の空白」があると指摘する。
「私たちの親世代なら、外で働き稼ぐことは父親の役割、家庭を守り育児の中心にいるのは母親、という家庭が一般的でした。

 もちろん共働き家庭もありましたが、こと夫婦の役割という意味では定型のようなものかあったのではないかと思います。

 それが現在では様々な働き方や家族のカタチがあって、夫婦の役割にも定形がなくなってきています。

 例えば、共に育休を取って夫婦一緒に育児をしている家庭もあれば、夫がメインで育児をする家庭もあったりします。ワンオペ育児は誰にとっても負担の大きいものだと思いますが、それでも見渡す限り多くの家庭がそうであれば、違和感を感じることさえないかもしれません。

 いっぽう、隣の家庭ではお父さんが積極的に家事を担っている。公園に行けばパパが抱っこ紐で赤ちゃんを連れて来ている。そんな姿を見ると、なんで我が家は、と心がザワつくのは自然なことかもしれません。

 満たされない気持ちというのは、周りと比べることでより大きく重く感じられるようになるものです。

 男女を問わず、浮気や不倫の背景には夫婦間で満たされない心の空白を、外の関係性で満たそうとする心の動きがあるのだと思いますが、浮気や不倫には至らなくとも、夫との間に埋まらないものを抱えている女性は増えているように感じています」

──夫が仕事ばかりしていて一緒にいてくれないとか?

「それもひとつですね。あと、育児のパートナーとして関わってくれない、子どもの母親としてばかりで女性として扱ってくれないというのも満たされない気持ちを生み出す場合があります。
 最近の相談で象徴的なのが「夫が家にいるのにいないように感じてしまう」というケースです。
 コロナ前までは夫が仕事ばかりなのが不満だと思っていた。ところが、在宅ワークになって夫がいつも家にいるのに、まるでそこにいないかのように感じてしまう。
 夫がそこにいるのに実態がないように感じてしまう、というケースは少なくありません」
──妻に関心を抱かず、背中を向けてしまっている。
 はい。一緒にいるのに、関心事が仕事やほかのことにばかり向いているなら、それはいないのと同じことです。
──そうやってどんどん心の空白が大きくなっていく。
「そうですね。そんなとき、自分に対して大きな関心を示し、エネルギーを注いでくれる相手が現れたら。気持ちを大きく持っていかれてしまうことも、あるのかもしれません」


「探りすぎ」は心の傷を広げるNG行為

 相手はどんな男か、どんなやり取りをしてどこに行ったのか——。
妻が不倫や浮気をしていると知ったら、きっと多くの男性は妻を追及し、その行動を徹底的に調べたくなることだろう。
 しかし、安東さんは言う。
「『探りすぎ』は浮気された側が取ってはいけない行動のひとつです」
──なぜ妻の行動を探りすぎることがNGなのでしょうか。
「浮気した側とされた側の当事者同士での対話は、とかく情報収集になりやすいものです。
 どこに行っていたのか、そこで何をしていたのか?
 こうして相手の行動を探っていくのは、結果として傷ついた気持ちを余計に傷つけ、傷口を広げることになりかねません」
──なぜ傷口を広げることになるんですか?
「浮気の中身や詳細まで深く知りすぎることは、身体で喩えると『痒いところを血が出るまで掻いてしまう行為』と似ています。

 一時的にスッキリしたり、気持ちが落ち着くように感じることもありますが、知らなくて良いことまで知ってしまうリスクもあります。知ってしまった後で『聞きたくなかった』と後悔しても、一度聞いてしまったショッキングな情報を記憶から消すことはできませんよね。

 そうしてまた傷つくと、結果として心の回復を妨げることにもなりかねません。
 不倫相手と直接話すことも避けたいところです。

 ショッキングな出来事があると、思考が緊急事態モードに切り替わる場合があります。そのモードでは却って冷静さを保てたり、苦しい気持ちも感じにくかったりします。

 どこからか活力が湧いてきて浮気相手に連絡を取ったり、弁護士と今後のことを協議したり、とテキパキ行動できたりもします。

 案外平気なのかな、と思うかもしれませんが、これは辛い気持ちから距離をおくことで自分を守ろうとしている心の防衛策なのかもしれません。

 だとしたら、つらい気持ちにフタをしているだけの可能性があります。気づかないうちにダメージが蓄積されて、ということもありますから、まずは傷ついた心をケアすることが最優先です」

──妻との会話はどうでしょう。

「もちろん状況にもよりますが、「なぜ」「どうして」と、どんなに配慮しても詰問口調になりやすいものでしょうし、攻撃的な言動になってしまうのもムリはありません。

 できれば発覚直後は深く話し込むようなことは避けたいところです」
——話し合い自体、しないほうがよさそうです。
「いえ、夫婦での対話がすべて良くないということではありません。浮気や不貞行為の中身、どこで会っていたのか、何回会ったのか、のように詳しく聞き出すことは避けておきたいということです」
──浮気や不倫について聞き出さず、どんな話し合いをすればいいんですか。
「『今の気持ち』について話せると良いと思います。『今、どんな風に感じているのか』『何が辛いと感じているのか』についてです。
 
 ここでは時間軸を意識すると良いかもしれません。

 『今』に集中して、『過去のこと』『未来のこと』は一旦、横に置いておきます。浮気や不貞の中身を聞くことは『過去のこと』なので一旦は横に置く、です。
 そのほか『離婚をするのか、関係修復を目指すのか』『慰謝料を請求するのかしないのか』は、これからのこと『未来のこと』なので一旦は横に置きたいところです。
──慰謝料請求もNGなんですね。
「NGではなく、一旦は保留にしておく、ということです。

 傷ついている状態で大切な決断は行わないことが大切です。心が健全でない内はどうしても極端な選択を選びやすくなるものですから。時には懲罰感情から不倫相手の社会的立場や家庭を壊したくなる気持ちまで出てくることもあるかもしれません。
 妻もその浮気相手も、責めたくなる気持ちはもちろん理解したうえで、まず心のケアから始めることが大切だと思っています」(第2回ここまで)

筆者:安東 秀海

JBpress

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