ボートレース場でギャンブル依存を考える…保健師が職員に研修「完治は難しいが回復はできる」
2025年5月15日(木)11時0分 読売新聞
券売機には注意喚起のシールが貼られている
政府が定めた「ギャンブル等依存症問題啓発週間」(14〜20日)に合わせ、佐賀県は14日、唐津市のボートレースからつで啓発キャンペーンを行った。県が2023年度から開いているギャンブル依存症について考える連携会議で、ボートレースからつ側からの打診を受けて初めて実現した。県の担当者は「ギャンブルをする人や携わる人に依存症の知識を持ってもらうことで、未然防止につなげたい」と話す。(立山芽衣)
「依存症はやめたくてもやめられない状態。完治は難しいが、回復することはできる」
14日、ボートレースからつで、接客にあたる職員向けに開かれた研修会。県精神保健福祉センターの保健師、大谷美和さんが、職員ら約20人を前に、依存症の症状や、当事者だけでなく家族の心身にも影響が及ぶことなどを解説した。
意見交換もあり、ボートレース職員からは「『私をレース場に入れないようにしてほしい』と申し出があったことがある」「来場者から『お金を貸して』と言われ、断ると逆上された」といった経験談が聞かれた。
研修会を受け、唐津市ボートレース企業局企画宣伝課の浜村宜弘係長は「研修をきっかけに、職員たちの意識も変わったと思う。依存症に関する相談が寄せられれば、窓口などを伝えたい」と話していた。
また、依存症の自己診断シートが付いたパンフレットも配布された。この日は、ボートレースからつでのレースはなかったため、他会場の舟券が購入できる外向発売所を訪れた人に、「全国ギャンブル依存症家族の会佐賀支部」のメンバーらと県職員約10人が、「啓発週間です」などと声をかけて、手渡した。レースが行われる20日も配布するという。
ギャンブル依存症を巡って、同センターには昨年度、来所と電話で計約100件の相談が寄せられたという。山口玲子係長は「今回のキャンペーンを通じ、ギャンブルを健全に楽しんでもらう中で、家族や友人に依存症が心配な人がいれば、早めに相談することにもつながってほしい」と話していた。
同センターでは、依存症に関する相談を随時受け付けている。当事者だけでなく家族やパートナーからの相談も可能。問い合わせは同センター(0952・73・5060)へ。
「無理のない資金で、余裕を持って」
ギャンブル等依存症対策基本法では、ギャンブルの関係事業者が依存症予防に配慮するよう定められており、公営ギャンブルの運営主体も対策を行っている。
ボートレースからつでは、券売機に「無理のない資金で、余裕を持ってお楽しみください」と書かれたシールを貼付。購入にのめり込む不安がある人に向け、相談窓口の番号も添えている。
全国24のボートレース場でつくる「全国モーターボート競走施行者協議会」では、依存症と診断されている人などの家族が、ボートレース場やチケットショップの「依存症相談窓口」に申請書類を提出すれば、当事者の入場規制を行うことができる。また、インターネットで購入できる上限額の設定も受け付けている。
公営ギャンブルを運営する全国の5団体でつくる「全国公営競技施行者連絡協議会」は「利用者が深刻なギャンブル依存に陥る前に具体的な対策を講じられるので、関係事業者の取り組みは、有効な依存症対策の第一歩になる。引き続き、適切な対応を図る」とコメントしている。