《最上階は1部屋300億円?》それでも、取材歴22年の不動産ジャーナリストが「買うなら港区一択」と唸った理由とは?

2025年5月14日(水)7時0分 文春オンライン


東京のタワーマンション市場が熱を帯びている。港区の超高層マンションは驚異的な価格上昇が続いており、最上階は1部屋2億ドル(円換算で300億円)と噂される。こうした高額物件の購入者は、どんな“景色”を見ているのか。不動産業界を22年にわたって取材してきた吉松こころ氏がレポートする。



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「東京の“重心”は港区に……」


 タワマン御三家の一つで、東京のタワーマンションストーリーはここから始まったと言われる、「赤坂タワーレジデンストップオブザヒル」は、六本木ヒルズやアメリカ大使館をも見下ろす高台に建つ。この物件でさえ、2008年の新築当時の坪単価は、490万円だった。それから16年を経た、2024年9月の取引では、坪1366万円をつけた部屋があった。



“取材歴22年の不動産ジャーナリスト”吉松こころ氏が「買うなら港区一択」と思った理由とは?


 私は、この「赤坂タワーレジデンストップオブザヒル」の25階にある住民用のラウンジに行ったことがある。居住している友人が案内してくれたのだ。100平方メートルは超えるような大きなバルコニーがあって、外部に出ることができた。右も左も、港区虎ノ門の再開発現場がよく見えた。丘の上というだけあって巨大な建築用クレーンでさえ見下ろすような見晴らしの良さだ。


 友人が言った。


「あっちにもこっちにもどんどんビルが建っていくのがよーく見えるでしょう。ここにいたら、東京の“重心”は港区に移ってきているなあって日々実感できるんです。港区に住んでよかったですよ。ワクワクしますから」


 上から見下ろしている人々と、下から「どんな人が住んでいるんだろう」と指をくわえて見上げている人々では、見ている“景色”もそこから得られる“戦略”も全く違う。


 束の間見た私でさえ、「買うなら港区一択だな」と思った。


最上階が一部屋300億円の物件とは?


 東京都港区の相場を押し上げた要因の一つに、2023年に出てきた二つの物件がある。


「麻布台ヒルズ」と「三田ガーデンヒルズ」だ。


 前に触れた「麻布台ヒルズ」は、森ビルが、旧郵政省本庁舎跡にあった日本郵政グループ飯倉ビルを解体し、8.1ヘクタールの土地に建てた、地上64階建て、日本一の高さを持つビルだ。300人の地主と400人の借家人との合意形成には、30年の月日を要した。


 完成後は、オフィス棟で2万人が就業し、住居棟には3500人が住む。分譲マンションの価格帯を森ビル広報に問い合わせたが、価格も購入者の属性も国籍も非公開と言われた。「広さだけでも」と粘ると、「6ベッドルーム」と言われ、「そうきたか」と思った。外国人に伝わりやすい表現なのだろう。


 その頃、インターネット上では最上階、64階の部屋は2億ドルという噂が飛び交っていた。1ドル=150円で計算すると、一部屋300億円となる。


 2023年12月頃の、29階の205.25平方メートルの部屋の募集チラシが手元にある。販売価格は、20億5000万円と記載されている。坪単価にすると、3302万円ということになる。


 森ビルは、前例のない坪単価をつけるプライスリーダーだ。最初に坪単価1000万円の大台を突破させたのも森ビルだった。


 港区でマンションを売りまくる仲介営業マンは言う。


「『麻布台ヒルズ』が異常な値段をつけてくれたお陰で、周りの数億円のマンションが安く見えちゃう効果が生まれています。『麻布台ヒルズ』に引っ張られる形で周辺のマンションも値上がりしていて、売る方の僕らとしては助かっています」



※本記事の全文(約1万字)は、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」と、「文藝春秋」2025年6月号に掲載されています(吉松こころ「 港区マンション業界ウラ話 」)。全文では下記の内容をお読みいただけます。
・不動産をめぐる人間ドラマ
・プロも見誤るほどの値上がり
・「富裕層の金庫」代わり
・一生悔やまれる売却



(吉松 こころ/文藝春秋 2025年6月号)

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