[陸奥讃歩]自然と人の生活を結びつけた風情ある道、日本らしいトレイルを後世に 

2025年5月14日(水)5時0分 読売新聞

トレイルデイズで講演する土屋さん(4月19日、宮城県名取市で)

Hiker’s Depot(東京都三鷹市)店主 土屋智哉さん 53

 欧州由来の登山文化と北米由来のロングトレイル文化。登山でよじるルートは自然の摂理に導かれるように選ばれます。しかしロングトレイルで歩くルートは自然だけでなく歴史民俗も加味した地域計画として設定されます。そして長い年月の中でトレイル沿線の町や住民とともに少しずつ変化、成長していくものなのです。

 日本の長距離自然歩道が手本としたアメリカのアパラチアン・トレイル(AT)も同じです。100年以上の歴史をもつATですが、現在の姿は数多くのルート変更が重ねられた姿です。旅する土地を知りたいハイカーと、地元の素晴らしさを伝えたい住民との交流が深まれば、もっといい場所を歩きたい、歩かせたい、そんなお互いの思いがルート変更につながるのは不思議なことではありません。

 アメリカと日本では自然環境も歴史背景も異なります。海岸線や山中の深くまで人々の生活が息づいてきた日本ではアメリカのような広大で無人の原野は望めません。

 しかし歩くことで生まれた生活道は日本のいたるところにまだ息づいています。車移動を前提とした幹線道路がいやでも目に入る日本ですが、目を向けるべきは幹線道路の発達に隠れた、歩くことで生活を支えてきた旧道にこそあります。

 その土地の自然と人との生活を結びつけてきた生活の道こそ、日本の風情を後世に残す道なのです。みちのく潮風トレイルは、そんな生活道に目を向けた日本のロングトレイルです。しかし、その志はまだ道半ばです。

 4月に宮城県名取市閖上で開催されたトレイルデイズには東北各地からハイカー、サポーターが集まりました。自分たちのホームトレイルを愛する人々がトレイルのこれからを育てます。

 みちのくの風情と旅情を50年後にどうトレイルとして残していくか。みんなで大志を抱き、未来を語り合える、そんな空気は今の日本で、みちのくにしかない誇れるものなのです。

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