【繰上返済は厳禁!】住宅ローンは積極的に長く借りるべき

2024年5月24日(金)6時0分 ダイヤモンドオンライン

【繰上返済は厳禁!】住宅ローンは積極的に長く借りるべき

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日本最大級の住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSの塩澤崇氏が、新時代に対応した住宅ローン本『金利が上がっても、 住宅ローンは「変動」で借りなさい』を上梓しました。今回は同書より、「住宅ローンを繰上返済するよりも、長く借りるほうが得する理由」を解説した箇所を紹介します。

Photo: Adobe Stock

メリットよりデメリットが大きい繰上返済は禁止!

 住宅ローンは借りているだけで非常にお得なので、「できるだけ長く借りておく」のが極めて有効です。

 その意味では、たとえ家を一括で買えるだけのキャッシュを持っていたとしても住宅ローンをあえて組んだほうがいいですし、頭金を入れたりするのもやめたほうがいいです。また、後ほどシミュレーションを示しますが、20年ローンのように最初から借入年数を縮めることもおすすめしません。

 繰上返済についても同じです。私はまったくおすすめしません。その理由について解説しましょう。

 まずは公平を期するために、繰上返済のメリットを挙げてみましょう。主に次の3点です。

・金利の支払総額を減らせる・定年退職後の家計が楽になる・精神的に借金から解放される

 これらについては私個人として否定するものではありませんし、人によっては多大なメリットだと思います。でも、本当にこのメリットだけで判断していいのでしょうか?

 住宅ローンに限らず、お金に関する選択をするときは「機会費用」の概念を持つことが大切です。機会費用とは、ある選択を行うことで失ってしまうものの価値を意味します。

 たとえば私は低金利で住宅ローンを長く組みつつ、浮いたお金で資産運用を行っていますが、もしその余裕資金で繰上返済をしたら、資産運用で得られたはずのリターンを失うことになってしまいます。

 ですので、繰上返済するかどうかの判断には「繰上返済したときのメリット」と「住宅ローンを借り続けたときのメリット」をしっかりと比較する必要があります。あえて繰上返済しないとどうなるのか、それも踏まえたうえで判断するようにしましょう。

 では、住宅ローンを借り続けるメリットは何でしょうか? それは住宅ローン減税を受けられることと団信に加入できることです。支払う金利以上にリターンが得られるので、借金からの解放という精神的メリットがよほど大きくない限り、繰上返済する意味はないです。

 メリットにはもう一つあります。それは手元に現金を残しておくことができる、ということです。「Cash is King」(現金は王様)という格言があるように、現金は家計を守るための生命線であり、いわば酸素のようなものです。会社経営をしている方はこのことを強く意識していて、積極的に銀行からお金を借りて資金が枯渇しないようにしていますし、そもそも繰上返済をすることはまずありません。 

 繰上返済をすることは、手元の資金を失うことにつながります。後から「家計が厳しいのでやっぱりお金を戻してください」と銀行にいっても不可能です。

 繰上返済をした時点ではある程度手元資金に余裕があっても、将来には教育資金、リフォーム資金といったまとまった資金が必要となることもあります。そのときにあらためて銀行から借りようとすると、住宅ローンよりもはるかに高い金利が2〜3%程度取られてしまいます。

 そう考えると、低金利の住宅ローンを繰上返済せず、余裕資金を教育費やリフォーム費用にあてるほうが金利負担を引き下げられますよね。“家計の経営者”として合理的判断をしてもらいたいと思います。

 また、低金利の住宅ローンを借りることで生まれる余裕資金を資産運用に回せることも見逃せません。

 たとえば、残り返済期間20年・500万円・金利0.5%の住宅ローンを借りていたとして、その500万円を一括で繰上返済した場合と、同じ500万円を年率2%の資産運用に回した場合を比較するとどうなるでしょうか?

 結果は、繰上返済で削減できる金利が26万円であるのに対して、資産運用で得られる利益は243万円です。図の通り、どちらがお得かは一目瞭然ですね。今回は保守的に資産運用のリターンを年2%で計算しましたが、経済情勢によっては年5%以上になる可能性もあり、その場合はますます繰上返済よりも資産運用を選択したほうが利益が大きくなります。

繰り上げ返済VS投資の差は9倍!

 というわけで、繰上返済をする前にぜひ「こんなにお得な住宅ローンを手放してもいいのか?」ということをしっかり考えてください。

 もし繰上返済したほうがいい状況があるとすると、資産運用の想定利回り以上に住宅ローンの金利が上がった場合に限られます。たとえば変動金利が3%程度に上がって、資産運用だと2%ほどの利回りといった場合です。

 とはいえそのような状況が来ることは今のところ考えにくく、現金に余裕ができたら、繰上返済よりメリットの大きい資産運用を選んだほうがよいと考えています。もちろん、繰上返済しなかった分を浪費してしまっては意味がないので、その点の資金管理はしっかりと行いましょう!

 余談ですが、日本人の繰上返済を好む性格が、政府が推進する「貯蓄から投資へ」の流れを妨げていると思います。

 手元に300万円あったら、住宅ローン返済に使うのが日本人の典型的な行動パターンといえますが、理屈から考えると「住宅ローンは借り続けるべき」という結論に至るはずです。

(※この記事は、『金利が上がっても、住宅ローンは「変動」で借りなさい』の一部を改変し公開しています。)

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