油は太るは本当か? 油のプロに聞いた美味しくてヘルシーな油習慣Q&A

2020年8月21日(金)10時50分 食楽web


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 とんかつ、から揚げ、ステーキ。大好きな料理はたいてい油が多く、しかも油が甘くて美味しいもの。しかし、食べるたびに罪悪感が付きまとうのも事実。なぜなら油は「太る」「体に悪い」というイメージがあるからです。

 一方で、モデルやアスリートたちは積極的に油を摂るとも言われているので、一体、油って本当は体に良いの? 悪いの? と聞きたくなりますよね。そこで今回は、油のプロ、日清オイリオグループ株式会社の広報・和中康さんに“油のホント”について訊いてみました。

Q1.そもそも油は太るの?

 摂り過ぎれば太る原因になります。油を摂り過ぎれば、当然ですが摂取カロリーが増えます。そして消費されずに余った分が脂肪として蓄積され、太る原因になります。しかし、油に限らず、たんぱく質や糖質も必要以上に食べれば余分なカロリーになり、体に蓄積されるのは一緒。つまり「油を摂るから太る」というのは誤解で、「どんなものでも食べ過ぎれば太る」のです。

Q2.油は体に悪い?

 いいえ。油は体の健康維持に欠かせません。油は、私たち人間の生命維持や身体活動に欠かせない「三大栄養素(糖質・たんぱく質・脂質)」の「脂質」にあたり、エネルギー源としての役割と、体の組織を正常に機能させる働きがあります。ですから油が体に悪いどころか、健康な体を維持するのに必要不可欠です。

 また植物油に含まれる「脂肪酸」は種類や成分によってさまざまな特徴があり、私たちの体の健康維持・増進に役立ちます。ただし、摂り過ぎに注意して、適量摂取を心がけてください。

Q3.では油の量を控えればいい?


オリーブオイルをきっかけに、日本でも植物オイルの健康機能が注目されるようになった。写真:(c)日清オイリオグループ株式会社

 油は量だけでなく質を考えなくてはいけません。繰り返しますが、油=脂質は、人間にとって必要不可欠な栄養素です。脂質を必要量摂取しないと健康を害します。ただ、現代の日本人の脂質の平均摂取量は、高齢の方を除き、多くの年代層で厚生労働省が出している「食事摂取基準」の上限に近い水準となっています。これらの年代層では、半数近い人が、基準を超えて脂質を摂っているかもしれません。普段の暮らしで摂り過ぎを意識している方は、油の量を控える意識を持ったほうがいいでしょう。


日清オイリオ「植物油のおいしいおはなし」より

 とはいえ、植物油の主成分である脂肪酸は、体になくてはならないものです。例えば、オメガ6系脂肪酸のリノール酸と、オメガ3系脂肪酸のα-リノレン酸。これらは人間の体内では作られず、食物から摂らなければならない「必須脂肪酸」と呼ばれているものですが、平均的に見れば、良好な水準で摂取できています。一方で、動物脂などに多く含まれている飽和脂肪酸は摂り過ぎ傾向。油の摂取を控える際には、やみくもに減らすのではなく、脂肪酸のバランスにも配慮したうえで適量を摂取を心掛けたいところです。

Q4.具体的に必須脂肪酸が多い油はどれ?


料理にかけるだけで体に大切な有効成分の必須脂肪酸を摂取できます。写真:(c)日清オイリオグループ株式会社

「アマニ油」や「えごま油」です。「アマニ油」にはオメガ3系脂肪酸であるα‐リノレン酸が56%、「えごま油」には61%も含まれており、ここが大きな特徴です。またオメガ6系脂肪酸であるリノール酸も適度に含まれているので、2つの必須脂肪酸を効率よく摂取できます。

 ただ、オメガ3系脂肪酸のα‐リノレン酸は酸化されやすく、加熱調理には不向きですので、そのまま生でお料理にかけて食べるのがオススメです。サラダや豆腐、納豆にかけたり、味噌汁にたらしても良いでしょう。精製された「アマニ油」や「えごま油」は基本的にはクセがない油です。料理の味を損ねないので、どんな料理にでも合いますよ。

Q5.そのほか、健康に役立つ注目の油はありますか?


