「田んぼを手伝ってくれ」と言うと「笑っていた」遠藤章さん…関係者「粘り強い挑戦語り継ぐ」

2024年6月12日(水)19時48分 読売新聞

インタビューに応じる遠藤さん(2017年7月21日、東京都小金井市の東京農工大で)=三浦邦彦撮影

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 ノーベル賞の有力候補で、秋田県由利本荘市出身の東京農工大特別栄誉教授、遠藤章さんが5日、90歳で亡くなった。毎年、受賞発表日に集まり朗報を待つなどしていた関係者は落胆しつつも、後世に功績を伝えることに思いをはせていた。

 遠藤さんは、血中コレステロール値を下げる働きがある「スタチン」を発見。ノーベル生理学・医学賞受賞者の多くが事前に受賞している米国の「ラスカー賞」を2008年に、カナダの「ガードナー国際賞」を17年に受賞し、10年以上前から期待されていた。

 「粘り強く色々チャレンジをして世界的な発見をした努力は、語り継がねばならない」と話すのは、地元住民らでつくる「遠藤章博士顕彰会」の佐々田亨三会長(80)。「思い出を語る会を開き、追悼文集を作成し、可能なら先生の名を冠した賞を創設したい」と語る。

 同市東由利地区にある遠藤さんの生家に住む、おいの正悦さん(72)は「最後に電話したのは、先月20日。春頃から体調が悪化したと聞いていたので、深刻な話はやめようと思い『田んぼが忙しいので手伝いに来てくれ』と言った。スピーカーホンで横で聞いていた娘さんの話だと、にこっと笑ったそうだ」と話す。「おじさんは周囲に期待されるので合わせていたけれど、受賞にはこだわっていなかったと思う」と言う。

 同市は名誉市民でもある遠藤さんの追悼の方法を検討しているという。湊貴信市長は「先生は帰省した際、児童・生徒と交流をもたれ、出身校の東由利中学校生が東京農工大を訪問した時には、生徒たちに『人生は夢に向かって努力を続けること』と語りかけるなど古里を思っていた。そうした思いを受け継いでいきたい」とのコメントを発表した。

 佐竹知事は、「スタチンの発見と開発は、血管障害性疾患の予防や治療に画期的な成果をもたらし、我が国の医療分野の発展に貢献された。永年にわたる先駆的研究に改めて敬意を表する」との談話を出した。

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