「雲仙地獄」のパワーと“和華蘭文化”あふれる温泉旅館「界 雲仙」を愉しむ

2023年12月8日(金)12時0分 JBpress

文=のかたあきこ 写真=木下清隆、星野リゾート


「地獄パワーにふれる、異国情緒の宿」

「界 雲仙」は雲仙天草国立公園内、標高約700mの雲仙温泉にある。長崎空港から車で約90分。つづら折りの道を上って温泉街へと近づくにつれ、硫黄の香りが強まってくる。湯けむりがあちらこちらで立ち上っている。

 宿が立つのは「雲仙地獄」という高温の噴気(ガス)や熱水(温泉)が噴出するエリア。ロビーや客室は地獄に面しいて、地の底から吹き出す蒸気が織りなすダイナミックな景色が眺められる。「地獄パワーにふれる、異国情緒の宿」がテーマだという。

 長崎は16世紀半ばから南蛮貿易で栄え、鎖国時代にも唯一、海外に開かれた貿易港。キリスト教文化も色濃い地域だ。客室は地域の伝統工芸で設える「ご当地部屋・和華蘭(わからん)の間」と名付けて、日本(和)と中国(華)とオランダ・ポルトガル(蘭)の文化が融合する長崎の文化を紹介する。例えばステンドグラスの間仕切りや和紙のスタンドライト、長崎ビードロ(=ガラス)を使ったライト、島原木綿、波佐見焼や郷土の古賀人形が空間を彩る。

 全51室ある客室のうち、16室は「客室付き露天風呂」と名付けられ、空間の半分以上は雲仙地獄を眺める露天風呂と湯上がり処が占めている。湯船に満ちるのは、酸性、含鉄(II、Ⅲ)—単純温泉。鉄や硫黄などを含むpH2.8の酸性泉は雲仙地獄から湧出。2つの源泉が混じるため、日によって湯の色が白や褐色など変化する。よくあたたまる温泉で、肌がすべすべになる。

 入浴前には、界の湯守りによる「温泉いろは」体験をぜひ。雲仙の歴史や泉質、効果的な入浴法を解説するほか、宿すぐの地獄まで歩き「燗付け(かんつけ)」という地熱を利用した約100年前からの給湯設備などを紹介する。


雲仙地獄のパワーを全身で感じるアクティビティ

 別棟の湯小屋には大浴場と野趣あふれる岩造りの露天風呂がある。ステンドグラスから光が差し込む大浴場には、源泉かけ流しの「あつ湯」と雲仙地獄の燗付けを利用する「ぬる湯」のふたつの浴槽がある。どちらも肩までゆっくり浸かれ、ぬる湯とあつ湯に交互に入浴すれば血行促進につながる。

 夕食は雲仙地獄や長崎発祥の伝統料理などから発想を膨らませた会席料理。先付けの「“鬼やらい”湯せんぺい豚角煮リエット」や、和華蘭文化の一つ、卓袱(しっぽく)料理の円卓をイメージした朱の器で提供する宝楽盛りなど見た目も楽しみだ。特別会席のメインには、あご(トビウオ)の旨みいっぱいの出汁で味わう「あご出汁しゃぶしゃぶ」を用意。朝食には具雑煮が登場する。

 朝食前に開催される「雲仙地獄パワーウォーク」もおすすめだ。これはガイドと共に雲仙地獄を1周する約1時間のアクティビティ。深い呼吸を意識しながら、普段よりも早足で全身を使ってウォーキングを行う。全身が噴気に包まれたり、地熱を足元から感じたり、噴出活動を休止した「旧八万地獄」の広場に寝転んでヨガをしたり。地獄パワーを全身で感じながら、今日のリラックスと明日への活力に満たされる。

 界の名物である地域紹介のサービス「ご当地楽」は、「活版印刷体験」だ。年代を感じさせる凹凸の活字や活版印刷機は地元からの寄贈とのこと。長崎は日本における活版印刷発祥の地と言われる。天正遣欧少年使節により1590年頃に、活版印刷が欧州から島原半島にもたらされたそうだ。

 スタッフから説明を受けた後は、活版印刷機を使ってオリジナルのカードを作る。入れる文章を考えて凹凸の活字を選び、活版印刷機を使ってカードに文字を転写する。出来上がりはカードホルダーに入れて持ち帰れる。温泉旅館で土地の歴史にふれながら、世界にひとつの旅みやげ作りができる楽しい時間だ。

筆者:のかた あきこ

JBpress

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