《独自スクープ》6代目山口組と抗争中の神戸山口組が約120人まで激減! それでも抗争が終わらない“納得の理由”とは「井上組長が白旗を上げないのは…」
2025年3月25日(火)8時0分 文春オンライン
国内最大の暴力団「6代目山口組」が2015年8月に分裂し、離脱した「神戸山口組」との対立抗争は今夏で10年となる。
警察庁は毎年末時点で把握した全国の暴力団の組織編制や構成員などの統計データを取りまとめ翌年春に公表しているが、事前に入手した2024年末時点の最新データでは、6代目山口組が約3300人に対して神戸山口組は約120人にまで減少。最新勢力図は27対1と大きな差が開いていることが判明した。

抗争が始まった2015年時点では、6代目山口組の構成員数は約6000人、神戸山口組は約2800人。勢力差はほぼ2対1だった。
敵対する相手の殺害や、移籍をめぐるトラブルなども含め数十人の死傷者が出ているが、すでに大勢は決しているとみられている。それでも、抗争が再燃する可能性もあり警察当局は警戒を続けている。
「トップを狙った対立抗争事件ではないか」
今年1月19日夕、神戸市の住宅で火災が発生した。「爆発音がして、炎とともに白煙が上がっている」と周囲は一時騒然としたが、消防による活動で敷地内の車や物置などが焼けただけで大きな被害は免れた。しかし現場が神戸山口組組長・井上邦雄の自宅だったことから、そのニュースは一瞬で界隈を駆け巡った。
「トップを狙った対立抗争事件ではないか」と、暴力団犯罪を専門に捜査するマル暴刑事と暴力団社会の双方が色めき立ったのだ。
多くの関係者の懸念はその通りとなった。火災の原因は失火などではなく、敷地内に侵入した男が火炎瓶を投げつけたことによる放火。男は駆けつけた警察官にも拳銃を向けたため、公務執行妨害の現行犯で逮捕された。身元は6代目山口組系の元組員だった。
井上の自宅では、2022年6月にも6代目山口組系組員が拳銃で17発を玄関に向けて銃撃する事件も起きている。
近年は対立抗争事件は減少傾向にあるとはいえ、6代目山口組と神戸山口組の抗争では拳銃による幹部の殺害や、米軍が公式採用している自動小銃「M16」を乱射する凶悪事件も発生している。
その他にも、対立する事務所への発砲、大型ダンプで事務所に突入、火炎瓶の投げつけ、繁華街での乱闘などが連日のように発生した。双方とも全国に傘下組織があるため、事件は関西地方だけでなく東京都内、東海地方、東北などにも広がった。
抗争に備えてか、暴力団業界ではアンダーグラウンドでの拳銃の取引が活発化するとともに、価格が高騰する現象が警察当局によって確認されたほどだった。
2800人いた神戸山口組から主要な組織が次々に脱退
分裂前の2014年末時点では、6代目山口組の構成員は約1万300人だった。その巨大組織が分裂した理由を、警察当局の捜査幹部はこう語っている。
「分裂の最大の原因はカネだ。毎月の100万円単位での上納金やその他の金銭の徴収が厳しかったため神戸(山口組)側が不満を募らせていた。6代目山口組組長の司忍がナンバー2の若頭に据えた高山清司の強権的な組織運営も、分裂の理由にあげられる」
こうした背景があったため、神戸山口組は離脱当初は「カネのかからない組織運営」を標榜し、多くの加入者を集めた。しかし、その後は神戸山口組でも上納金の徴収が激しくなり、離脱する組織が急増、そのうえ6代目山口組が引き起こす事件が続発し神戸山口組の縮小が始まる。
2017年には神戸山口組の中核組織だった山健組内から一部グループが構成員約400人を率いて離脱、現在は絆会として独立して活動している。2020年には、同様に中核組織だった池田組も脱退。こうした再分裂劇で当初2800人を擁していた神戸山口組は2018年には約1700人。2021年には約510人へと大幅に減少、最新データとなる2024年末時点では約120人となった。
