40歳超えたら誰もがなりうる?加齢などでまぶたが下がり視野が狭くなる《眼瞼下垂》疲れ目、肩こり、頭痛のつらい症状も…保険適用手術を実体験
2024年11月20日(水)12時30分 婦人公論.jp
(写真:stock.adobe.com)
筋肉が衰え、皮膚がたるむのは瞼も例外ではありません。視野の狭さや見た目の悩みが、日常生活に支障をきたすことも。いざ手術を受けようと決意しても、病院や術式はさまざまで——
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更年期だと思い込み鬱々としていた50代
私は現在、61歳。今年5月に眼瞼下垂(がんけんかすい)の手術を受けた。そして4ヵ月あまりが経過した今、「思い切ってやって本当によかった!」とホクホクしている。
振り返ってみれば、50代の初め頃から慢性的な頭痛や肩こり、腰痛に悩まされ、鬱々として精神的にもつらかった。でも私は、それらの症状を「長い更年期だなぁ」と思っていたのだ。だって、眼瞼下垂からくる悩みと更年期障害の症状はそっくりなんだもの。
そんな私が眼瞼下垂を意識するようになったのは5年ほど前。右目の下瞼がヒクヒクと痙攣するようになり、近所の眼科医へ駆け込んだ。眼精疲労と診断されたが、その折に医師から「あなたは眼瞼下垂になりかけていますね。まだ保険適用の範疇ではないけど」と告げられたのだ。
治療が必要な段階ではないのだなと受け止めたものの、「なりかけている」ということは、いずれ……と気になる。そこでインターネットで調べたところ、美容形成外科のホームページにたどり着き、手術代を見てギョッとした。片眼35万円! しかも、「左右のバランスを整えるため両眼同時に手術することをお勧めします」という記述がある。
のちに相場は両眼で30万〜50万円程度だと知ったものの、私にとって論外な金額であることに変わりはなかった。とはいえその時点では、自分には保険治療しか選択肢がないのねと思うにとどめ、ひとまず保留に。
ところが、ほどなくして突入した新型コロナウイルスによる自粛生活中に、頭上の棚を認識できず思いっきり頭をぶつけるという惨事に見舞われた。いつしか、パソコン画面の上部を見るのに、顎を上げるようにもなっている。もしや眼瞼下垂が進行したのでは、と悪い予感しかしなかった。
さらに自粛生活が明けると、周囲の人から「なんだかお疲れ気味?」と聞かれるように。そういえば瞼が重いかも。鏡でマジマジと見てみたら、二重瞼が四重と化し、眠くもないのにトローンとした目になっていたので驚いた。アイテープで瞼を上げる生活を始めたものの、それまで以上に激しい頭痛に襲われるようになってしまったのだ。
機能も見た目も諦めたくない
いよいよ眼瞼下垂が悩ましい状況になったのだと悟った私は、近所の眼科医が手術をしていないことを知り、保険治療に関する情報を求めて検索し続けた。相変わらずネット頼りだったのは、人知れずシレッと手術をしたいと考えていたからだ。
ところが、私がたまたま目にした症例写真の多くは手術後の目元が不自然で、これで気づかない人はいないだろうと思った。うーっ、機能改善が望みだけど見た目もやっぱり気になる〜、と悶絶した日のことは忘れられない。
かくなるうえは、「私、保険治療で眼瞼下垂の手術をしたいのだけれど」と周囲に明らかにし、情報を集めることに。条件は、なるべく自宅から近い眼科医であることだったので、同じ沿線に暮らす人を中心に聞き込みを開始したのだ。
これが幸いして、仕事仲間から「妻が保険で眼瞼下垂の手術をしたけど、とても自然な感じだよ」という口コミをゲット。続いて、「姉が手術したけど大正解だった。私が眼瞼下垂になったら同じ眼科医に行くわ」と話すご近所さんにも遭遇。
なんと両者から同じ病院名が飛び出し、これは名医の予感、と迷わずカウンセリングの予約を入れたのだった。
期待に胸を膨らませて向かった「自由が丘 まぶたと眼のクリニック」でのカウンセリング当日、診察室で対面したのは院長の工藤麻里先生。目の検査と写真撮影のあと、頭痛や肩こりも含めた視野障害のつらい症状を訴えると、工藤先生から「中度の眼瞼下垂ですね」との診断。後天性の眼瞼下垂について詳しく説明してくれた。
「眼瞼下垂は、主に加齢によって上瞼を持ち上げる筋肉や皮膚が緩み、瞼が下がって視野が狭くなってしまう病気です。でも症状は人それぞれ。丸山さんの場合、皮膚のたるみはほとんどなく、筋肉が伸びている状態ですね。
目を開けようとしても瞼が思うように上がらないと、額に力が入り、筋肉が緊張して血流が悪くなります。これに端を発して頭痛、首筋のはりや肩こり、腰痛を引き起こしたり、自律神経が乱れてイライラしたり、鬱々としたりするケースも珍しくありません」
(写真:stock.adobe.com)
眼瞼下垂を悪化させてしまう原因については、
「瞼は皮膚が薄いうえに、内部構造もデリケートなので刺激に弱いのです。ですから、コンタクトレンズを使用している人や、目をこする癖がある人はなりやすい。
それから瞼の異変に気づいてアイテープに頼るようになる人もいますが、これも症状を進めてしまいます。ただ、40歳を超えたら誰もが眼瞼下垂になるといえるほど、一般的に起こりえる病です」
全部に該当していた私としては耳が痛い。先生はこう続けた。
「昔なら、年だからしょうがないと諦めていたかもしれませんが、人生100年時代ですからね。眼瞼下垂の手術をすれば、機能の改善に加え、小さくなった目や左右差を元の状態に戻すことにもなるので、見た目が気になる方にとっても需要が増えています。実際に、私が眼科医を開業した15年前以降、眼瞼下垂に悩む方は増える一方です」
眼形成手術は医師のセンスと技術で仕上がりが大きく変わってくる。そこで先生は審美の技術を学んだのだという。
「私は機能面の回復だけでなく、見た目にも配慮したいと思っています。しかし残念ながら、見た目はともかく機能が改善されたら成功だ、という眼科医がいるのも事実です。ならば美容形成外科がいいとなってしまいがちですが、私は眼瞼下垂の手術は眼科医がするのが望ましいと思います。というのも、瞼が落ちてしまう原因としてほかの病気が隠れていることがあるので、その判断が求められるからです。
当院ではマイクロスコープ(顕微鏡)を使用して手術を行っていますが、これは美容形成外科ではしていないことだと思います。たとえば、検査をして白内障を併発していることが判明した場合。瞼と角膜の乱視は密接な関係にあるため、眼瞼下垂の手術を先にするのがいいとされています。こうした判断ができるのも眼科医ならではです」
あなたの瞼は大丈夫?
眼瞼下垂には、黒目部分全体に瞼がかぶさるだけでなく、目尻側のみがたれ下がる、いわゆる「三角目」も含まれます。
医療機関では、瞳孔の中心から上瞼の縁までの距離を目安としており、3.5ミリ以下の方は要注意です。
●「眼瞼下垂」でチェックするポイント
そのほか、以下の項目のような症状が出やすいので、心当たりがないか確認してみましょう
チェックのついた項目が多いほど、眼瞼下垂の可能性が高いので、医療機関を受診してみましょう。
ただ、左右で瞼の落ち方が違うケースや、もともとの大きさ、一重瞼など個人差があります。医療機関によっても判断は異なるので、セカンドオピニオンを受けることも選択肢のひとつです
<後編につづく>