第100回箱根駅伝予選会の光と影、東農大の復活劇と3秒差で泣いた東京国際大

2023年10月21日(土)12時0分 JBpress

文=酒井政人


史上最多の57校が出場

 10月14日に行われた第100回箱根駅伝予選会。全国の大学に門戸が開かれたこともあり、史上最多57校が参加した。〝13枚のプラチナチケット〟をめぐる戦いはハイレベルかつ熾烈だった。

 トップ通過は前評判の高かった大東大。ピーター・ワンジル(3年)の途中棄権がありながら、個人100位以内に8人が入り、圧倒的な強さを見せつけた。2位は明大、3位は帝京大。4位は日体大で10㎞通過時の20位から上げてきて、76年連続76回目の出場を決めた。そしてシャドラック・キップケメイ(1年)が1時間00分16秒で個人トップを飾った日大が5位通過。今季から指揮を執る新雅弘監督のもとで4年ぶり90回目の出場をつかんだ。

 今年55年ぶりに箱根駅伝に出場した立大は上野裕一郎監督が直前に解任。〝監督不在〟で臨んだが、10㎞をトップ通過すると、最終成績でも6位に入り、2年連続出場を決めた。前回、悪夢を味わった神奈川大、中央学大、駿河台大はそれぞれ、7位、9位、12位で通過。正月の晴れ舞台に2年ぶりに戻ってくる。8位は国士大で全日本大学駅伝に続いての選考会突破となった。


東海大は10㎞23位からの大逆転

 エース石原翔太郎(4年)、3年生主将・越陽汰らが登録メンバーから外れて、花岡寿哉(2年)が2週間前に新型コロナウイルスに感染。危機感を抱いていた東海大は緻密な戦略を立ててレースに臨んだ。

「どちらかというとハーフが苦手で主力も欠いている。どうやって13番以内に滑り込ませるのか。オーバーペースを避けるため、10㎞は30分30秒の通過を予定していました。通過順位は後ろの方になるけど、絶対に焦るな、と。余力は違うので、公園に入ってからは各自の判断で走らせました。私は学生を信じていたので、焦りはなかったです」(両角速駅伝監督)

 鈴木天智(2年)のみフリーで、残りの11人はペースを定めて出走。10㎞通過は23位と出遅れるも、15㎞で15位、17.4㎞で13位と浮上した。最終的には総合10位で11年連続51回目の出場を決めた。

 鈴木が個人37位(1時間02分58秒)に入ると、南坂柚汰(1年)が同55位(1時間03分18秒)と健闘。花岡も同58位(1時間03分23秒)で乗り切った。「下級生中心の布陣で通過したのは次につながると思いますし、石原は全日本で起用するつもりです」と両角監督。全日本大学駅伝は持ち味のスピードを発揮したい。


スーパールーキーが牽引した東農大が10年ぶりの突破

 6月の選考会で14年ぶりの全日本大学駅伝の出場を決めた東農大も10㎞が13位通過と苦戦した。しかし、15㎞からスーパールーキーが躍動する。先輩・並木寧音(4年)とともに日本人集団のなかでレースを進めた前田和摩(1年)が自らペースを上げていったのだ。

「ずっと後ろにつかせてもらっていたので余裕はありました。チーム順位も通過ギリギリくらいだったので、少しでも稼ぎたいと思っていたんです。残り5㎞くらいなら持つかなと思い切って前に出ました」

 18㎞付近でリチャード・エティーリ(東京国際大1)を抜き去ると、20㎞手前で日本人トップの吉田礼志(中央学大3)を逆転。ハーフマラソンのU20日本記録に1秒と迫る1時間1分42秒で日本人トップの9位でゴールに飛び込んだ。

 並木が個人30位(1時間02分35秒)、原田洋輔(2年)が同61位(1時間03分32秒)、高槻芳照(4年)が同67位(1時間03分36秒)でフィニッシュ。残りの6人はほぼ想定通りのタイムでまとめて、10年ぶりの本戦出場を決めた。

「高槻と並木が4年生になったときに箱根駅伝の予選会を突破しようという考えでやってきました。この場所で学生たちの泣く姿をずいぶん見てきましたが、目標が現実になって良かったと思います。特に前田の走りが大きかったですね」(小指徹監督)

 前回までの予選会は高槻と並木が3年連続で学内ワン・ツーを飾るなど、チームを引っ張ってきた。そこに前田というスーパールーキーが加入。予選会は狙い通りのレースを展開したが、チームは夏に〝危機感〟があったという。主将・高槻が左足底を痛めたため、夏合宿の途中で離脱した。

「キャプテン不在の合宿で不安だったと思いますし、自分もちょっと無理かなと思ったんです。でも全員がよく頑張ってくました」と高槻。痛みを押しての激走が実り、涙を流しながら通過を喜んだ。

 高槻とともにチームを引っ張ってきた並木も、「やっと報われた気がします」と笑顔を見せると、「実家が権太坂の近くなので、箱根はもう一度2区(関東学生連合で出場)を走りたいんですけど、彼に勝たないといけないんで(笑)」と前田の存在を気にしていた。


3秒差で泣いた東京国際大

 通過ラインは13位までで、11位(東農大)から14位は45秒差。4校のなかで涙を飲んだのが東京国際大だった。通過が有力視されていたが、8.4㎞でエティーリが転倒。5000m&10000mの日本学生記録保持者が失速して、駿河台大と10秒差、山梨学大とはわずか3秒差で7年連続8回目の出場を逃した。

 12位の駿河台大、13位の山梨学大、14位の東京国際大はいずれもケニア人留学生を擁するチーム。駿河台大はスティーブン・レマイヤン(1年)が個人10位(1時間01分56秒)、山梨学大はジェームス・ムトゥク(2年)が同3位(1時間00分46秒)、東京国際大のエティーリは同12位(1時間02分11秒)だった。

 エティーリが転倒しなければ結果は変わっていただろう。しかし、ロードの経験値がほとんどない選手だったことを考えると、指示の徹底が不足していたかもしれない。また地方勢では京産大の27位が最高で、ボーダーラインまで14分35秒という大差がついた。

 次なる戦いは11月5日の全日本大学駅伝だ。今回の出場校(カッコ内は箱根予選会の順位)では、大東大(1位)、帝京大(3位)、国士大(8位)、東海大(10位)、東農大(11位)、東京国際大(14位)、立命大(34位)、大阪経済大(43位)、環太平洋大(45位)が出場する。

筆者:酒井 政人

JBpress

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