「地方が見捨てられる」怒りから始まった新潟“大地の芸術祭”が唯一無二である理由

2024年3月3日(日)6時0分 ダイヤモンドオンライン

「地方が見捨てられる」怒りから始まった新潟“大地の芸術祭”が唯一無二である理由

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松代地域にある太い柱につるされた大きな鉛筆の群れ。一本一本には世界の国々の名前が書かれている。下から見上げると迫力がすごく恐怖を感じさせる Photo by Toshiyuki Yamanaka

越後妻有「大地の芸術祭」は地方が見捨てられることへの怒りが原点

「地方が見捨てられることへの怒りが原点なのです」

 新潟県で「大地の芸術祭」を企画運営する関係者をインタビューした時に聞いた言葉だ。初めはその意味がよく分からなかったが、じっくり話を聞いて、実際に現地を回る中で、芸術祭の本質、地方創生の本質が見えてきたように思う。

「大地の芸術祭」は、新潟県十日町市と津南町を舞台に、2000年から原則3年に1回開催されている国際芸術祭である。開催される地域がかつて呼ばれていた名称をとって「越後妻有 大地の芸術祭」と呼ばれることも多い。

 地域の面積は762平方キロメートルで、東京23区の面積を大きく上回る。この広大で自然豊かな地域に、200を超える現代アートの名作が点在している。鑑賞者は、これらを自動車やバス、電車、自転車などに乗って回る。

 初めてこの地を訪れた時、「何て不便なところにあるのだろう」と正直、嘆いてしまった。しかし、何度も訪問して現地の人の意見を聞くうちに、この不便さと現代アートを掛け合わせることこそが、この芸術祭の真骨頂であることに気付いた。

 大地の芸術祭は、若者が離れ衰退する地方を何とかしたい、不便でも地方で頑張っている人々を現代アートで勇気づけたいという思いから生まれた。その規模にしても、自然とのマッチングにしても世界で唯一無二といえる。その証拠に、欧米系を中心とした外国人の訪問者が実に多い。

 今では国内外から年間50万人以上が訪れ、世界的な現代アートの聖地となった越後妻有。しかし、その道のりは決して平たんではなかった。

 記事の後編では、現代アートに関心のなかった地元の人々をどのように巻き込んでいったのか、おカネでは買えないコツのつかみ方と、日本でもブームになりそうな低コストで地方創生につながる手法を紹介する。

松代の現代アートの作品。森の中での哲学を表している Photo by Toshiyuki Yamanaka

松代の現代アートの作品。人間の一生を表している Photo by Toshiyuki Yamanaka

(著述家/国際公共政策博士 山中俊之)

>>記事後編『農作業の邪魔」の反対にめげず…開催地が不便すぎる“新潟の芸術祭”の成功物語に学べ』を読む

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