市販されている商品例。米油はオレイン酸、リノール酸を含む油です

 最近注目されているのは、ビタミンEを豊富に含む「こめ油」です。ビタミンEは、血液の流れをよくしたり、活性酸素の働きを抑え、老化現象を引き起こす物質「過酸化脂質」の生成を抑える働きがあります。そもそも日本人は、ビタミンEの約2割を植物油から摂っていると言われていますが、そのビタミンEを特に豊富に含むのが米油なのです。

 また米油を加熱すると米油特有の成分が分解されて、バニリンという物質ができます。これはバニラエッセンスの甘い香りの元。つまり米油を加熱して使うと、ほのかに甘い香りがして料理が美味しく感じられます。

 なお、米油は生でも加熱でも使える油ですが、特に揚げ物の調理に使うと、カラッと揚がり、油っぽさが少ないという特徴があります。

Q6.アスリートやモデルなどが積極的に摂る油は?


市販されている商品例。中鎖脂肪酸を多く含むココナッツオイルやMCTオイルが人気です

 2015年に「ココナッツオイル」が脚光を浴びました。この油には体作りをサポートする中鎖脂肪酸が多く含まれています。中鎖脂肪酸の特徴は、一般的な植物油の主成分である長鎖脂肪酸とバターなどに含まれる短鎖脂肪酸の中間の長さであること。この「中鎖脂肪酸」は、摂取した後、速やかに分解されエネルギーになるため、一般的な油に含まれている脂肪酸に比べ、体脂肪として蓄積しにくいことが知られています。つまり体脂肪になりにくいのです。

 さらに中鎖脂肪酸は、自らが分解されやすいだけでなく、継続して摂取することで、自分の体の体脂肪も分解しやすくする可能性も示唆されています。最近、アスリートやモデルなどが使用して話題になっている「MCTオイル」は、この中鎖脂肪酸だけの油であり、ココナッツやパームフルーツなどのヤシ科の植物が原料となっています。

 ちなみにココナッツオイルは、香りや味にややクセがあるオイルですが、加熱や生でも使用できます。一方、MCTオイルは、さらりとしたクセのないオイルですが、加熱には不向き。えごま油やアマニ油同様、そのまま料理などにかけて使っていただくオイルです。

Q7.健康成分が多い油でもやはり摂りすぎは太る?

 はい。油の種類を問わず、適量摂取を意識してください。適量摂取にあたって助言をひとつ。油には、目に「見えない油」と「見える油」があります。肉や魚、乳製品、パンやお菓子など、普段の料理に使う食材に含まれている油は「見えない油」、植物油やマーガリン、マヨネーズ、ドレッシングなど、油であることが(油を含むことが)分かりやすいもののことを「見える油」と言います。

 私たちはこの両方から油を摂っていますが、全体的に見ると約8割を「見えない油」から摂取していて、気づかないうちに脂質を摂りすぎていることが多いのです。そこで、油の摂り過ぎを意識している方は、まずは「見えない油」を減らすよう心掛けていただきたいです。例えば、脂身の多い肉や、お菓子の食べ過ぎを控える、など。ただし、肉や魚はタンパク質を豊富に含む重要な栄養源ですので、一切食べない、といった極端なことをせずに、脂の少ない赤身のお肉に変えるなど、賢く食材を選んで油の適量摂取を心掛けてください。

 油が太る、体に悪いというのは大きな誤解であることがわかりました。油は量と質の両面から考えて賢く摂ることが健康や美容、老化防止の近道。ぜひ、食生活の油を見直してみてくださいね。

(取材・文◎土原亜子)

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