返済がいらない「給付型奨学金」を利用できる年収は? 2025年度開始「多子世帯の授業料等無償化」も解説
2024年10月25日(金)11時23分 マイナビニュース
教育費の中で最も費用がかかる大学の学費。奨学金の利用を考えているご家庭は多いでしょう。返済が不要な「給付型奨学金」は、経済的に困難な家庭の学生への支援であるため、利用するには世帯年収などの要件があります。年収がいくらまでなら返済不要の奨学金が利用できるのか、わかりやすい表にしました。中学生、高校生のお子さんが控えているご家庭の方は、ぜひ確認してみてください。
給付型奨学金を受けるには
奨学金には返済不要の「給付型奨学金」と返済が必要な「貸与型奨学金」があります。給付型の奨学金については、2020年4月から「高等教育の修学支援新制度」が始まり、給付型奨学金とあわせて「授業料・入学金の免除・減免」が受けられるようになりました。対象となるのは、世帯収入と資産の要件を満たし、且つ進学先で学ぶ意欲のある学生です。
この制度によって、年間最大約91万円の奨学金が支給されたり、年間最大約70万円の授業料が免除されたりするので、経済的に余裕のない世帯にとっては大きな助けとなるでしょう。
どんな学生が支援の対象となるのか、世帯収入などの要件を確認してみましょう。
<世帯収入条件>
住民税非課税世帯
住民税非課税世帯に準ずる世帯
多子世帯または私立の理工農業系分野への進学の場合は年収約600万円まで
<資産条件>
生計維持者が2人の場合: 2,000万円未満
生計維持者が1人の場合: 1,250万円未満
※対象となる資産は現金・預貯金・有価証券など(不動産は対象外)
※収入を得ていない専業主婦(主夫)なども生計維持者にカウントされます。
<学業条件>
下記のいずれかを満たすこと(高校3年生の場合)
高校2年生までの評定平均値が3.5以上
学習意欲が一定以上と判断できる
※大学生の場合は条件が異なります。
対象となる世帯年収を表で確認
世帯収入条件を世帯年収の目安で表してみました。基準となる世帯年収は家族構成や構成員の年齢などによって異なります。
世帯年収の上限額の目安
多子世帯(子ども3人以上扶養)は、給付型奨学金と授業料等減免の両方で満額の1/4の支援が受けられます。2025年度からは、授業料等減免が所得制限なしで満額支援となります。これについては、次項で詳しくお伝えします。
私立の理工農業系分野へ進学し、収入要件などを満たしている場合は、給付型奨学金は支給されませんが、授業料等減免の対象となり、文系の授業料との差額が支援されます。
家族構成はここで示したパターン以外にもたくさんあります。自身が対象となるのか個別に確認したい場合は、「日本学生支援機構 進学資金シミュレーター」で調べることができます。
2025年度から「多子世帯の授業料等無償化」始まる
2025年度から子どもを3人以上扶養している多子世帯は、所得制限なしで、入学金・授業料が無償化されます。給付型奨学金は現行の制度のまま、年収約600万円以下の世帯に対しての支援となります。
<支援金額>
【国公立大学】
入学金: 約28万円
授業料: 約54万円
【私立大学】
入学金: 約26万円
授業料: 約70万円
<支援対象>
子どもを3人以上扶養している世帯
扶養する子どもが3人以上いる間は第1子から無償の対象
ただし、第1子が就職などで扶養から外れ、扶養される子どもが2人になってしまうと制度が適用されません。
<対象教育機関>
大学、短期大学、高等専門学校(4・5年生)、専門学校のうち、一定の要件 を満たす学校
多子世帯の授業料等無償化の注意点は、子どもを3人以上同時に扶養していることが条件となっていることです。そのため、無償化の対象教育機関にはならない大学院への進学でも扶養されていればカウントされます。一方、大学を卒業して社会人になってしまうとカウントされません。
いくら支援が受けられる?
高等教育の修学支援新制度によって、いくら支援が受けられるのでしょうか。「入学金・授業料」と「給付型奨学金」の二つの支援の金額をみてみましょう。
支援の金額は、「進学先の学校の種類(大学、短期大学、高等専門学校、専門学校)」、「国公立か私立か」、「自宅通学か自宅以外からの通学か」によって異なってきます。
授業料等減免の上限額(年額)
入学金は1回限り、授業料は年額となります。授業料等減免は、大学等を通じて行われるため、学生本人に現金が支給されるものではありません。また、留年をすると打ち切りとなるので注意しましょう。
給付型奨学金の給付額(月額)
学生生活を送るための生活費として、日本学生支援機構から、原則毎月、該当する金額が学生の口座に振り込まれます。
おわりに
給付型奨学金、授業料等減免制度には、世帯収入と資産の要件以外に学業条件もあります。収入などの条件を満たしていても、評定・成績によっては支援の対象外となることもあるので、高校生のうちから評定などを意識しておくといいでしょう。ただ、成績が振るわなかった場合も、学習意欲が高いと判断されれば支援を受けられる可能性があるので、諦めないで申し込みをしてみるといいでしょう。
石倉博子 いしくらひろこ ファイナンシャルプランナー(1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP認定者)。“お金について無知であることはリスクとなる”という私自身の経験と信念から、子育て期間中にFP資格を取得。実生活における“お金の教養”の重要性を感じ、生活者目線で、分かりやすく伝えることを目的として記事を執筆中。ブログ「ファイナンシャルプランナーみかりこのお金の勉強をするブログ」も運営中! この著者の記事一覧はこちら