本当に迷うなら「半々」でもいいけれど…「米国株と全世界株」新NISAではどちらを選ぶのが正解なのか

2024年2月5日(月)15時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dragon Claws

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新NISAではどう投資をすればいいのか。個人投資家の山口貴大さんは「米国株と全世界株式で意見が二分しているが、結局のところ好みの問題に過ぎない。とにかくいち早く始めることが重要だ」という——。

※本稿は、山口貴大『【新NISA完全攻略】月5万円から始める「リアルすぎる」1億円の作り方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/Dragon Claws
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■米国株と全世界株式、どちらが正解か


新NISAにおいて、米国株と全世界株式のどちらに投資したほうがいいのでしょう?


「米国は政治、経済、軍事、技術革新の面で世界最強。今後も10年、20年はその地位は揺るがないから米国株一本でいい」


という意見もあれば、


「全世界株式に投資していれば、国すら選ばなくていい。今後、米国が凋落して、ほかの国が世界覇権を握る可能性も考えると全世界株式のほうが無難」


という意見もあります。


SNS上では、S&P500派とオルカン(「オール・カントリー」の略で、全世界株式のことを指す)派に分かれて、どちらが優れているか、どちらが資産運用により成功しやすいか、喧々囂々の議論が繰り広げられています。


私の結論はというと、「正直、どちらも正解だと思います!」というものになります。


■旧NISAでインデックスファンドが大流行した理由


全世界株式ではなく、米国株を選ぶ理由は単純に、過去の実績から見ると米国株のリターンのほうが高いことが最大の要因になります。


2023年で終了するつみたてNISAでは、インデックスファンドへの毎月定額つみたて投資が大流行していて、主要なインデックスファンドの純資産総額はぞくぞくと1兆円の大台を突破しています。


2023年7月末現在、純資産総額の多い順に並べると、


1位「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」2兆4610億円
2位「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」1兆3363億円
3位「楽天・全米株式インデックス・ファンド」1兆551億円
4位「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」1兆501億円


となっています。


「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が2位に食い込んでいますが、そのほかの1兆円超えファンドはいずれも米国株に連動しています。


純資産総額の状況からも、2018年に始まったつみたてNISA経由で、多くの個人投資家の資金が米国株インデックスファンドに流れ込んでいることがわかります。


米国株式を選ぶ理由は、


(1)米国通貨ドルが世界の基軸通貨だから
(2)米国企業の多くは全世界で稼いでいるから
(3)米国株に投資するほうが全世界株式に投資するよりパフォーマンスが高い
(4)米国株を選択する投資家のほうが多い


といった点になります。


写真=iStock.com/Darren415
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■全世界株と同程度のリスクで年10%超のリターンを出してきた


金融商品を評価する際は、その金融商品が「どれぐらいのリスクをとって、どれぐらいのリターンを得ているか」を比べるのが一般的です。


リスクが低い金融商品はリターンもそれほど高くないのが資産運用の常識です。逆に、リターンが高い金融商品はリスクも高くなります。


しかし、1998年1月末〜2022年3月末までのS&P500と世界株式のリターンとリスクを比べてみると、S&P500のほうが世界株式よりリターンが2%以上高いにもかかわらず、S&P500と世界株式のリスクには1%以下の差しかありません。


24年2カ月という期間中、S&P500は世界株式とほぼ同じリスクでありながら、それよりかなり高い、年率10%超のリターンを叩き出してきたということです。


この過去の実績が、全世界株式より、S&P500など米国株に投資したほうが、将来もいい結果を残せるのではないかという根強い期待感につながっています。


私もS&P500の優位性は否定しません。


■今後もS&P500が世界最強の株価指数である保証はない


むろん、S&P500が全世界株式よりも成績がよかったのはあくまで過去の話。今後もS&P500が世界最強の株価指数であり続ける保証はありません。


新NISAは20年、30年どころか、100歳まで一生涯、非課税運用を続けるための投資制度です。超長期的な視点で見たら、今後、アメリカに代わって巨大な人口を抱えるインドや中国といった新興国が世界経済の頂点に立っているかもしれません。


S&P500ではなく、全世界株式を選んでおけば、どの国の株式市場の調子がよくても、その恩恵を受けられます。全世界にベット(賭け)しているのでハズれることがない、というのが全世界株式の強みです。


