《衝撃不倫》定年退職した夫から突然「別の女性と暮らすことになった」と言われ…60代妻が驚愕した“不貞相手”の正体

2024年11月5日(火)7時10分 文春オンライン

 臨床心理士・信田さよ子さんのもとには、親子関係や家族関係に悩みを抱える人がカウンセリングに訪れる。その多くは女性たちだという。いったい、彼女たちはどんな悩みを抱えているのだろうか——。


 ここでは信田さよ子さんの著書『 母は不幸しか語らない——母・娘・祖母の共存 』(朝日文庫)より一部を抜粋。信田さんのもとを訪れたアケミさん(仮名・60代半ば)はどんな苦悩を抱えているだろうか。(全2回の1回目/ 2回目 に続く)



©AFLO


◆◆◆


優しくて温厚な夫だった


 アケミさんは60代半ばだが、ショートカットにグレーの髪がよく似合う。なんとか私に背中を押してもらいたいと思って来談した。


 夫は2年前に定年退職し、長男は研究職で海外在住、長女は公務員で近所に住んでいる。2人の孫の保育園の迎えを引き受けているが、仕事帰りの娘が訪れ、孫も含め5人で夕食を囲む時間が何よりの幸せだった。アケミさんは育児の手が離れたころから勉強をして、介護の資格をいくつか取得した。孫のお迎えとバッティングしないように調整し、2つの高齢者施設で仕事をしている。


 2歳違いの夫とは学生時代に知り合い、親の反対を押し切って同棲後、結婚した。妊娠するまでは共働きだったが、夫の海外転勤とも重なったので退職し、しばらくは専業主婦として育児に専念した。夫とはどんな忙しいときも会話を欠かしたことはなかった。


 会社の仕事が大変だったときも、夫は私生活に仕事の話題を持ち込むこともなく、むしろアケミさんの日常の大変さを思いやって話を聞いてくれた。同世代の友人たちが集まると必ず出る夫の愚痴も、自分には無縁のものとしか思えなかった。


「本当にやさしくて、温厚な夫でした。一人娘の私が近所に母を引き取って住まわせることにしたときも、両親のいない彼は賛成してくれたんです」


思いもかけない不意打ちの言葉


 夫の唯一の趣味は登山だった。年に2回は必ずフル装備で山に登った。頂上で雲海をバックに撮った写真が何枚も居間に飾られている。定年後は登山の頻度も上がり、体力づくりのためのジョギングも欠かさなかった。


 そんなアケミさんがカウンセリングにやってきたのは、半年前の夫の言葉がきっかけだった。


 いつもどおり夕食を済ませた後、リビングのソファに座った夫は珍しく硬い表情で話があると言った。


「実は家を出ようと思ってるんだ」


 思いもかけない不意打ちのような言葉にアケミさんは驚いた。


「ええっ? それっていったいどういうこと?」


 はっきりと、そしてゆっくりと夫は告げた。


「実は、別の女性と暮らすことになっている」


「僕は、家を、出たいんだ」


「家を出るって? それであなたはどうするの? 何をしたいわけ?」


 しばらくの沈黙ののち、夫はアケミさんの目を見つめながら言った。


「黒姫に住むことにした。実は、別の女性と暮らすことになっている」


「…………………」


「僕は、僕は生き直したいんだ」


 その後アケミさんは、半狂乱となり、夫に詰め寄った。いったい何が不満なのか、いつからそんな計画をしていたのか、相手の女性はどんな人なのか、これまでの生活をすべて捨ててしまうのか、私のどこが悪かったのか……。夫はそれに対してあまりはっきりとした返答をしなかったが、それらがすべて相手の女性をかばう態度と思われ、さらにアケミさんの怒りと混乱は激しくなった。


相手は同年代の登山仲間だった…


 そんな修羅場の数日を経て、娘や孫には一切心配をかけたくないと思ったアケミさんは、自分1人の胸の中にしまうことにした。相手の女性についても、振り返ってみれば思い当たるふしがいくつも見つかった。


 夫の登山仲間であるその女性は、定年退職後の夫の登山にはいつも同行していたようだ。黒姫という土地もそこから選ばれたものだろう。


 相手が若い女性だったらわかりやすかったが、なんとその女性は夫より3歳年下で、アケミさんとほぼ同年だったことも衝撃を深くした。夫は予告どおり、その告白の1週間後に小さなカートを引いて家を出て行った。


相手女性の家に乗り込んで行こうと思い詰めたが…


 相手の女性の家に乗り込んで行こう、自爆テロのように相手も夫も、そして自分も破滅に追いやろう、私立探偵を使ってすべての情報を手に入れようと思い詰めたこともあった。しかし最後に行きつくのは、自分がみじめになることだけは避けたい、破滅的になれば自分の最後のプライドまでが崩れる気がする、という考えだった。


 夫が生き直したいのなら、私も生き直してやる、そのためにはどうすればいいのか……。アケミさんは、そんなぎりぎりの地点で何とか踏みとどまり、カウンセリングにやってきたのである。


 多くの部分をプライバシーに配慮して改変しているが、アケミさんと同じような例はいくつもある。来談するのはきまって女性の側であり男性ではない。そして全員が涙も出ないほど憔悴しきっている。夫に対抗して浮気でもしてやろうと思っても、そんなことはできない、虚しいしみじめになるだけだと語る。


 彼女たちに共通しているのは、50代後半から60代にかけてという年齢、知的で自立的であること、時には実に魅力的に思えること、そして夫を心から信じ切って結婚生活を送ってきたことである。RLI(愛と性と結婚の三位一体説=ロマンティック・ラブ・イデオロギー)を身をもって生きてきたといえるだろう。


 アケミさんのように、その出来事さえ起きなければ、夫への信頼は揺るがなかっただろう。そして愛し愛される夫婦関係はほんとうに存在するという証明にもなっただろう。

〈 「まじめに仕事をし、妻を愛してきた」夫が定年後に“裏切りの不倫”。いったいなぜ…? 不貞行為をした男性の“衝撃的な言い分” 〉へ続く


(信田 さよ子/Webオリジナル(外部転載))

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