前出の警察当局の捜査幹部が背景事情について解説する。
「ヤクザのケンカはやられたら即座にやり返すもの。しかし、6代目(山口組)が攻勢をかけてきても、神戸(山口組組長)の井上は『返し(報復)はするな』と厳命したらしい。理由は分からない。この点も不満のひとつではないか」
勢力の縮小は神戸山口組側だけでなく、6代目山口組でも起きている。2011年までに全国で整備された暴力団排除条例による資金源への規制の強化、反社会的勢力を排除する社会情勢などから構成員は減少している。
分裂時の2015年は約6000人だったが、2017年には約4700人、2020年には約3800人。最新データでは約3300人へと減少したが、いまだに国内最大組織であることに変わりはない。
暴力団社会全体が縮小するなか、6代目山口組が3000人以上の構成員を維持できている背景には、神戸山口組から移籍する組織の存在があげられる。中でも業界を騒然とさせたのは、神戸山口組の中核組織だった山健組の移籍である。
神戸山口組は山健組や宅見組、池田組、侠友会、正木組の5組織が中核となり計13組織が6代目山口組を離脱して結成された。神戸山口組組長の井上も、元は山健組の組長である。
しかし井上から組長の座を譲られた中田浩司は、2021年に6代目山口組へ移籍。移籍の理由については不明のままだが、「カネの問題、返しの禁止などが理由と考えられる」(捜査幹部)という。警察当局の未公表のデータによると、移籍時の山健組の構成員は約600人という巨大勢力だった。神戸山口組にとっては取り返しのつかない移籍劇だった。
神戸山口組からは山健組だけでなく、宅見組、池田組、侠友会、正木組といった結成時の中核組織がすべて離脱か解散し、四分五裂の状態だ。
「神戸山口組の井上組長がそれでも白旗を上げないのは…」
分裂劇を注視し続けてきた首都圏に拠点を構える指定暴力団幹部は、抗争の行方をこう語る。
「分裂による対立はすでに決着しているようなもの。神戸山口組の井上組長がそれでも白旗を上げないのは、組のために懲役に行っている者たちを待つ意味もあるのだろう。亡くなった者もいる中で、自分だけ組長の座から降りられる訳がない。同様に6代目山口組の司組長も、高齢などを理由に後進に譲れば神戸の独立を認めることになる。だから、相手が降参するまで辞めないだろう」
対立抗争が最も激化したのは2019年の秋。同年10月、当時は神戸山口組の中核組織だった山健組の組員2人が神戸市内の同事務所近くで同時に射殺された。逮捕されたのは6代目山口組系の幹部だった。同年11月には神戸山口組最高幹部が尼崎市内で米軍が公式採用されている自動小銃「M16」で数十発の銃弾を浴びて殺害された。この事件でも逮捕されたのは6代目山口組系の元組員だった。
続発する凶悪事件に対処するため、警察当局は6代目山口組と神戸山口組の双方を暴力団対策法に基づいて、「特定抗争指定暴力団」に指定した。設定された警戒区域で、5人以上で集合すると、中止命令などの行政手続きを経ずに、即座に逮捕となる。本部事務所などは使用することができずに活動は厳しく制限される。
多くの事務所がある神戸市、大阪市、名古屋市などが警戒区域に設定され、毎年の恒例行事や定例の会合などは静岡県などで開催されている。
「対立状態が続けば特定抗争指定は解除せず継続する」
勢力差が広がる状況でも、警察は特定抗争指定を解く気配はない。前出とは別の警察当局の捜査幹部は、その理由をこう語る。
「対立状態が続けば特定抗争指定は解除せず継続する。それによって両組織の活動は規制されるので、押さえ込みの効果はある」(敬称略)
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(尾島 正洋)
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