●カントリーリスクで悩まなくていい。国ごとの好不調を考える必要がない
●資産を分散させることが安定運用につながることを説いた「現代ポートフォリオ理論(※)」に近い運用ができる


といった点が全世界株式を選ぶ理由になるでしょう。


※現代ポートフォリオ理論とは、運用資産(=ポートフォリオ)のリターンとリスクの最適解を探るために構築され、1990年にノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコウィッツ氏が提唱したもの。


■オルカンでも資産の6割前後は米国株運用になる


とはいえ、全世界株式の株価指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」の2022年9月末時点の国・地域別の構成比率をみると、米国の比率が62%ですから、全世界株式のインデックスファンドに投資していても資産の約6割前後は米国株で運用していることになります。


組み入れ比率の上位企業もアップル、マイクロソフト、アマゾン・ドット・コムなどの「GAFAM」やエヌビディア、テスラなど米国の巨大IT企業がほぼ独占。


唯一、米国企業以外でトップ10入りしているのは、アップルのiPhoneを製造している世界一の半導体受託製造会社のTSMC(台湾積体電路製造)ぐらいです。


■どちらがいいかは結局のところ「好みの問題」に尽きる


SNSなどで盛んに議論されている「S&P500か全世界株式か、どちらがいいのか」についての私の結論は、「それは好みの問題」というものになります。


SNSではS&P500派とオルカン派が互いにマウントをとるような言動も見られますが、あまり意味はありません。世の中には海好きな人もいれば、山好きな人もいますし、インドアを好む人もいればアウトドアが好きな人もいます。


「お前の好みは間違っている」とは誰もいえません。


タイプ別でどちらがおすすめかを決めるなら、


○新しいものが好きで流行に敏感→S&P500
○特定の国より世界や地球全体が大好き→全世界株式
○過去の実績重視→S&P500
○幅広く資産を世界中に分散して投資したい→全世界株式
○アメリカやITが大好き→S&P500
○日本やヨーロッパも好き。新興国にも興味がある→全世界株式
○米国の個別株投資にも挑戦したい→S&P500
○投資のことは何も考えず、ほったらかしで運用したい→全世界株式


といった診断結果になるでしょうか。


■「迷うから半々」でもいいのでとにかく投資を始める


迷ったら両方という考え方もあります。



山口貴大『【新NISA完全攻略】月5万円から始める「リアルすぎる」1億円の作り方』(KADOKAWA)

本当に迷っているなら、それでもいいでしょう。


ただし、全世界株式にも米国株が約6割入っているので、S&P500に全世界株式を足すのは、運用資産に占める米国株比率を多少、薄める“気休め”程度の効果しかありません。


S&P500に連動するインデックスファンドをメインで保有したうえで、インドや東南アジア、中国、中東、アフリカなど、これから伸びると思う新興国や新興地域に特化した投資信託やETFを、新NISAの成長投資枠を使って少し買ってみる、という考え方もあるでしょう。


「米国一辺倒は怖いけど、新興国もリスクが高そう」という人は、ヨーロッパなどを含む先進国株式に連動したインデックスファンドに投資するのも一つの考え方です。


ただ、「S&P500か全世界株式かを考えると夜も眠れない」という人は、S&P500を半分、全世界株式を半分でもかまわないと思います。


とにかく投資を始めること。その最初の一歩としてS&P500か全世界株式に連動するインデックスファンドを買うのが最適解であることに変わりはありません。


「見る前に跳ぶ、迷う前に動く」という意味では、2つのインデックスファンドのどちらかを選んで、新NISAで毎月定額つみたて投資するのが基本中の基本なのです。


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山口 貴大(やまぐち・たかひろ)
Financial Free College代表
ネット関連会社などに勤務後、独立してサービス業関連会社を興す。2018年に売却、その売却益を米国株を中心に運用する。2019年、YouTubeチャンネルを開設し、「ライオン兄さんの米国株FIREが最強」を運営中。2020年、金融・起業のマネースクール「Financial Free College」を設立。SNSでは「ライオン兄さん」名義で活動。著書に『年収300万円FIRE 貯金ゼロから7年でセミリタイアする「お金の増やし方」』、『【新NISA完全攻略】月5万円から始める「リアルすぎる」1億円の作り方』(ともにKADOKAWA)がある。
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(Financial Free College代表 山口 貴大)

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