自社の成功体験を脱炭素を目指す社会での新しいサービス提供につなげる。大崎電気工業のグリーン・トランスフォーメーション#2

2022年12月27日(火)18時0分 ソトコト

脱炭素社会の機運の高まりは、自分たちの提供する「モノ」のサービスを見直すいい機会でもあった


ソトコト 前回は、大崎電気工業の埼玉事業所・第七工場におけるGX(グリーン・トランスフォーメーション)の取り組みについてうかがい、自社製品の実証実験も兼ねた大幅な戦力消費量の削減を成功させるまでの道程をお聞きしました。
自社工場を舞台にした取り組みとそこで得られた大きな手ごたえ—電気のプロフェッショナル・大崎電気工業のグリーン・トランスフォーメーション
今回は、大崎電気工業全体での取り組みに向けた動きや、埼玉事業所・第七工場の成功から感じた手ごたえ、そして今後のサービス提供につなげる動きについてお話しいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
鈴木達也さん(以下、鈴木) よろしくお願いします。
ソトコト まず、大崎電気工業は2022年4月に組織改編を行ない、GXソリューション部を新設されました。これは企業全体でGXに取り組んでいくという決意を表すものと思いますが、大崎電気工業としてのGXを通じた脱炭素への取り組み姿勢について、お話しいただけますか。
鈴木 これまでの大崎電気工業は電力量計やスマートメーターを製造・販売する、「モノ」を提供する会社でした。しかし、スマートメーター等によるデータの制御・管理を通じた「サービス」を新たに始めるにあたって、その提供者として自分たちを見直し、また社会や顧客に貢献する良い機会であるということで、GXソリューション部の設立を含む組織改編を行ないました。
組織改編を公表したのは2022年ですが、実際の活動はそれ以前、2021年の春から展開されており、埼玉事業所・第七工場のような自社の脱炭素へ向けた取り組みを内的に支援しつつノウハウを蓄積に、外部に向けたEMS(エネルギー・マネジメント・システム)の導入や省エネ活動の推進のサポートといったサービスにつなげていく狙いがありました。
「脱炭素」という言葉はここ数年に耳にする機会が大きく増えましたが、その方策については、たとえば非化石エネルギー由来の電気(発電のためにCO2を排出しない電気)を購入するのか、蓄電池を活用するのか、あるいは太陽光発電のような再生エネルギーを使うのか、さまざまあります。それらをすべて導入するのは難しいですし、自社に適したものをピンポイントで選べるのかといったことを含めると、非常に多くの選択肢が目の前にあり、多くの企業にとってどれから着手したらいいのか、複雑な状況だと思います。
これに対して大崎電気工業では、当社の個性・強みであるデータ分析・制御・管理といった分野で脱炭素の取り組みを進め、一定の成功をおさめることができました。この背景には、私たちが20年以上前から省エネに関するサービスを手がけていて多少の経験値があったことも挙げられると思います。しかし、どこも脱炭素への取り組みを成功させるための専門人材が不足している状況には変わりがないと感じています。今後は外部のパートナー企業とも協力して、人材の育成を進めていきます。
環境問題への対策を求める声は、世界規模で大きくなってきており、政府や外国の動きは非常に速いものになって来ています。この潮流に乗り遅れることなく、これまで通りの「モノ」と、新しい「サービス」の提供を両立させていくことが重要だと考えています。





