やはりタコと魚はチームを組んで狩りをしていた。効率を上げるためタコがパンチすることも
2024年9月26日(木)20時0分 カラパイア
Image credit: Eduardo Sampaio and Simon Gingins
とにかく賢いタコの場合、 普段は単独行動をしているが、狩りをするときは他の生物とチームを組んで、連携プレイで獲物を狙うことがある。
2020年、ポルトガル、リスボン大学の研究 [https://karapaia.com/archives/52297726.html] で、タコと魚がお互いの役割を決め、一緒に狩りをしているという研究結果が報告された。
そしてドイツ、マックスプランク動物行動研究所が新たに紅海で行った調査では、ワモンダコと魚の異種間チームが、狩りの成功率を上げるために指揮系統を確立する様子まで明らかになっている。
この異種間チームの絶対的リーダーは、脳に人間と同じ動く遺伝子 [https://karapaia.com/archives/52313927.html] を持ち、圧倒的な知能を誇るタコかと思いきや、状況に応じて臨機応変に変わっているようだ。ただしタコがリーダーの場面で働かない魚がいると、手痛い触手パンチが繰り出される。
タコと魚が協力して狩りをする
ワモンダコ(Octopus cyanea)は普段単独で行動しているのに、狩りとなると仲間とチームを組むという興味深い行動が観察 [https://karapaia.com/archives/52297726.html] されている。
しかもチームメイトは同種のタコではなく、無脊椎動物ですらなく、ヒメジやハタといった脊椎動物の魚だ。
この興味深い行動を深掘りするために、ドイツ、マックス・プランク動物行動研究所をはじめとする研究チームは紅海でスキューバダイビングを行い、120時間にわたってその連携プレイの様子を観察した。
タコと魚が同じ目的のためチームを組んで狩りをする Image credit: Eduardo Sampaio and Simon Gingins
一番難しかったのはタコと魚のチームを見つけること
研究チームによると、この調査で一番難しかったのは、タコと魚の異種間チームを発見することだったそうだ。
マックス・プランク動物行動研究所のサイモン・ジンギンス博士によると、一番難しいのは彼らを見つけることだったという。タコに気づかれると、タコが巧妙に姿を隠してしまうからだ。
だが、しばらくするとコツを掴めるようになった。それはタコではなく、魚を探すことだ。
彼らの普段の振る舞いを知っていれば、異なる種の魚が同じ方向を向いているなど、違和感を感じとれるのだという。
今回のチームメイトはマルクチヒメジ(Parupeneus cyclostomus)とアカハタ(Epinephelus fasciatus)だ/Image credit: Eduardo Sampaio and Simon Gingins
チームリーダーは誰? 意外にも複雑な指揮系統
そうした観察の結果、どうやら異種間狩猟チームの指揮系統が案外複雑であるらしことが明らかになったという。
普通に考えるなら、きわめて知能が高いタコが司令塔となって、チームを主導するだろうと予想される。
ところが、そうしたリーダーシップは状況によって変化していくのだという。
例えば、ヒメジは偵察役を担っているらしく、チームの行き先はこの魚によって決定される。
一方、タコは発見した獲物を狙うかどうかを判断する際にリーダーシップを発揮する。
こうしたリーダーシップの入れ替わりは、それぞれの長所を活かすことで、狩りをより効率的なものにしている可能性があるという。
まずは獲物を見つけるのが上手なヒメジがリーダーとなる。
獲物が見つかってからは、タコがリーダーとなって周囲に隠れる場所があるかどうかを確認し、捕まえやすい獲物かどうか判断する。
こうすることで、選択肢をスムーズに絞り込み、最良の狩りを迅速に行えるようになる。
実際、こうしたチームワークのおかげで、それぞれの種が単独で狩りをするよりも成功率が上がっていたという。
ちゃんと働かない魚にタコが鉄拳制裁を下すことも
ただし異種間チームは和気あいあいとしているわけではい。
例えば、タコはその力強い腕でパンチを繰り出し、魚たちを押し除けようとする。魚たちは魚たちで互いに突進し合い、押し除けようとする。
そうしたチーム内の雰囲気、すなわち仲間同士で(少なくとも見た目上は)協力するか競争するかは、チームの構成メンバーによって左右されるという。
ちゃんと働かない魚にパンチを繰り出すタコ /Image credit: Eduardo Sampaio and Simon Gingins
タコの新たな柔軟性を発見
こうした場面に応じてリーダーシップが変わるチームワークは、階層的でトップダウン型の古典的リーダーシップではうまく説明ができない。
その中で、パンチを駆使して主導権を握りつつ、うまくチームに適応するワモンダコの振る舞いは、彼らの柔軟性が想像上に高いだろうことを示している。
普段は単独行動で、しかも無脊椎動物であることを考えるとなおさら驚きだ。いや体がぐにゃぐにゃとした無脊椎動物であるがゆえの柔軟性なのかもしれない。
この研究は『Nature Ecology & Evolution [https://www.nature.com/articles/s41559-024-02525-2] 』(2024年9月23日付)に掲載された。