冬が旬の牡蠣 生食用と加熱用の違いは鮮度にあらず おいしいのは…

2023年2月26日(日)5時0分 ウェザーニュース

2023/02/26 04:59 ウェザーニュース

冬の味覚の代表のひとつ、牡蠣(かき)が旬の時季を迎えています。スーパーマーケットや鮮魚店の棚にも各生産地から出荷された牡蠣がたくさん並んでいますが、パッケージには「生食用」と「加熱用」、それぞれの表記がなされています。
ほかの魚介類などの印象から牡蠣も「新鮮だから生食が可能」、「鮮度が落ちるから加熱が必要」と思っている人が多いようですが、実は牡蠣の生食用と加熱用の違いは鮮度で区別されているのではないのです。
牡蠣の生食用と加熱用の違い、さらにそれぞれのおいしい調理法などについて、全国有数の牡蠣の名産地・広島県坂町で牡蠣を生産販売する境田かき養殖場に伺いました。

生食用と加熱用の違いは?

一般的な魚介類には獲れたてで新鮮だから生食用、ある程度の時間が経っているから加熱用というイメージがあります。店頭に並んでいる牡蠣の値段も生食用のほうが高いようですが、鮮度によって区別されているのではないのですか?
「市販されているむき身の牡蠣のパッケージに記載されている『生食用』と『加熱用』の違いは、鮮度で区別されているのではなく、牡蠣が獲れる海域の違いによるものです。生食用の牡蠣は各県の保健所が指定した海域で獲れたもの、それ以外の海域のものは加熱用として出荷されているのです。」(境田かき養殖場)

「牡蠣は1個体あたり1日300Lもの海水を吸い込み、そこに含まれる成分を吸収しながら成長していきます。そうして、牡蠣は育った海域の海水に含まれる植物プランクトンなどから、窒素・リン・ケイ酸といった『栄養塩』などのさまざまな成分を体内に貯め込んでいくことになります。
しかし、沿岸近くは生活排水などの雑排水が流れ込みやすい海域でもあります。そこで保健所が定期的に水質を検査して、特定の成分が規定量以上検出された場合、その海域で取れた牡蠣は加熱用としているのです。
一方、沖合の海域は水質もよく特定成分も少なくなるため、生食用とされます。生食用の牡蠣そのものにとってはもちろん、消費者にとってもノロウイルスや食中毒菌に汚染されることは大きな危険性を伴います。
そのため、雑排水が流れ込みやすい河川の河口から離れた、汚染のリスクが低いエリアなどが生食用として出荷可能な指定海域に定められています」(境田かき養殖場)

味は加熱用の方が濃くおいしい

一般的に牡蠣の加熱用は沿岸産、生食用は沖合産といえるのですね。では加熱用と生食用、どちらの牡蠣がおいしいのでしょうか。
「一般に加熱用の海域とされる河口近くの沿岸や湾内で獲れた牡蠣のほうが、山や河川から流れ込む栄養分やプランクトンが多いので、その分だけ身が成長し、味も濃縮されておいしくなります。反対に沖合で獲れた生食用の牡蠣は、旨味(うまみ)成分や栄養成分も減少してしまうことになります。
これらの理由から牡蠣自体の味は加熱用の方が濃く、おいしいといわれています。とはいえ、加熱用牡蠣の生食は絶対にしないでください」(境田かき養殖場)

生食用と加熱用はどっちがオススメ?

生食用と加熱用はどっちがオススメといえるのでしょうか。
「生食用、加熱用それぞれに調理法、食べ方は異なりますので、お好みに合わせて選んでいただくのがいいでしょう。
生食用は殻つきのものはむいて、むき身のものならそのまま、どちらも水洗いします。生牡蠣そのものにも独特の味わいがありますので、何も付けずに食べてもおいしくいただけます。お好みでレモンや塩、しょうゆ、ぽん酢、カキ酢などを付けるのもいいでしょう。
加熱用の場合、牡蠣そのものの味わいを楽しみたいなら焼いたり蒸したり、レンジで加熱したりします。牡蠣鍋もこの時季のオススメです。ひと手間かけてカキフライやクラムチャウダーにしてもいいと思います」(境田かき養殖場)
牡蠣の生食用と加熱用の差は、新鮮さによるものではないことがわかりました。名産地も広島をはじめ、北海道、三陸、伊勢、播磨灘、九州など数多く、それぞれに異なる味わいがあるといいます。さまざまな調理法で、いまが旬の牡蠣を味わってみてはいかがでしょうか。

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