パチンコ店からタバコの煙が消える日 迫る「禁煙化」で何が変わるのか、大手ホール2社に聞いた

2019年11月15日(金)12時30分 Jタウンネット

当たりを引いた時にタバコで一服。なかなか当たらずイライラしながら「フーッ」。パチンコやスロットで遊びながらタバコを吸う。それは喫煙者にとって至福のひと時...。


しかし、そんな光景は間もなく見られなくなる。


2020年4月1日の改正健康増進法の施行にあわせて、パチンコ・パチスロ店のホールが「原則禁煙」になるためだ。


日本遊技関連事業協会(日遊協)が2018年に実施したアンケート調査によると、ホール内の喫煙者は加熱式を合わせて54.7%。一般的な喫煙率が男性27.8%、女性8.7%(同年JT調べ)なので、それに比べて極めて高いのだ。


それゆえ、パチンコ店は「分煙対策」に力を入れなくてはいけない。まさか、喫煙者をすべて切り捨てるわけにはいかないだろうし...。


そこでJタウンネットは、マルハン、ダイナムの大手パチンコホールに、原則禁煙化への受け止めや、今後の対応を聞いてみることにした。


ホール側の受け止めは...


まず、客側の反応をパチンコ好きな人間に聞いてみよう。試しに、筆者の友人に屋内禁煙の事実を告げると、


「本当に辛い」

「吸いながら打つ。これが最高なのよ」



との悲鳴が。かくいう筆者もパチンコ好きの喫煙者だ。休日は、マイホ(常連のパチンコ店)に足しげく通い、台の前で一服している。


「ホールで吸えなくなるの?私はね、自分の台が『当たる!』っていう波が来る瞬間に、タバコに火をつけるのよ。そうすると当たりやすくなるのよ。残念ねぇ...」



と話すのは、たびたび席が隣になる、顔なじみのおばあさんである。


ジンクス好きな彼女は悲しそうな顔をしたまま「ところで一本くれない?」と一言。屋内禁煙となったら、このやり取りさえもなくなってしまうのだろうか...。


そこで、Jタウンネットは、2019年10月31日にマルハン、ダイナムのパチンコホール大手2社に、次のような質問を送った。


(1)改正健康増進法に対する受け止め

(2)同法に対する今後の対応



まず、マルハン広報課の担当者は、


「マルハンでは『居心地の良いホール空間の創造』をテーマに、『地球環境』『店内環境』『労働環境』のいずれにもより良い影響を与えられる活動に積極的に取り組んでおります。



『店内環境』としては、ホール内の空気・空調環境について、以前よりさまざまな対策を行ってきました。全席禁煙店舗(喫煙室を別途設置)、仕切りによる分煙店舗、加熱式タバコのみ喫煙可能な店舗などをトライアルしており、また近年の新店舗ではあらかじめ分煙化に対応できる仕様で建設しております。



これらの経験を活かし、愛煙家の方、非喫煙者の方、双方にとって快適な遊技空間を提供できるよう努めてまいります」



と話す。続いてダイナムの広報担当は、


「弊社では、従前より完全分煙型ホール『ダイナム信頼の森』を全国に展開するなど、受動喫煙防止対策に積極的に取り組んでまいりました。



19年10月末現在、前述の『ダイナム信頼の森』を含めて、31店舗の完全分煙ホールを運営しており、同法の全面施行によって全てのパチンコ店が等しく禁煙化(分煙化)に向けてシフトすることを非常にポジティブに捉えております」



といった回答があった。


両社ともに、今回の法改正ではホール内は全面禁煙として、屋内もしくは屋外に専用の喫煙ブースを設置することで対応するという。まだ整備中の店舗もあるそうだが、筆者の自宅近くにあるダイナム店舗はすでに全席禁煙で、ホール内からタバコの匂いは消えていた。


「完全分煙」のメリットは?


とはいえ、喫煙者からするとタバコを席で吸えなくなってしまうのは正直ちょっと寂しい。そこで法施行に対するメリットについて、詳しく挙げてもらった。


マルハン担当者は、6つのメリットを挙げた。


(1)顧客、従業員の受動喫煙のリスクが低下する

(2)環境志向が高い方、非喫煙者である顧客が増える

(3)店内環境が向上することで、従業員採用にも良い効果がある

(4)清掃作業の負担軽減、工数削減により従業員負担が軽減される

(5)換気回数が減る事により、空調設備の効率が上がる

(6)天井や壁紙が汚れにくくなり、内装修繕コストが下がる



またダイナム担当者は、


「これまで、たばこの煙や臭いを主な理由としてパチンコを敬遠したり、リタイアされた方々に改めてレジャーとしてのパチンコをアピールできる機会だと捉えております。



安価で遊べるレート設定(1円パチンコ等の低貸玉)や、少額投資でもゆっくり楽しめる遊技機の開発などを含め、新規顧客の獲得に向けて総合的に積極的に取り組んでいきたいと考えております。



また、同時にホールで働く従業員にとっても大きなメリットがあり、弊社では従業員が休憩時に利用するバックスペースにおいても客室と同様の法的基準を満たした喫煙室を設置しております。



ホール内が完全分煙化されることで、より幅広く優秀な人材の確保につながっていくものと考えております」



両社ともに、やはり屋内禁煙化をポジティブに受け止めていることが伺える。少し深読みしすぎかもしれないが、今回の法改正をパチスロのイメージを変える機会にしようとしている——そんな風に見ることもできそうだ。


もちろん、最初に話を聞いたおばあさんのように、今まで当たり前だった光景が変わってしまうことに寂しさを感じる人もいるだろうが、きっとすぐに慣れるはず。


冷静になって考えれば、客にとってはより健康的にパチスロを楽しめる上、ホールにとっても上述のようなメリットがあるわけだ。いわゆるWIN-WINである。


パチンコ店からタバコの火が消えた時、その熱気はどうなるのだろうか。

Jタウンネット

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