中国が宮古海峡で封鎖演習、台湾有事を想定か…沖縄・尖閣周辺に「重武装」海警船団も初確認

2025年1月1日(水)5時0分 読売新聞

 中国海軍と海警局が昨年12月、沖縄本島と宮古島間の宮古海峡などで海上封鎖と似た活動を行ったほか、重武装をした海警船団を沖縄県・尖閣諸島周辺に派遣していたことが、複数の政府関係者の話でわかった。いずれも初めて確認された活動で、政府は、中国側が台湾有事の際に海上封鎖の範囲を拡大させることも選択肢の一つとしているとみて、警戒を強めている。

 関係者によると、昨年12月22日、海軍のジャンカイ2級フリゲート2隻とジャンカイ1級フリゲート1隻、「2901」などの海警船3隻の計6隻が宮古海峡を太平洋側から東シナ海に向けて航行した。軍艦3隻はこれに先立ち、反時計回りに台湾と先島諸島全体を取り囲むように航行していたとみられる。

 「2901」は1万トン級で、海上法執行機関の船としては世界最大級だ。海警船2隻は、軍艦並みの76ミリ砲を搭載していた。軍艦と海警船の共同航行は2023年夏頃に与那国島と台湾間で確認され、政府は海上封鎖を想定した動きとみて警戒していた。今回、宮古海峡で共同航行したのは初めてで、政府関係者は「海上封鎖を示唆する特異な動きだ」と分析している。

 中国による台湾侵攻は、軍艦や海警船が台湾を取り囲み、海上封鎖してからミサイル攻撃や上陸作戦に移行することが想定されている。中国側の一連の動きは、尖閣や先島諸島まで海上封鎖の範囲が拡大する可能性もあることを意味する。

 本紙が、船舶の位置や針路、船種などの情報を自動的に送受信する「船舶自動識別装置(AIS)」のデータを調べたところ、海警船は軍艦と宮古海峡を共同航行中、尖閣周辺では作動させているAISを切断していたことがわかった。軍艦は任務中、AISを切断している。海警船は軍の作戦に組み込まれ、行動を秘匿していた模様だ。

 一方、尖閣諸島周辺では昨年12月6日、76ミリ砲を搭載した海警船4隻が日本の接続水域を航行した。尖閣に派遣される海警船は4隻の船団で行動しているが、日本政府関係者によると、4隻全てが76ミリ砲で重武装化したのは初めてだ。

 中国は同月中旬、台湾周辺に艦艇や海警船計約90隻を派遣して台湾の海上封鎖を想定した活動を行っており、関係者は尖閣に出没した4隻について、「連携して行動していた可能性が排除できない」とみている。

 読売新聞が尖閣を管轄する第11管区海上保安本部(那覇市)の公表する昨年1月以降のデータなどを調べたところ、同5月以前は機関砲などで武装する海警船は船団で1隻だけだったが、同6月以降は全4隻が機関砲や、より口径が大きい76ミリ砲で武装するようになった。中国が「独立工作者」として敵視する台湾の頼清徳ライチンドォー氏が同5月に総統に就任したのを機に、中国側は尖閣を含む台湾周辺海域で圧力を高めたとみられる。

 海上保安庁の巡視船が装備する機関砲は最大で40ミリで、射程約5キロ・メートルだ。海警船の76ミリ砲は約3倍の射程があり、中国側は海保を上回る火力を備えた船を送り込み、威嚇を強めている。

 海警船は21年施行の「海警法」により、国家主権が侵害された際に武器の使用が可能になった。海警は、中央軍事委員会の命令で防衛作戦の任務を執行するとも明記され、「第2の海軍」と称される。今後も重武装化させた海警船の運用を常態化させ、軍と一体運用を強化し、台湾や日本への圧力を強める可能性がある。

◆76ミリ砲=世界の海軍が採用している砲で、海上自衛隊の護衛艦にも搭載されている。中国メディアによると、ジャンカイ2級フリゲートも主砲として採用している。最大射程は約10〜15キロ・メートルで、1分間に60〜120発が発射可能。尖閣諸島沖では2022年11月、76ミリ砲を搭載した海警船の領海侵入が初めて確認された。

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