私とクラフトビールの付き合い方【漫画家・敦森 蘭さん】

2023年9月11日(月)10時48分 食楽web


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●クラフトビールは自由だ。酸っぱい味、甘い味、苦い味。嬉しい日でも悲しい日でも、その日の気分に合ったビールがきっとある。漫画家、モデル、銭湯当主といった、異なる生き方をする三人にそれぞれのクラフトビールとの付き合い方を聞いてみた。

ビール好きじゃない人にこそ、クラフトビールの魅力を伝えたいです。

「ビールは、ずっと好きでした。ただ、初めてのお店に入るのに尻込みしてしまうタイプで。『よりみちエール』では、お店や店員さんの雰囲気が漫画から伝わって、飲みに行くハードルを下げられたらと思って描いていました」

 漫画家の敦森 蘭さんは、そう話すと、はにかみながら手元のグラスに口をつけた。「いろいろ飲みますが、結局はペールエールなんです」と、実にうまそうにビールを飲む。

ビア活で見えてきたクラフトビールの本当の魅力


Ⓒ敦森 蘭/講談社

 敦森さんが描く『よりみちエール』は、アラフィフの映画監督・高田頼道(よりみち)と、若手イケメン俳優・藤田アランがクラフトビールを求めて街を行く“ビア活”漫画だ。親子ほど歳の離れた男2人が、ビールという共通の悦びで繋がり、行く先々で個性豊かなビールに出会う。

 頼道とアランの何気ない会話や感情表現から、ビールの味わいや多様性、ビアスタイルやペアリングなどの奥深い世界を覗くことができるので、ビール初心者でもわかりやすく、興味を惹かれる内容となっている。

 作中では、各回ごとに実在の店が登場し、ビールを愉しむ食事シーンが醍醐味の一つとなっている。頼道とアランが訪れる店では、スタッフや内装、料理が忠実に書き込まれていて、店内の雰囲気、空気感を擬似体験できる。

これだけ自由で遊び心があるお酒ほかにはないと思います

「連載していた時期は、編集者と一緒にビアバーの取材三昧でしたね。頼道さんとアランの関係を軸にストーリーを考えて、合いそうなお店を選んでいました」

 もともと店で飲むのは苦手だった敦森さんだが、取材で店へ通うにつれて、ビールに関わる店の人や造り手の想いに触れたという。

「クラフトビールって、造る規模が大きくないからこそ、造り手の顔が見えてくるというか、想いを感じられると思います。お店の人も、ビールに想いがあるから、仕入れるラインナップに個性が表れてますよね。ビールを知れば知るほど、そこに関わる人の人間性みたいなものが感じ取れて面白いんです」

まるで鉄の味?! 好奇心を刺激された異国のビール


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 敦森さんは今でこそ大のビール好きだが、クラフトビールの魅力に目覚めたのは、10年ほど前のビアフェスで飲んだビールがキッカケになったという。

「その時飲んだベルギービールが、本当に不味かったんです! 不味くてというか当時の味覚では苦手で……(苦笑)。まるで鉄を溶かしたような味がしたんです。『世界にはこんな味のビールがあるのか!』って衝撃でした。そこからビールの幅広さを知って、地ビールを中心に味や造りの個性を愉しむようになりました。いつかまた、あの鉄のような味がするビールを飲んでみたいなぁ」

 固定概念を打ち破るビールによって拓かれた、ビールへの好奇心。初めて降り立つ街では、必ずクラフトビールを扱う店を調べて訪ね、話題の造り手やビアバーの情報は、SNSでのチェックを欠かさない。精力的なビア活を続けている中「ビール仲間との出会いにも恵まれた」と嬉しそうに笑う。

「お笑い芸人のウエストランド井口浩之さんが主催している『井口ビール部』に入れてもらいました。コロナ禍中はリモート飲みで、それぞれが買ってきたビールを紹介しながら飲んだり、会えるようになってからはビールを飲むためだけに草津まで、みんなで旅行したり。笑いあって、ビールの美味しさに驚いて、本当に楽しい会です」

 取材で知り合った店の人や造り手、『井口ビール部』の面々と知り合う中で、クラフトビールには人の魅力が色濃く出ていると感じるようになった敦森さん。そんな想いが『よりみちエール』にも込められ、ビールの個性や魅力と同じほどに、登場人物の人間模様が盛り込まれている。


『よりみちエール』一巻の表紙にもなっている『常陸野ブルーイング・ラボ 神田万世橋店』。『常盤野ネストビール』の樽生8〜9種類が楽しめる。缶やボトルの商品は、秋葉原駅から徒歩3分の『常陸野ブルーイング 東京蒸留所』で購入することができる

「クラフトビールの魅力って、私は良い意味での“チャラさ”にあると思うんです。原料になる麦芽、ホップ、酵母、水の組み合わせだけで膨大な種類があって、さらにいろいろな副原料も組み合わせることもできる。無限大な自由度で造れるから、造り手やお店の人の個性が表れて、飲む人たちも好みが分かれて、人それぞれの意見を交換できる。遊び心があるクラフトビールは、どれだけ飲んでも飽きませんね(笑)」

(撮影◎吉澤健太(P28〜31)、文・構成◎河野大治朗)

◎プロフィール
敦森 蘭

北海道出身。斉藤倫、浅野いにお、井上三太のアシスタントを務め、2015年『ラジオからきこえる』で第37回MANGA OPENで奨励賞を受賞。2020年より執筆した「よりみちエール」は全2巻刊行

●SHOP INFO

常陸野ブルーイング・ラボ 神田万世橋店

住:東京都千代田区神田須田町1丁目25-4 マーチエキュート神田万世橋N1区画
TEL:03-3254-3434
営:11:00〜22:00(日・祝11:00〜21:00)
休:施設に準ずる
予算:2000円〜
個室:なし カード:可

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