どうなる「もしトラ」消費税アップにオイルショック再び?第2次トランプ政権で変わる私たちの生活

2024年4月25日(木)8時0分 週刊女性PRIME

トランプ大統領

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 今年の流行語大賞の候補ともいわれている“もしトラ”─もしトランプ氏が、次のアメリカ大統領選で再選したら。日本に及ぼされるあらゆる影響を想定、懸念する上で生まれた言葉だ。

バイデン大統領とトランプ氏の直接対決となる可能性



 今年11月に迫る大統領選では、民主党のバイデン大統領と、共和党のトランプ氏の直接対決となる可能性が極めて高い。もはや“もしトラ”の段階ではなく、“ほぼトラ”だともいわれ始めている。

 それにしても、以前から健康不安説がささやかれるバイデン氏はすでに81歳。比較してやや若く見えるトランプ氏ももう77歳。日本では国会議員の“老害”がたびたびやり玉に挙がるが、アメリカ国内でも、ふたりの年齢を危惧する声は少なくない。

 実際、アメリカの大手メディア・ABCが2月に報じた世論調査では、バイデン氏が2期目を務めるには「高齢すぎる」と回答した人が86%。トランプ氏についても、62%の人々が同様の回答をした。ここに至るまで、2人のほかにフレッシュなリーダー候補はいなかったのかと単純な疑問が湧くが……。

「アメリカの大統領は、よほどのことがない限り2期8年を務めるのが慣例です。しかしトランプさんはバイデンさんに敗れたことで、1期で退陣せざるを得なかった。共和党としては、2期目を狙うバイデン大統領をトランプさんの勝利で破り、リベンジを果たしたいという思惑があるのです」

 と話すのは、経済ジャーナリストの須田慎一郎さん。

 どちらが当選しても日本はアメリカに追従するしかないが、トランプ氏が有利とされるなか、“もしトラ”が実現すれば日本にどのような影響があるのか。特に私たちの生活に直接関わってくる3つのポイントについて、須田さんにやさしくわかりやすい言葉で解説してもらった。



消費税増にオイルショックの可能性も



「まずは大幅な消費税アップのリスク。これには防衛費が密接に関係しています。以前のトランプ政権は日本に対し、防衛費をGDP比2%に増額するよう要求しました。日本政府はこれに応え、'27年までの実現を計画しています。しかし“もしトラ”では、これをさらに上回る防衛費の増額を要求される可能性も。そうなると消費税のアップは避けられないでしょう」(須田さん、以下同)

 日本の防衛費は'70年代からGDP比1%以内で推移し、直近でも1%をわずかに越える程度だった。これを2%にするには'22年度に5兆4000億円だった防衛費を、'27年度には約11兆円にまで増やさなければならない計算だ。

「2%に引き上げるだけでも年間1兆円の増税が必要とされています。それなのに“もっと出せ”となれば、さらなる増税のリスクは当然出てきます」

 2つ目のポイントは為替問題。歴史的水準が続く円安だが、“もしトラ”となれば一転して円高に傾く可能性が。これがひいては、日本の株安を招く要因になるという。

「円安が続いている大きな原因は、アメリカと日本の金利差。アメリカの金利は上昇傾向ですが、もともと実業家出身のトランプさんはこれを企業にとってマイナスと判断し、金利を下げるようFRB(アメリカの中央銀行にあたる機関)に圧力をかける可能性も。そうなると日米の金利差が縮小し、いまの状況から一転して円高に傾くことも想定されます」

 自動車や半導体部品など輸出産業がさかんな日本では、円安のほうが有利なため「円安-株高」「円高-株安」の組み合わせがセオリー。今年の2月には日経平均株価がバブル最高値を更新したが、“もしトラ”でこの爆上げ相場もそろそろ終わりが見えてくるかもしれない。



何をやりだすかわからないのがトランプ

「金利政策はあくまで一例でしかなく、対中政策、温暖化対策、移民問題などありとあらゆる面で何をやりだすかわからないのがトランプさん。極端な政策下では、マーケットは単純に株高、株安とわかりやすい動きをするのではなく大きく乱高下する可能性が高い。投資家にとってはこれがいちばんのリスクです。新NISAで投資を始めたばかりの人たちは、しばらく様子見したほうがいいかもしれませんね」

 最後のポイントは、イスラエルとパレスチナの戦争の行方だ。

「トランプさんは思いっきりイスラエル寄りの方。“もしトラ”はイスラエルにとっては追い風ですので、パレスチナに対する圧力や攻撃をさらに強める可能性が高い。そうなると中東情勢は急激に悪化していき、結果的に日本への石油の供給が滞ることも予想されます」

 すでに現時点でも、この戦争はさまざまな方面に飛び火している。イスラエルは、パレスチナ自治区を支配するイスラム組織・ハマスを支援するイランと対立を深め、4月1日に在シリア・イラン大使館を攻撃。4月14日には、これに対するイランの報復行動が問題になったばかりだ。

「イスラエルとイランの全面戦争なんてことになればもう悪夢。日本に石油が入ってこなくなれば日本経済はもちろん、私たちの生活もめちゃくちゃになってしまいます」

 '70年代の第四次中東戦争は世界中で「オイルショック」を引き起こした。日本ではトイレットペーパーの買い占めが象徴的だが、消費者物価は当時20%も値上がりし、日本の高度経済成長を終わらせた原因とされている。あの狂乱が再び起こることもあり得るというわけだ。



トランプ氏再選で日米関係はどうなる?

 では実際のところ、“もしトラ”が起こる確率はどの程度なのだろう。

「70〜80%だと僕は思っています。今の時点では世論調査でもトランプさんが優勢ですが、あと半年あるわけですからまだまだ何が起こるかわかりません」

 “トランプリスク”については日本国内でもさまざまな意見があるが、須田さんとしてもやはり「トランプさんよりバイデン大統領が再選したほうが、日本にとっては都合がよさそう」との考えだ。

「4月の岸田文雄首相の訪米が国賓扱いだったことからも、バイデン大統領は日本との関係性をある程度、重要視していることがよくわかります」

 一方、トランプ前大統領は、かつて安倍晋三元首相と蜜月関係だった。しかし安倍氏亡き今、再選後に日本にどのような対応をしかけてくるかまったく予測がつかない。

「アメリカ第一主義を訴えるトランプさんは、自国以外がどうなろうが知ったこっちゃない。日米関係が冷え込む可能性は十分ありますが、逆に劇的に改善する可能性もないことはない。いずれにしても日本にとって先々の見通しを立てやすいのは、トランプさんよりバイデン大統領であることは確かでしょう」

 強大な力と勢いをもって返り咲こうとしているトランプ氏。物価高、株価暴落、増税とありとあらゆるリスクを想定し、来たるべき“トランプ2・0”に備えるしかない。

須田慎一郎 経済誌記者を経てフリー・ジャーナリストに。『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)への出演など多方面で活躍。著書に『一億総下流社会』(MdN新書)など多数

<取材・文/植木淳子>

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