“伝説のコンサル”齋藤ジン氏が明かす〈トランプ関税 ホントの狙い〉「中国に本当に関税60%を課したら…」

2025年4月20日(日)7時0分 文春オンライン


あのジョージ・ソロスを大儲けさせた〝伝説のコンサル〟齋藤ジン氏が明かす、トランプ大統領の経済政策のリアルとは……。斎藤氏とジャーナリスト・池上彰氏の対談「 日本復活のチャンスが来た 」から一部紹介します。



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関税をレバレッジとして利用


 池上 トランプ氏はことあるごとに輸入品に関税をかけると言いますが、実際には高関税が目的ではなくて、最初にふっかけておいて、それを材料にディール(取引)をし、アメリカにとって得になることを引き出そうとしている。そう考えていいのでしょうか。


 齋藤 いいと思います。トランプさん本人も言っていますが、関税をレバレッジ(てこ)として利用しています。もし中国製品に対して、本当に60%の関税を課したら、アメリカ経済はつぶれてしまう。ですから、そういうことはしていませんし、今後もしないでしょう。



齋藤ジン氏 Ⓒ文藝春秋


 池上 EUに対しても高い関税を課すと言っていますね。


 齋藤 EUについてもレバレッジがほとんどだと思いますが、最終的には国家安全保障上の理由で関税を課すかもしれません。米中の緊張がさらに高まったり、台湾有事が起きたりしたら、国家安全保障に関連するもの、例えば、医薬品や鉄、半導体などは国内や同盟国で作っていかなければなりません。その事態に備えて、生産設備を国内や同盟国に戻しておきたい。そのための高関税は実行される可能性があります。


トランプ最大の武器は直感力


 池上 トランプ大統領にそこまでの深謀遠慮があるようには見えないときがあります。彼は直感に優れた政治的天才なのか、それとも運がいいだけで、単なる思いつきがうまくいっているだけなのか。


 齋藤 国民や目の前にいる相手が何を求めているのかを察知し、共感する直感力は天才的だと思います。


 池上 表には出ずに裏でアドバイスするブレーンはいるんですか。


トランプの「勝利の方程式」とは


 齋藤 トランプさんは、政権スタッフの間でライバル関係を作り、彼らを競わせて、意見を吸い上げ、見極めていくそうです。トランプ政権にいた方によれば、「閣議で自分に全然関係ない話をふってくる」。トランプさんは、問題が今、発生しているということは、専門家の見解や意見は正しくなかったのだ、と考える。そこで「専門家ではない、あなたはどう考えますか?」と既成概念に捉われないアイデアを訊いてくる。


 池上 なるほど。


 齋藤 また、トランプさんの強みは、エリートたちだけでなく、一般庶民とも瞬時に心を通わせられることです。彼が外国からアメリカに帰還した二等兵と面会したとき、その兵士は「この人は私の苦しみを理解してくれた」と感動していたそうです。そしてそれは、なぜ戦争がうまくいっていないのか、現場の声を聞くことで、将軍たちによって歪曲されていない情報を求め、新たな視点で課題に向き合うスタイルに通じます。ただ、このエピソードを教えてくれた方は、「トランプ氏の問題は、二等兵と将軍の意見を同じウェイトで聞き入れてしまうことなんだ」と苦笑いしていましたが。


 また、トランプさん自身は秩序立てて物事を考える人ではないが、勝つことに異常にこだわるとよく指摘されます。直感的にどちらが強いかを判断して、強い方、勝つ方に賭け続ければ、最後に勝つことができる。それがトランプさんの勝利の方程式のようです。



※本記事の全文(約10000字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「 文藝春秋PLUS 」と、「文藝春秋」2025年5月号に掲載されています(齋藤ジン×池上彰「 日本復活のチャンスが来た 」)。



(齋藤 ジン,池上 彰/文藝春秋 2025年5月号)

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