フランスで「歩行者の信号無視」が多いのはなぜ?「赤信号で待っていたら日本人」と冗談にされるワケ
2025年3月13日(木)21時25分 All About
海外の道路事情は日本と異なることが多く、フランスも例外ではありません。在住者の視点から、驚きの運転マナーや交通ルールの違いを紹介します。(写真は筆者撮影、以下同)
筆者が暮らすフランスも例外ではなく、これまで「危ない!」と驚いたり、「えっ、こんな運転するの?」と不安に感じた場面が何度もありました。
実は車より多い「歩行者の信号無視」
フランスに住んでまず驚いたのは、「歩行者の信号無視」がとても多いことです。彼らにとって「赤は止まれ、青は進め」というルールはあってないようなもの。左右を少し確認するだけで、ためらうことなく横断歩道を渡ってしまいます。さらに驚くのは、途中で車が近づいても慌てる様子がないこと。運転手が急ブレーキをかけて止まっても、小走りになるわけでもなく、「止まって当然でしょ」といった表情のフランス人を見て、日本との違いをしみじみ感じました。
日本では「赤信号では渡らない」と厳しく教えられてきたため、たとえ車が1台もいなくても待つのが普通です。実はこの行動、フランスでもよく知られていて、「赤信号でちゃんと待っていたら日本人」という冗談があるほどなのです。
フランスの小学校でも「歩行者用の信号は守るように」と教えられるそうですが、周囲の大人たちがルールを守らないためか、その教えも成長とともに忘れ去られてしまうのでしょう。
ドライバー同士のけんかが絶えない
フランスのドライバーは、歩行者に優しいというイメージがあります。常に歩行者が最優先で、歩行者専用の信号がない横断歩道では、きちんと一時停止して「どうぞ」という合図を送ってくれます。歩行者が堂々と道を渡る理由には、こうした背景があるのかもしれません。ただ、これが車同士になると話は別。ハンドルを握ると気が荒くなる人が多いようで、都会でも地方でもドライバー同士のけんかがあちこちで勃発しています。日本ではあまり見かけないような激しい言い争いも珍しくなく、フランスの道路事情を象徴する光景の1つになっています。
バイクもまた同じで、車の間を猛スピードで駆け抜けていく様子には、何度も「危ない!」とハラハラさせられました。渋滞時には、バイクのライダーが車に向かって「邪魔だ」「通せ」と言わんばかりのハンドサインを送っていることも。いずれも日本では考えられない現象です。
自転車が増えたパリでは

自転車専用レーンの設置など、インフラに投資した金額は日本円でなんと330億円。さらに、カーフリーデーの導入や駐車料金の引き上げを進めた結果、現在では自転車の利用者数が自動車を上回るまでになりました。
しかし自転車人口の急増に伴い、新たな問題も発生しています。ヘッドホンを付けたままの危険走行、信号無視、そしてスピードの出し過ぎなど、マナーの悪さが目立つパリのサイクリスト。数年前から社会問題化し、今では歩行者からも車のドライバーからも、「危ない」と嫌がられる存在になってしまいました。
その影響で取り締まりも強化されているのですが、2025年3月初めには、わずか2時間で88件の違反切符が切られたというニュースがありました。なおフランスでは、自転車の交通ルール違反には90ユーロ(約1万4400円)の罰金が科されることになっています。
こうして、乗り物に乗るとなぜか気が荒くなってしまうフランス人。理由は当の本人も「よく分からない」とのことですが、自転車利用に対する罰則は今後さらに厳しくなっていくのかもしれません。
日本と異なるフランスの交通ルール
最後に、日本では見かけないフランスの交通ルールを紹介します。ロン・ポワン(円形のロータリー交差点)

信号は縦表示

秒数が表示される歩行者用信号機

しかし最近のフランスでは、安全面を考慮して「渡れる残り時間」を秒数で表示する信号機が登場するようになりました。点滅するタイプよりも安心感を抱くため、今後さらに広がってほしいと感じています。
この記事の筆者:大内 聖子 プロフィール
フランス在住のライター。日本で約10年間美容業界に携わり、インポートランジェリーブティックのバイヤーへ転身。パリ・コレクションへの出張を繰り返し、2018年5月にフランスへ移住。2019年からはフランス語、英語を生かした取材記事を多く手掛け、「パケトラ」「ELEMINIST」「キレイノート」など複数メディアで執筆を行う。
(文:大内 聖子)