「新宿駅前で朦朧としていた19の私。声をかけてきた男性に、近くのトイレまで腕を引かれて...」(東京都・40代女性)

2023年10月28日(土)11時0分 Jタウンネット

シリーズ読者投稿〜あの時、あなたに出会えなければ〜 投稿者:Fさん(東京都・40代女性)

専門学生時代、Fさんは忙しさのあまり体調を崩してしまった。

学校を早退し、ふらふらと新宿駅を歩いているところで限界に。その場でしゃがみこんでいたら、見知らぬ男性が駆け寄ってきて......。

<Fさんの体験談>

22年前、19歳の時のことです。私は新宿にある英語の専門学校へ通っていました。

学校からの課題も多いのに、アルバイトとサークル活動のかけもちもしていて、多忙を極める毎日。

今思えば、忙しく何かに追われて動いている自分に、青春を謳歌する自分に、陶酔していたような気がします。

ある寒い冬の日、連日の疲れが溜まっていた私は授業中に気分が悪くなり、早退することにしました。

もうろうとする私に...

ふらふらになりながら新宿駅まで歩いて、当時タワーレコードが入っていたビル前の広場まで来た時、めまいがしてうずくまってしまいました。

すると、1人の男性が駆け寄ってきて、「大丈夫ですか?」と声をかけてくれたのです。

その人はしゃがみこみ、自分のマフラーをさっと差し出してくれました。

私はもうろうとしながら、うなずいたのですが、顔色が真っ青だったようで、近くの商業施設のトイレめで腕を引っ張って連れていってくれました。

腰かけて少し休むとよくなったので、手を洗ってトイレを出ると、その人が待っていてくれました。

お礼を言うと、「食事はしていますか?」。

その質問に「していない」と答えると、「何か暖かいものをおなかにいれたほうがいい」と、そのまま彼はサザンテラスのスターバックスに連れていってくれ、ラテのようなものをごちそうしようとしてくれました。

私は慌ててお金を払おうとしたのですが、カバンの中にお財布がありません。授業中には持っていたので、教室に忘れたのだと思います。

その人は「お金はいいから」と、そのまま飲み物をごちそうしてくれました。

いい人すぎて警戒したが...

申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、それを飲んでいたら落ち着いてきて、お互いのことをぽつりぽつりと話したりしました。

彼は京王プラザホテルの給仕の仕事をしていると教えてくれました。ソムリエだったかもしれません。

20代半ばから30歳くらいに見えました。あまりにもいい人すぎて少し警戒したのですが、全く下心を感じないさっぱりした方でした。

誠実さと正義感、そして優しいお節介が同居した素敵なおにいさんでした。

それから何度もお礼を言って、でも、どうしても恥ずかしくてお名前と連絡先を聞けず、駅で別れました。

少し汚してしまったマフラーも、気にしなくていいから、安物だからと言って、そのまま私の手から奪い取るようにして、去って行きました。

あれから何度も思い出しては、後悔しています。お名前を、連絡先を、なぜ聞けなかったのだろうかと。

そして、お礼を改めてきちんと伝えたいと。

その後、社会人になり、たくさんの人と出会ってきたけれど、あんなにさわやかに人助けができる方はそうそうお会いできませんでした。

京王プラザホテルに行く時いつも、もしかしたらあのときのお兄さん、まだ働いていらっしゃるかな...と、思います。もし、まだホテルにいらしたなら、きっと素晴らしいホテルマンなのだろうな、とも。

あれから私は、誰かのやさしさに触れたら、その都度きちんとお礼を伝えていこうと思い、また、自分も人のためにさらっと動ける人でありたいと、常に心がけて行動しています。

お兄さん、あの時はありがとうございました。

あなたの、あの、やさしいお節介が、私の心にずーっと沁みついています。

誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!

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(※本コラムでは、プライバシー配慮などのため、いただいた体験談を編集して掲載しています。あらかじめご了承ください)

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