東京ラーメン界に超新星が誕生! ラーメン官僚も脱帽する『らぁめんたかのちゅめ』(花小金井)の塩と醤油が絶品すぎるワケ

2022年12月30日(金)10時45分 食楽web


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 今年(2022年)のGW(ゴールデンウィーク)明け以降、近年まれに見るハイペースで新店が誕生し続けている、東京のラーメンシーン。厳密な統計を取ったわけではなく、個人的な感覚に過ぎませんが、2022年だけで、少なくとも過去2年分の合計を優に上回る数の新店が生まれたのではないかと思います。

 劇的な伸びを続けているのは、店舗数だけではありません。新店全体に占めるラーメンのレベルが高い店舗(優良店)の割合が著しく高いことも、今年のラーメン界隈の大きな特徴のひとつです。

 改めて申し上げるまでもなく、ラーメンを食べる側の関心は、新店舗の数よりも「それらの店舗で提供されるラーメンのクオリティが高いかどうか」であるはず。体感的には、ここ数年の優良店出現率が7軒中1軒(15%)程度だとすれば、2022年は3軒中1軒(3割以上)が、優良店と言っても差し支えない水準に到達しているという印象です。

 この「打率」の高さは、はっきり言って尋常ではありません! 端的に言えば、2022年は大豊作だったと言えるでしょう。

 さて、今回ご紹介する『らぁめん たかのちゅめ』(東京都小平市)も、間違いなく優良店にカテゴライズされる1軒。しかも、その中でも最上位ランクに位置付けられる、超優良店です。

 オープンしたのは2022年12月6日と、ごく最近。にもかかわらず、すでに数多くのラーメンマニアが店舗へと足を運び、満足感に包み込まれまくっている状況。私も例外ではありません。虎視眈々と機会をうかがい、開業から1週間と経たない12月11日に同店を訪れ、「しょうゆらぁめん」と「しおらぁめん」の2杯をいただいてまいりました。

 お店の周りの景色は、木々の緑が街並みにほど良く溶け込んだ、いかにも東京郊外といった趣。西武鉄道・花小金井駅北口からまっすぐ伸びる「花小金井駅前通り」沿いに佇んでいるので、まずアクセスに迷うことはないと思います。店前に連なる行列が、絶好のランドマークとなってくれることでしょう。


お店外観。店舗の場所は、西武新宿線・花小金井駅から約300m強。徒歩3分程度。白い外壁と赤い屋根の組合わせが海外の街カフェを想起させる、お洒落で親しみやすさを感じさせるファザード

 店舗は、2012年に開業し2022年9月25日付で惜しまれながら閉店した花小金井を代表する堂々たる名店『らぁ麺・油そばMendesign(メンデザイン)』の跡地。完全にリニューアルするのでなく、『Mendesign』時代の遺産を巧みに活かしたファザードとなっています。


店内風景。席数はカウンター6席、テーブル4席

 その他、鷹が麺をつかむ絵柄を絶妙な感覚で抽象化させたロゴマークからも、センスの良さが漂い、つかみはパーフェクトと言ったところ。10分ほど店外にて待機していると、スタッフから声が掛かり、店内へと通されました。


券売機。1列目の右端に「野菜畑のトマトまぜそば」のボタンがありますが、現在「×印」が点灯中(=鋭意開発中。2023年より発売予定)

 現在(2022年12月6日現在)、同店が提供する麺メニューは、「しょうゆらぁめん」と「しおらぁめん」の2種類とそのバリエーション。複数のラーメン食べ歩き仲間から、「『しょうゆ』、『しお』共に新店離れした完成度の高さを誇り、非の打ちどころが見当たらない」との情報を入手していたので、連食することを前提に、「しょうゆ」と「しお」、2枚の食券を購入。

 店内を見回すと、厨房の奥で一心不乱にラーメン作りに取り組んでいる人物の姿が。その方こそ、当店の店主である塩田剛基氏です。地元・福井県から上京後、都内の人気店や豊島区東長崎の実力店『カネキッチンヌードル』などで、足掛け7年にわたって真摯に腕を磨き続けてきた、将来が嘱望される実力派若手ラーメン職人。というわけで、期待に胸を膨らませつつ、いざ実食です。

繊細さと大胆さが共存する美しい一杯「しおらぁめん」


「しおらぁめん」950円

 まずは「しおらぁめん」からいただきます。カウンター席に腰掛け、塩田店主の所作を目で追い掛けます。まるで長年、この場所でラーメンを紡ぎ出し続けてきたかのような、無駄がなく流麗なオペレーションはさすがのひと言。ほんの数日前に開業したばかりとは思えません。

 時間が経過するのも忘れ、塩田氏のラーメン作りの作業を凝視しているうちに、いつのまにか完成した「しおらぁめん」が卓上に供されていました。


黄金色に輝くスープ。優しい味わいでありながら動物系の力強さがある

 液状油の複雑な煌めきを伴う黄金色の清湯スープに、ひと目で心を奪われます。薄紅色に染まった豚バラチャーシュー、白くゆらめく鶏ムネ肉のコンフィ、深い緑が印象深い刻みネギ、パープル色に輝くアーリーレッドのみじん切りなど、トッピングも色とりどりで、視覚的な訴求力も十分。

 スープから立ち上る艶やかな芳香に、鼻腔が心地良くくすぐられます。ある程度以上、ラーメン食べ歩きの経験を重ねてきた方であれば、口を付ける前の段階で、「これは大いに期待できる!」と、心の中で快哉を叫ぶことでしょう。


