「幼稚園から1人で歩いて帰っていたら、知らないおじさんが『乗りなさい』。車通りのない道で、半ベソをかく私を...」(兵庫県・50代男性)

2023年9月8日(金)11時0分 Jタウンネット

シリーズ読者投稿〜あの時、あなたに出会えなければ〜 投稿者:Kさん(兵庫県・50代男性)

Kさんはその日、ひとりで幼稚園から家に帰ろうと、暴風雨の中を歩いていた。

泣きながら必死に歩いていると、すぐ横に1台の車が止まって......。

<Kさんの体験談>

私の生まれ育った町は日本海に面した小さな港町です。

当時は現在のようにスクールバスもなく、幼稚園児だった5歳の私は自宅から幼稚園までの4キロの道のりを、小学生の上級生たちと集団登校していました。

「乗りなさい」

季節は冬。その日は警報が出たとか何かで幼稚園は早帰りする事となりました。しかし、あいにく当日はもう1人の同級生が休みだったので、私は1人で帰宅し始めました。

住宅街を抜けると、そこからは海岸に沿って走る道路が続きます。冬の日本海は風速20メートルを超える暴風もざらです。しばらく歩いた所であまりの暴風雨のため進む事が出来なくなった私は、道路脇の洞窟状の岩陰に逃げ込みました。

しばらくの間、恐怖で動けずに泣いていましたが、風が弱まった時に勇気を出して再び歩きはじめました。そして、家までの中間地点の一番風のきつい難所に差し掛かり、体ごと飛ばされそうな横殴りの雨に耐えながら必死に歩いていた時です。

私の横に車が止まったと同時に助手席のドアが開き、車に乗っていたおじさんが声を掛けてきたのです。

「乗りなさい」

そしておじさんは、半ベソ状態の私を自宅近くまで送ってくれました。

「50数年たった今でも忘れられない」

当時は車も少なく、通学路に車が通ることはほぼ皆無な時代でしたので、ほんとに救われた思いでした。

自宅に帰って着替えを済ませた後に居間に行くと、何とさっきのおじさんと父が親しそうに話しているではないですか。どうやらおじさんは、父の仕事の取引先の方だったようです。

こんな偶然ってあるんですね。まだ幼く人見知りの私はちゃんとお礼も言えなかったです。あれから50数年たった今でも忘れる事の出来ない思い出です。

数年前に父も他界し、あのおじさんももういないかも知れませんが、この文面を通じて感謝の気持ちを伝えたいです。ありがとうございました。

誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!

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