南信乃介さんが選ぶ「公民館╳ウェルビーイングを感じるアイデア本5冊」

2022年7月23日(土)11時0分 ソトコト







どういう境遇や状態にあるかは関係なく、今いるところをよりよい場所にするために積極的に関わり合っていけること、それが「ウェルビーイングであること」だと私は思います。その考え方は、私が公民館運営で大事にしたいと考えていることにもつながります。具体的には、私は繁多川公民館のコーディネーターとしても、「地域の人があえて無目的に集まれる」「多世代でつながることができる」などの場を設け、「自然に生まれる対話の中で、一人ひとりへの理解を背景にその土地ならではの地域づくりを探っていく」「自分のやった仕事で、誰かが喜んでくれる経験を生み出す」ことなどにつながるようにしてきました。
今回選んだのは、どんな状況の中にあっても、人がつながって相互理解に努め、不条理を団結する力に変え、未来につなげていくにはどうしたらいいのかを考える際にヒントが得られる本です。
『学生よ』は、フランス革命直前という混乱した時代に書かれた、民主主義的な大学教授の講義録です。この本の中で印象に残っているのは「思想の共通性」という言葉。「お互いが理解しあって、力を合わせられること」にその言葉を当てはめています。私が他人との関係性をつくるときに意識したいと考えているのがこの思想の共通性で、相手がどういう背景を持ち、どう感じて、どうしてここにいるのかということと常に向き合いたいと心がけています。
『公民館はどう語られてきたのか』は、公民館の成り立ちや歴史を語っている本です。公民館は「文化の向上のため市町村が設置した社会教育施設」ですが、もともとは荒廃した戦後社会、自分たちに必要なものは何か話し合い、行動するために誕生した地域づくり拠点でした。今では、公民館というと講師を呼んで講演をしてもらったり、趣味や教養のサークルなど楽しいことをしたりする場所という認識を持たれがちですが、もともとは住民がお互いの経験や知識を交換したり、必要なものを求め合ったり──つまり自分たちで社会をつくる機能と可能性がある場所だったのです。
現在、日本には約1万4000館の公民館があります。それだけの数があるということは、公民館の歴史を振り返り、捉えなおしが進めば、日本自体ももっと変わっていくと思うのです。公民館を運営する側だけでなく、利用する方たちの意識にもきっとウェルビーイングに近づく変化があるでしょう。


那覇市繁多川公民館 館長・南信乃介さんの選書1〜2
那覇市繁多川公民館 館長・南信乃介さんの選書3〜5



photographs by Yuichi Maruya text by Sumika Hayakawa
記事は雑誌ソトコト2022年7月号の内容を本ウェブサイト用に調整したものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

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