日米関税交渉 自動車含む包括合意を目指せ
2025年5月26日(月)5時0分 読売新聞
日米関税協議が本格化してきた。日本政府は自動車への高関税の見直しを含め、包括的な合意に向け、交渉を着実に進めていく必要がある。
赤沢経済再生相は訪米し、ラトニック米商務長官らと3回目の関税交渉に臨んだ。統括役のベッセント財務長官は欠席した。
赤沢氏は交渉後、記者団に「前回以上に率直かつ突っ込んだやり取りができた」と説明した。6月の先進7か国首脳会議(G7サミット)にあわせ「何かしら合意ができれば望ましい」と述べ、緊密な協議を進める考えを示した。
協議で難航しているのが、自動車や鉄鋼・アルミニウム製品といった分野別にかかる25%の追加関税の扱いだ。日本側は相互関税だけでなく、自動車などを含めて撤廃を求めている。
これに対し米国側は、世界各国・地域に一定比率をかける相互関税のうち、基本税率の10%を維持した上で、14%の上乗せ分を協議の中心にしたい考えだという。
自動車産業は裾野が広く、関連企業を含め約550万人の国内雇用を支えており、日本の対米輸出の約3割を占める最重要分野である。日本政府は、相互関税だけでなく自動車関税を含めた包括的な合意策を求めていくべきだ。
米国の関税協議を巡る情勢は大きく変化している。
ベッセント氏は4月上旬、各国との通商交渉で「日本が列の先頭にいる」と述べていた。
だが、米国は今月8日にまず英国と最初の合意に達した。
中国とは実質的な禁輸とも言える異常な高関税をかけ合っていたが、12日に大幅な関税の引き下げで合意した。米国内で高関税政策やインフレへの不満が高まっており、トランプ大統領にとって成果を急ぐ事情があったのだろう。
日本政府は各国の交渉状況の分析を深め、米国との協議に生かしていくことが大切だ。
相互関税の上乗せ分の適用は7月上旬まで90日間、停止されている。米国は、この間に各国との交渉をまとめていく方針だ。
石破首相は日米協議を前にトランプ氏と電話会談し、カナダで開かれるG7サミットにあわせて会談することを確認した。この会談が大きな節目となるだろう。
日本政府はこれまで、農産物の輸入拡大などを提案した。米国が経済安全保障上、重要視する造船分野で、共同生産なども検討する。日米がともに恩恵を得る枠組みに道を開くため、丁寧に対話を積み重ねてもらいたい。