大浴場で「ポカリ飲み放題」も提供中…「ドーミーイン」があり得ないほど快適なサービスを連発できるワケ

2024年2月8日(木)11時15分 プレジデント社

ドーミーイン事業本部 首都圏事業部部長の平山さん - 撮影=プレジデントオンライン編集部

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全国展開するビジネスホテルチェーン「ドーミーイン」には、熱狂的なファンがいる。彼らの多くは、大浴場の快適さを挙げる。どこがすごいのか。経済ジャーナリストの高井尚之さんがリポートする——。(前編/全2回)

■出張族に愛されるドーミーインの4本柱


昨年12月下旬、東京駅から東海道新幹線に乗車して数泊の取材出張に出掛けた。年末帰省や観光旅行の直前だったが、東京や名古屋など主要ターミナル駅は大混雑していた。


コロナ禍が明けた現在、「宿泊を伴う国内出張」に行く人も多いだろう。筆者はこれまで数回、仕事関係者を通じて出張時の「ビジネスホテル選び」を調べてきた。個別の声は後述するが、重視するのは「朝食」、「大浴場」、「快適性」や「駅近」だった。


出張族に人気のビジネスホテルに「ドーミーイン」(運営会社:共立メンテナンス)がある。各種のビジネスホテル調査でも必ず上位にランクインし、筆者も過去に利用してきた。


「国内出張の多い私にとって、ドーミーインは定宿(じょうやど)ともいえる存在。これまでに50泊はしてきたと思います」(50代の男性)


同ホテルのこだわり4本柱は「①快適な客室②大浴場(サウナ)③朝食④夜鳴きそばを含む無料サービス」と聞く。どんな思いで運営しているのか、施設を訪れて責任者に話を聞いた。今回は大浴場と朝食を紹介したい。


■80%超のホテルで「天然温泉」を実現


「当社は1979年に設立後、学生寮や社員寮の運営で事業を拡大し、現在も全国に500棟以上を展開しています。寮事業で培ったのが、入寮者の方に『わが家』と感じてもらえるような取り組みで、ホテルでも“食・住・癒”のサービスを心掛けています。


ドーミーインブランドでは現在、全国に95棟を展開していますが、1995年に開業した2棟目の『ドーミーイン蘇我』(当時。現在は『ドーミーイン千葉City Soga』)から浴場と、それに付随したサウナを設置するようになりました」


共立メンテナンスの平山恵一さん(ドーミーイン事業本部 首都圏事業部部長)はこう話す。宮城県仙台市出身の平山さんは、仙台のほか、北海道や中四国九州の施設でも勤務してきた。


撮影=プレジデントオンライン編集部
ドーミーイン事業本部 首都圏事業部部長の平山さん - 撮影=プレジデントオンライン編集部

同ホテルに宿泊経験がある人はご存じのように、多くの施設で「天然温泉」を掲げている。


「施設によって掘削(くっさく)した“自家源泉”と“運び湯”がありますが、95棟のうち78棟が天然温泉大浴場を完備しております。唯一、大浴場を設置していない施設が『ドーミーインEXPRESS松江』(島根県松江市)で、その分、快適にお過ごしいただけるよう全室にテレビモニター付バスルームを設置し、フロントにて入浴剤も提供しています」(平山さん)


「出張先のホテルで私が選ぶ基準は、①アクセス、②新しい(キレイ)、③バス・トイレ一緒の設備はイヤ(大浴場あったらうれしい)の3つです」(30代前半の女性)


昨年の筆者調査ではこんな声も聞いた。近年はビジネスホテルでもトイレ・バス・洗面台を別々に設置する「3点分離」が進むが、ドーミーインはさらに先の快適性を訴求している。


■シャワーが勝手に止まらない


サウナについては次回で紹介することにし、まずは大浴場のこだわりを聞いてみた。


「大浴場の設(しつら)えは和風が基調です。内湯、露天風呂、サウナ、水風呂が基本構成で、浴槽の種類は岩風呂、檜風呂、壺風呂があります。また荷物を預けるロッカーは基本的には正方形。一部の施設では縦長もありますが、これは日帰り入浴客にも対応した結果です」(平山さん)


多くの施設では、建物の最上階に大浴場が設置されている。


「最上階への設置は建築費などコストアップにつながりますが、開放感もあり、外気浴の提供も可能ですから“癒やし”の視点でも重視します。『天然温泉』『最上階の大浴場』はドーミーインの特徴として認知されており、可能な限りこだわりたいです」(同)


今回、取材したのは「ドーミーイン池袋」(東京都豊島区)だ。駅近ではなくJR池袋駅から徒歩約10分の立地だが、“天然温泉 豊穣の湯”を掲げ、最上階の15階に露天風呂付き大浴場とサウナを備える。和風の造り、浴場内のこだわりは説明で聞いた通りだ。


撮影=プレジデントオンライン編集部
ドーミーイン池袋の最上階にある大浴場。お湯は保温・保湿の美肌効果や皮膚疾患などの効能があるとされる「黒湯」だ。 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

実際に利用すると、細かい配慮にも気づく。たとえばシャワーはレバーを戻さない限りお湯が出続ける。シャワーヘッドは高い洗浄力と節水機能を持ち併せ高機能と評判の「ReFa」製だ。


「頭髪を洗っている時に止まると小さなストレスを感じると思います。自動停止に比べて水道代はかかりますが、これも快適性を重視した結果です」(同)


ドーミーイン池袋の独自サービスが、浴場内に「ポカリスエット」があること。備え付けの紙コップに自分で入れて好きなだけ飲める。発汗した後の身体に心地よい。(※ 2月8日以降は、ポカリスウェットの提供から脱衣所でのドリンクサーバー設置に変更。ポカリスウェット、リアルゴールドなど選べるように。)