企業を横断するプロジェクトになったことが、埼玉事業所・第七工場の大幅な電力使用量削減につながった


ソトコト 新しい「モノ」と「サービス」の提供を両立させるにあたって、その前段階となる実証実験の場となった埼玉事業所・第七工場でのGXの取り組みですが、前回の記事では徹底的な電力消費量のチェックによるデータの「見える化」によるロスの発見を通じて、最大でひと月あたり40%の削減に成功したとうかがいました。こちらについての手ごたえや、取り組みを支援するにあたって苦労した点などをお話しいただけますか。
鈴木 今回の取り組みが成功したポイントとしては、大小さまざまな組織を横断しての活動にできた、という点があると思います。まず埼玉事業所・第七工場内の複数の部署のメンバーが所属する専門部会で活動を始めたということ、そして工場から本社へと異動になったスタッフが、両者の橋渡しをしてくれたこと、また、自社製品を使用する現場から製品を開発する本部側へのフィードバックがあったことなど、“一つのセクションがやっている閉鎖的な取り組み”に終わらなかったのが大きかったです。
特に、最後の“自社製品の使い方をわかっている本部のサポートを受けて工場で実践”と“実際の現場で製品を試してみての実戦的なフィードバックの獲得”というのは、双方にとって大きな利益になったと感じていて、GXソリューション部としては今後、国内の工場に動きを波及させていきたいと考えています。国内の子会社などにも同様の動きを推進していけたら私たちにとっても有意義ですし、そこで得られたものをかたちにできれば、実践に裏打ちされたサービスの提供につながりますよね。
ソトコト 自分たちの身をもって成功へとつなげた体験を外部とも共有していくのは、多くのソーシャルグッドを生み出す、ウェルビーイングな取り組みと言えますね。
鈴木 また、今回の取り組みはトップダウンの指令ではなく、ボトムアップ型の自然な進行だったというのも大きなトピックだと思っています。普段であれば営業は営業、現場は現場というようにタテ割りであることあほとんどで、問題意識の共有がなかなかできないものです。たとえば、ある問題に対してコストカットをして対策をするのか、あるいは生産性を向上させて対策をするのか、マイナスを補うのか、プラスを伸ばすのかといったように視点が異なることも多いです。今回は工場と営業の関係において、営業部内で技術を扱う部門であるエンジニアリングセンターの協力もあり、同じ視線で取り組みにあたれたというのも成功の要因と分析しています。
先ほど、脱炭素への取り組みには様々な方法があり、それらすべての中から適切に選択肢を選ぶのは難しいと言いましたが、「減らそう」という固定観念に基づいた、いわば“守りの脱炭素”だけではあらゆる事態に対応ができないと感じます。各社のコア事業を活かした“攻めの脱炭素”を取り入れ、両者をバランスよく展開していくことがサスティナブルな企業活動につながっていくと、今回学べたように思えます。


成功体験をサービスとして提供していくにあたって重要なのは有機的なパッケージ化


ソトコト 組織内を横断する取り組みにできたことや、バランスのよい問題解決への視点を共有できたことなど、メーカーである大崎電気工業ならではの個性を活かせたことが今回の成功につながったと思います。これを「サービス」としてどのようなかたち他社に提供するかについてのお考えを聞かせてください。
鈴木 GXの推進や脱炭素への取り組みを支援する「サービス」にあたってはしっかりとした“パッケージ”にすることが重要だと考えています。企業がCO2削減、GXに取り組むにあたって「これをやりたいんだけど技術やノウハウがないから困っている」という状況より「具体的に何をやるのが一番その企業にとって有効なのか、そもそもわからない」という状況の方が圧倒的に多いと思います。
それを解決するためにはまずCO2の排出量とそこから見込める削減量を算定し、どういった方法で削減するのかも策定、最後に期限を定めてロードマップを提示し、実際にその後の取り組みを支援していく必要があります。
企業によって、抱えている問題やその解決に使えるリソースはそれぞれ異なります。大崎電気工業としてはEMSの柔軟性を活かして、企業それぞれにふさわしい取り組み支援のかたちを提供していきたいと考えています。
ソトコト 確かに企業それぞれについて、電気一つとってもどこが多く使っているのか、どこを削減できそうななどの問題個所は異なりますよね。それをこれまで培ってきたデータ分析・管理の技術を活かして、有機的な取り組みの支援パッケージを提供していくというわけですね。では、最後に今後の大崎電気のGX、脱炭素推進に向けた活動についての展望をお聞かせください。
鈴木 繰り返しになりますが、脱炭素への対策にはさまざまなものがあります。省エネはその一つに過ぎません。現在、エネルギー料金は上昇の一途にあります。電気料金で言えば従来の1.5倍近くにまで上がっていることもあります。それを逆の視点から見ると、省エネの価値もまた1.5倍に上がっていると言えるのではないでしょうか。また、太陽光発電や蓄電池を使っての発電・蓄電などが増えれば、それに伴って日中の自家電力消費量(電力需要)も変化することが予想されます。そうなると、今度は朝・夜などの時間帯ごとの電気料金も変わってくるでしょう。
省エネなのか、再生エネルギー使用なのかといった違いはありますが、いずれにせよ今後は電力の“最適利用”のニーズが高まってくると考えています。これから展開するさまざまなサービスを通じて、企業ごとの電気の“最適利用”をサポートし、企業貢献だけでなく社会貢献にもつなげていければ、メーカーの活動としてこれ以上のことはないと思っています。
ソトコト 本日は、ありがとうございました。





鈴木 達也(すずき たつや)
営業本部 共創デザイン推進室 GXソリューション部の鈴木部長。入社以来、営業本部に所属し、機器・システムやサービス販売などの法人営業を経験。脱炭素社会への貢献を目指し、お客様と自社に向けて社内外の活動支援に取組んでいます。

ソトコト

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