スープの素材。左が豚背ガラ・牛骨・鶏ガラ・地鶏からなる動物系素材。右が魚介系素材で、椎茸、昆布、宗田節、煮干しなど

 スープ(出汁)は、地鶏をメイン、豚背ガラ・牛骨をサブとして用いた動物系出汁と、昆布・煮干し・椎茸・宗田節・サバ節・ムール貝等からじっくりと丁寧に出汁を採った魚介出汁とを、絶妙なバランスで掛け合わせたもの。

「スープは、ひと口目(ファーストアタック)と、食べ進めていった後とで、食味の印象が大きく変わるような構成に、徹底的にこだわりました。特に『しおらぁめん』は、食べ進める過程で味わいが刻々と変化する様を肌身で体感してもらいたかったので、タレに蛤(ハマグリ)エキスを溶け込ませています」(塩田店主)

 すすった瞬間、鶏・豚・牛の3種の動物系素材の重厚なうま味とコクが、舌上で一体と化し、口いっぱいに拡散。その後を追い掛けるかのように、淡く上品な塩ダレの風味が、脳内の快楽中枢を優しく刺激します。飲み進めるうちに、貝類に由来する特徴的で後を引く滋味が徐々に進撃を開始し、やがては、スープの味わいの少なからぬ割合をシェア。

 レンゲを口に運ぶたびに、全く新たなうま味が顔を出し、まるで、それがひと口目であるかのような錯覚すら抱かされる…。凄まじく高い完成度に、思わず鳥肌が立ってしまいました。


麺は中細ストレート。もっちりとした食感で歯切れ良く、スープの風味をより引き立てる

 このスープに合わせるのは、都内の名門製麺所『三河屋製麺』から取り寄せたもの。「小麦の種類、麺の太さなどの希望をお伝えし、希望に合致した数種類の商品の中から、スープの魅力を最も活かすことができそうなものを選びました」と塩田氏。

 モッチリとした食感が比類なき存在感を放つ中細ストレート麺は、全粒粉練り込み仕様。啜り始めは、全粒粉の香りがスープの風味を引き立て、中盤以降は、複雑玄妙なスープの味わいを損ねることなく食べ手へと伝え切る傑作です。瞬く間に、一滴のスープも残すことなく「しおらぁめん」を完食し、間髪を入れずに「しょうゆらぁめん」を実食。

醤油のキレとコクが絶妙な一杯「しょうゆらぁめん」


「しょうゆらぁめん」950円

「しょうゆらぁめん」のカエシに使う醤油を決める際、塩田店主は故郷の福井県に多くの醤油蔵があったことを思い出し、福井の数種類の醤油を試飲。その中で最も気に入った醤油を、直接、現地まで買い付けに行ったそうです。

「選んだのは、キレとコクを兼ね備え、味わえば味わうほど滋味が深みを増す、創業120年を超える老舗醸造所・山元菊丸商店の『ヤマギク醤油』。この醤油に出逢わなければ、この味は表現できなかったと思います」(塩田店主)

 スープを喉元へと送り込もうとする刹那、ググッとうま味が伸び上がり、嚥下する度に、甘美な余韻を確実に刻み込む、『たかのちゅめ』の「しょうゆらぁめん」の中核的要素。それこそがヤマギク醤油なのです。

「出汁のうま味が強すぎても弱すぎても、この醤油の魅力は活かし切れません。難しい課題ですが、トライアンドエラーを繰り返しながら、出汁とカエシの黄金比を見つけ出したいと思っています」と塩田氏は言います。


店主の故郷・福井県の山元菊丸商店の「ヤマギク醤油」

 私がすすった「しょうゆらぁめん」のスープは、塩田店主の血が滲むような研鑽の跡を物語るような、超絶的なクオリティの高さ。連食2杯目であったにもかかわらず、「しょうゆらぁめん」も、スープをまったく残すことなく完食してしまいました。


トッピングの一つ、チャーシュー各種。左から国産豚肩ロース肉、国産豚バラ肉、鶏ムネ肉、鴨ロース

 スープや麺だけではなく、トッピングにもこだわりが光ります。例えばチャーシュー。鶏ムネ肉、国産豚バラ肉、国産豚肩ロース肉、そして鴨ロース。タイプが異なるチャーシューが4種類用意されています。それぞれ、下味の施し方や調理方法もまったく変えているというこだわりぶりです。

 デフォルトは「鶏ムネ」と「豚バラ」の2種、特製はそれらに「肩ロース」と「鴨ロース」を合わせた全種類のチャーシューが味わえます。寸分の妥協の余地もない真摯な仕事ぶりに、脱帽するほかありません。 

「しお」「しょうゆ」共に、食べ歩き仲間から事前に収集していた情報どおり、いや、情報から推測していた期待値を遥かに上回る規格外の出来映え。

「これからも、研鑽を怠ることなく、味にさらなる磨きを掛けていきたいと思っています」と、語る塩田店主。次回訪問時までに、一体どれほどの進化を遂げているのでしょうか。今から、再訪問が待ち遠しくて仕方ありません。

塩田剛基店主のプロフィール

・出身は福井県。上京後、『カネキッチンヌードル』をはじめとする都内の複数の人気店・実力店で修業を重ね、満を持して花小金井の地に自店を開業。
・花小金井にお店を構えた理由は、緑豊かで穏やかな街並みや、住人たちの柔和な佇まいが、つくりたいお店のイメージにピッタリ合っていたからだそう。
・地元・福井や各県の旬の食材を織り込んだ限定メニューを開発・提供し、お客さんに食材が持つ魅力を伝えることを目標として掲げている。

●SHOP INFO

店名:らぁめん たかのちゅめ

住:東京都小平市花小金井1-6-32 1F
TEL:042-966-9180
営:11:00〜15:00(14:50LO)
  18:00〜21:00(20:50LO)
  日曜11:00〜16:00(15:50LO)
休:月曜

●著者プロフィール

田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。

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