撮影=プレジデントオンライン編集部
温泉好きにもサウナ好きにも「激熱」なポカリ飲み放題のサービス(取材当時)。 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

■いつでも大浴場が使える


長時間の営業も持ち味だ。多くの施設で「15時〜翌日10時」(サウナのみ深夜1時〜5時は停止)となっている。以前、仕事仲間と競合ホテルの大浴場付き施設に宿泊したことがあるが、23時頃に営業終了となり、酒好きの相手は酒場巡りで利用できなかったという。ドーミーインならホテル帰着が深夜でも利用でき、朝風呂も楽しむこともできる。


「長時間ご利用いただけるのは喜ばれますが、サウナは設備点検とお客さまの安全性から深夜は止めさせていただいています」(平山さん)


無料でアイスや乳酸菌飲料を提供しているのも人気だ。従業員がアイデアを出し、採用された結果だという。池袋では、エレベーターを降りると真っ先にアイス置き場に行くお客もいた。


多くの施設では、ご宿泊のお客様に大浴場をご利用して頂きたく各部屋にシャワー室のみ設置している。大浴場利用者が多く、部屋のシャワーを使わないままチェックアウトする宿泊客も多い。


撮影=プレジデントオンライン編集部
取材当日に用意されていたアイスは、ソーダバー、カルピスバー、チョコ掛けバニラアイスバー、バニラのアイスモナカの4種。 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

■朝食に「ひつまぶし」が出る


「朝食」も長年の寮運営で培った経験を進化させてきた。


「各施設の立地の特徴を生かした朝食を提供するのがモットーです。ドーミーイン池袋では“町中華”が多い池袋の特性を考え、中華メニューに力を入れました。焼き餃子やシューマイ、チャーハンの他、中華小鉢もたくさんご用意しています」(平山さん)


こちらは2階のレストランにてビュッフェスタイルで楽しめる。朝食に力を入れる競合ホテルにも宿泊してきたが、餃子やチャーハンがあるのは珍しい(朝食料金:2300円、3歳以上〜小学生以下:1100円、2歳以下:無料。すべて税込)。取材当日は季節のラーメンとして「牡蠣(かき)そば」が用意されており、1杯ずつ手作りで提供されていた。


前夜、名物「夜鳴きそば」(ハーフサイズで宿泊客は無料。21時半〜23時提供)も味わったが、あっさりした醤油味。一方の朝食提供「牡蠣そば」は塩味だった。


筆者撮影
ドーミーイン池袋の夜鳴きそば。 - 筆者撮影

別の日、名古屋出張の前に豊橋駅で下車して「ドーミーインEXPRESS豊橋」(愛知県豊橋市)を訪れた。12月13日にオープンしたばかりの新施設だ。こちらの朝食も地元色を打ち出している。目を引いたのは「ひつまぶし」や「どて煮」などのメニューだ。(朝食料金:1800円、3歳以上〜小学生以下:900円、2歳以下:無料。すべて税込)


「愛知県のご当地料理である“ひつまぶし”や“どて煮”などのほか、豊橋に本店がある“ヤマサちくわの豆ちくわ”も提供しており、卵や白米、牛乳、ヨーグルトなども地元産を用いています」(「ドーミーインEXPRESS豊橋」支配人の山本章さん)


筆者撮影
ドーミーインEXPRESS豊橋の朝食例。「ひつまぶし」(右上)と「どて煮」(左上)。 - 筆者撮影

これまで別企画でも当地を取材してきたが、養鰻業が盛んな浜名湖や三河一色に近いせいもあるのだろう。豊橋市や豊川市は「うなぎ」の名店が多い。


■進化する消費者の先を考える


近年、有名になったのが「豊橋カレーうどん」だ。うどんの下にとろろご飯とウズラの卵があるもので、2010年に誕生し、老舗店「玉川うどん」(豊橋市広小路)が中心的な役割を担ったと聞く。


「カレーうどんは、ドーミーインEXPRESS豊橋でも開発中です。特にビジネスでご利用されるお客さまは、仕事の都合でご当地の名物料理を楽しめない時もあると思います。今後もお客さまの声を参考に、地元らしいメニューに注力していきます」(ドーミーイン事業本部 東海北陸エリア リーダー 近藤修一さん)


こんな声も紹介しよう。「私の出張ホテル選びは、①朝ごはんの内容、②大浴場があるか、です。立地場所はタクシーを使うことも多く、優先度は低いです」(30代後半の男性)。


マーケティングや商品開発の現場では「消費者はどんどん進化する」という共通認識がある。ドーミーインが最初に訴求した1995年にはなかった「ビジネスホテルの大浴場」も今では多くの競合が取り入れるようになり、それを利用する消費者の目も肥えた。


撮影=プレジデントオンライン編集部
「ドーミーイン池袋」の女性大浴場にはReFaのドライヤーも。 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

「朝食」も同様だ。和食・洋食・中華メニューに加えて、各施設ならではの特徴を打ち出さないと支持が広がらない。中には「朝食付き」として提携する近くのカフェでパンメニューを提供するビジネスホテルもあるが、施設内でメニューを深めるホテルも増えてきた。


とはいえ、ラグジュアリーではないビジネスホテルは「経費」や「予算内」で宿泊するお客(消費者)と向き合う。その中で何にこだわり顧客満足を追求するか。後編ではドーミーインの「サウナ」を中心に紹介したい。


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高井 尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト/経営コンサルタント
学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。
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(経済ジャーナリスト/経営コンサルタント 高井 尚之)

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