JR川口駅に上野東京ライン停車で考える 「中距離電車」は首都圏のどの駅にストップすると便利か
2025年5月19日(月)17時0分 J-CASTニュース
JR東日本大宮支社は、埼玉県川口市と「川口駅上野東京ラインホーム及び自由通路等整備に関する基本協定」を2025年4月24日に締結した。2037年度以降に、川口駅に上野東京ラインのホームができる見通しだ。
東京駅までラッシュ時でも31分程度
川口駅は現在、京浜東北線のホームがあるだけで、乗車人員7万4001人(2023年度)。市の人口60万7447人の中心駅としては、小規模な駅となっている。
いっぽう、上野東京ラインは南側では都県境を越えた赤羽駅(隣駅でもある)、北側では浦和駅で乗り換えることができ、決して不便ではないという現状がある。
川口駅を利用する人からは利便性が向上されるとの声があるいっぽうで、浦和や大宮以遠から利用する人からは混雑がさらにひどくなるという意見も出ている。
正直なところ、川口駅からの利用者の多くは都内に向かうと考えられ、都内への速達性の需要はあるものの、川口駅から東京駅までラッシュ時でも31分程度、平日昼間の田端〜浜松町間の快速運転時には25分程度であり、遠方の人の速達性を犠牲にする上野東京ライン川口停車の是非はいまいちわからないところではある。
しかし、自治体が支出し、ホームをつくることができるというのは興味深い話である。
そうなると、どこの中距離電車(上野東京ライン・常磐快速線・総武快速線など)の駅にホームを設けたらいいかを考えるのも、ありではないか。
もちろん、用地の制約など課題はあるかもしれないが、どこにできたら便利かということを考えたい。
南浦和駅、新松戸駅の「可能性」
まずは、他路線との乗り継ぎ駅には、交通網の利便性の上でほしいと思うのは自然なことだ。京浜東北線と武蔵野線の接続駅は南浦和駅である。南浦和で上野東京ラインや湘南新宿ラインに乗り継いで、都心に一気に行けたら、という発想をお持ちの方は多いだろう。だが南浦和では、武蔵野線からは京浜東北線にしか乗り継げない。
交通網の観点からは、大宮駅で高崎線と宇都宮線をひとつにまとめ、湘南新宿ラインと上野東京ラインそれぞれを接続させ、さらに東武アーバンパークラインやニューシャトルからの利用者を引き受けるという役割を担わせているため、南浦和では京浜東北線が武蔵野線を引き受けてほしいということであろう。
しかし、南浦和は交通の要衝であり、ここで中距離電車と乗り換えをしたいというのは切実ではないか。
そのあたりの切実さがさらにシビアなのは、常磐緩行線の新松戸駅ではないだろうか。同駅では常磐緩行線と武蔵野線が接続する。しかも新松戸から都心にはけっこう距離がある。このあたりでは常磐快速線が猛スピードで走行しており、そっちに乗れたら都心に早く着けるのに、と思う人は多いはずだ。
千葉県松戸市では新松戸駅への常磐快速線停車について整備効果の資料をまとめており、地域への効果が大きいということを示している。
ちなみに常磐快速線の柏駅には、常磐線が複々線になったあと、快速線にホームがなかった時期がある。柏は東武アーバンパークラインとの接続駅だ。
似たような状況にあるのは総武緩行線の西船橋駅だ。武蔵野線や京葉線、東京メトロ東西線や東葉高速鉄道との接続駅であり、多くの人が乗り換える。そんな駅に総武快速線はホームがなく、列車待ちの人の前を通過していく。
総武快速線の立場からすると、千葉駅で各方面の利用者を引き受け、船橋駅で京成各線や東武アーバンパークラインの利用者を引き受けているからもういっぱい、となるから、そのあたりは分担でお願い、となるのだろう。
蒲蒲線を踏まえて?蒲田駅に東海道本線ホームを
以前、蒲蒲線計画の取材をしていたときに、推進の立場で動いていた人から蒲蒲線建設に加えて蒲田駅の前を通り過ぎていく東海道本線にホームをつくってほしいという声を聞いたことがある。蒲田駅は、JR東日本は京浜東北線、東急池上線と東急多摩川線のホームがある駅で、地域の交通結節点ではあるものの、さらに遠くの人が利用するという駅ではない。蒲蒲線計画も始動している現在、東海道本線のホームを蒲田駅にという考えがもっと出てきてもいいと考えられる。
また東海道本線や横須賀線では、鶴見駅にホームがほしいという意見も見られる。ここに駅があると、羽沢横浜国大方面への行き来や、鶴見線との接続に便利ということだろう。
ここまで挙げた話は、机上の空論であり、現実には難しいという意見も多い。しかし、「中距離電車」の駅をここに......と考えるのは、楽しいのではないだろうか。(小林拓矢)
筆者プロフィール
こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『京急 最新の凄い話』(KAWADE夢文庫)、『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)。