今すぐ母子手帳を確認! 入園・入学までに接種しておきたい子どものワクチン、忘れてない?

2021年12月16日(木)20時6分 マイナビ子育て

たくさんの子供が集まる保育園や幼稚園、こども園、学校、学童などでは、様々な感染症が流行します。ですから、「入園・入学前にはワクチンを受けておくことが大事」と森戸先生。詳しく話を聞きました。

ワクチンのある感染症は怖いものばかり

まもなく入園・入学シーズンですね。その前に小児科医として、保護者の方にお願いしたいことが一つあります。それは母子手帳を見直して、接種し忘れているワクチンがないかどうかを確認することです。

なぜなら保育園や幼稚園、こども園、小中高校などでは、たくさんの子供が集団生活を送るため、感染症が流行しやすいからです。また、例えば外遊びや泥遊びなどをすれば、蚊が媒介する日本脳炎、土のなかにいる破傷風菌などに感染するリスクもあります。

現在ワクチンの存在する感染症はすべて、重篤化した場合に特別な治療法がなかったり、過去にたくさんの子供たちが高熱などのつらい症状に苦しんだり、後遺症が残ったり、最悪の場合には命を失ったりした病気です。だからこそ、ワクチンが開発されました。

例えば「麻疹(はしか)」は、すれ違っただけで感染することもあるほど感染力が高く、先進国で適切な治療をしてもかかった人は1000人に1人の確率で亡くなる可能性があります。また、いったん治ったように見えても、罹患後平均7年の期間を経てから脳や身体機能に障害を負う「亜急性硬化性全脳炎」を発症することもある恐ろしい病気です。

この他、例えば軽い病気だと思われがちな「おたふく風邪(流行性耳下腺炎:ムンプス)」にかかると難聴になったり、男の子の場合だと無精子症になるリスクもあります。「みずぼうそう(水痘)」も一度かかると、大人になってから帯状疱疹になることも。

たまに「今の日本では流行していない感染症のワクチンは不要では?」と言う人がいますが、他国から入ってくるリスクがありますし、再び流行する危険性があります。実際、昨年は根絶目前とみられていたポリオが再び流行の兆しを見せ、アメリカでも感染者が出ました。

ですから、先日、SNSでワクチン接種記録の欄が真っ白な母子手帳の画像をアップしている保護者が話題になりましたが、本当に恐ろしいことです。お子さんの健康が心配でなりません。そういう人が増えると、また感染症が流行することにもつながります。

接種し忘れがあれば公費の期間内に小児科へ

さて、どの感染症がいつ流行して、誰がかかるかは全くわかりません。そして、誰が重症化して苦しんだり入院したり、後遺症が残ったり、命を失うのかもわかりません。だからこそ、普段から感染症に備えておくことが大切です。

具体的には、母子手帳のワクチンの記録ページと国立感染症研究所や小児科学会のワクチンスケジュールを見比べて確認してみてください。よくわからない場合は、小児科や保健所、子育て支援センターなどに母子手帳を持参の上、確認してもらってもいいでしょう。

そうして接種し忘れているワクチンがあれば、小児科でスケジュールを組んでもらい、可能な限り最短でキャッチアップ接種をしていきましょう。複数のワクチンを同時に接種しても、副反応などのリスクは上がらないことがわかっています。

定期接種(公費で打てるワクチン)の場合、接種推奨年齢に自治体から予診票が送られているはずですが、失くしてしまった場合は再発行してもらえますから、問い合わせてください。ただし公費で接種できる期間は限られていますから、それを過ぎていたら自費になります。任意接種(自費で打つワクチン)の場合は、小児科で予診票をもらえます。

意外と接種を忘れがちなのは、接種が推奨されている就学前(5〜6歳)でのジフテリア・百日咳・破傷風の3種混合ワクチン(任意接種)と不活化ポリオワクチンの5回目(任意接種)です。

百日咳ワクチンの免疫は早くに弱まるため、定期接種だけでは不十分なのです。自費で5,000円程度がかかりますが、接種しておくと安心だと思います。不活化ポリオは、世界中で生ワクチン由来のポリオが感染者を増やしていること、野生株のポリオの根絶ができていないため、おすすめします。不活化ポリオワクチンを行うほとんどの国が5〜6回接種なのに、日本とスロベニアだけが4回で終わってしまい、年長児で抗体価が減少することがわかっているのです。

また、新型コロナワクチンの接種もお忘れなく。オミクロン以降はたくさんの子供が感染していますし、高熱やひどい咳などに苦しむだけでなく、後遺症もあり、基礎疾患がなくても命を失うリスクもあります。ワクチンのある感染症は、あらかじめワクチンで防ぐようにしましょう。

参照)森戸やすみ、宮原篤『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』(内外出版社)

お話をお聞きしたドクター 小児科専門医/どうかん山こどもクリニック院長森戸やすみ 先生 一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都谷中のどうかん山こどもクリニック院長。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本の発表に意欲的に取り組んでいる。『子育てはだいたいで大丈夫 小児科医ママが今伝えたいこと! 』(内外出版社)、『祖父母手帳』(日本文芸社)など著書、監修多数。どうかん山こどもクリニックTwitter

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この記事の執筆者 大西まお 編集者・ライター。出版社にて雑誌・PR誌・書籍の編集をしたのち、独立。現在は、WEB記事のライティングおよび編集、書籍の編集をしている。主な担当書に、森戸やすみ 著『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』、名取宏 著『「ニセ医学」に騙されないために』など。特に子育て、教育、医療、エッセイなどの分野に関心がある。■Twitter

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