リモートワークは机を置く向きで決まる…一級建築士「仕事の生産性が爆上がりするデスク配置の正解」

2024年2月19日(月)15時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

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在宅ワークの生産性を高めるために、仕事部屋の環境はどうするべきか。一級建築士でYouTuberのげげさんは「在宅ワークは外で体を動かす機会が減り、結果的に生産性が下がりがちなので、自宅でもスタンディングデスクを設置するなど、自然に動けるよう環境を整えると、健康にかつ集中して仕事ができる。またデスク自体に向かう機会が多いなら、窓に対して垂直方向にデスクを配置する『アイランド型』がいい。ある程度のスペースは必要だが、圧迫感がなく、ほどよい自然光が横から入って目が疲れづらくなり、オンライン会議のカメラ映りもいい」という——。

※本稿は、げげ『後悔しない家づくりのすべて』(サンクチュアリ出版)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/mapo
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■新時代の間取りは「リモート化」「職住融合」「地方移住」がキーワード


2020年からのコロナ禍によって、住宅のあり方が大きく変わったのは間違いありません。きっとこれまではなかった新たな間取りの形が普及していくはずです。アフターコロナにおいて住宅に影響を与える要因としては、仕事の「リモート化」、家にいながら仕事をする「職住融合」、人が都会から地方へと移り住む「地方移住」の3つがあると私は考えています。


そして住宅の間取りも、それに合わせて形を変えていくはずです。


具体的にどのような間取りが増えるか。まずリモート化に対応すべく、書斎やデスクスペースをつくる人が増えています。フリーランスの方々も増え、自宅にオフィスを設ける人や、家内でカフェやショップを営む人も出てくると思います。


車を「ひとつの部屋」ととらえ、移動しながら生活をする「バンライフ」という考え方も今後広まりそうです。仮に毎日車で寝るなら、家の間取りは激変します。これらはあくまで予想ですが、少なくとも住宅のあり方が岐路に立っているのは間違いないでしょう。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

■寝室以外にこもれる、テレワークのできる書斎をつくる


現代でもはや欠かせない仕事の手段になりつつあるのが、テレワークです。テレワーク化はインターネット時代の世界的な潮流であり、コロナ終息後も確実に残り続けるでしょう。


それを考えると、自宅にはできれば書斎をつくり、テレワークに活用したいところ。個室がひとつあれば、専用の機材を設置でき、映像や音質を安定させやすいです。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

書斎といえば、住宅展示場でよく見るのが、2階の寝室に隣接したオープンなものですが、個人的にはおすすめできません。そこで夜に作業をする場合、家族の安眠の妨げとなるからです。


個室でつくるとして、必要な面積はどれくらいか。重要なのは、机のサイズと機材の量です。職場のデスクや収納のサイズなどを計り、参考にしましょう。


長時間過ごすなら、空調や換気、窓といった快適に過ごせるような要素を整備する必要があります。防音については、コストの問題もあるため、そこまでの設備が必要かどうかを検討すべきです。


出所=『後悔しない家づくりのすべて
出所=『後悔しない家づくりのすべて
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■「デスクの背後に窓がくる」はダメ


在宅ワークなどで長時間、デスクに向かう機会が多いなら、より快適に作業ができるよう、デスクの位置を工夫しましょう。


おすすめは、窓に対して垂直方向にデスクを配置する「アイランド型」。ある程度のスペースは必要ですが、圧迫感がなく、ほどよい自然光が横から入って目が疲れづらくなり、カメラ映りもいいです。ちなみにデスクの背後に窓がくると、逆光でウェブ会議などがしづらいため、背後には壁か収納がくる配置がいいでしょう。


もし短時間しか作業しないなら、壁や窓にデスクをつけ、コンパクトに収めてもいいのですが、デメリットもあります。壁が目の前だとやはり圧迫感があり、光の量も減って暗くなりがち。反対に窓のほうに向いていれば、圧迫感や暗さはなくなりますが、今度は明るすぎてモニタが見づらく、目が疲れます。


私は実際にアイランド型に変えて、明らかに作業が快適になり、疲れづらくなりました。スペースに余裕があるならぜひ試してほしいところです。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

■仕事や趣味の充実をはかる防音室のコスト


外出自粛や仕事のリモート化により、家で過ごす時間が増えましたが、家でも趣味で楽器を弾いたり、ホームシアターで映画を見たりするために、防音室の設置を希望する人が増えています。


防音室は、用途によって求められる防音レベルが変わり、それがコストに反映されます。


隣の部屋や屋外にも聞こえないようにするには、相当なレベルの防音が必要になります。コストとしても、たとえば大きな音が出る楽器を弾きたいなら、4畳半で100〜200万円かかります。ホームシアターとして使い、家の外に音を漏らさないにしても、中レベル以上の防音設備を設ける必要があります。


一般的な書斎であれば、そこまで高いレベルの防音は必要ないことがほとんどで、建具を遮音配慮タイプにして隙間を埋めたり、吸音材を床やドアに貼ったりといった対策で済み、コストとしても30万〜50万円に収まるはずです。DIYを行えばさらにコストダウンできますが、換気や冷暖房の計画だけはしっかりと立てねばなりません。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

■オン・オフを切り替えやすい家づくり


在宅ワークが増えると、外で体を動かす機会が減り、運動不足になりがちです。ずっと家にこもっていると、気分も塞ぎやすく、動かない分血流が悪くなって、結果的に生産性も落ちるといわれます。


自宅でも自然に動けるよう環境を整えると、健康に、かつ集中して仕事ができます。


私がおすすめしたいのが、スタンディングデスクの設置です。椅子に長時間「座りっぱなし」でいるほど心身に悪影響が出て、がんをはじめとした重篤な病気にかかるリスクが上がることが研究で明らかになっています。


それを予防するためにも、立った状態でも使えるスタンディングデスクの導入は有効です。私は高さが自動で変えられるデスクを使っており、1時間座りっぱなしが続くとアラームが鳴り、そこで机の高さを上げて立って仕事をするようにしています。


そうすることで、作業に集中するあまり、座りっぱなしの時間が長くなってしまうことを防いでいます。


ストレスを減らすには、窓を設けたり、家のさまざまなところに作業できるスペースをとったりして、気分転換が行える環境をあらかじめ用意しておくといいと思います。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

また、照明をうまく使うと、仕事と休憩時間というオン・オフのコントロールの助けとなります。照明の色は、人間の集中力に影響を与えることがわかっており、集中しやすい色と、リラックスしやすい色があります。


集中できるのは、太陽光に近い「昼白色」や、やや青みがかった「昼光色」、逆にリラックスするなら、電球のような黄色やオレンジ色がおすすめです。仕事をする空間で使う照明器具は、調光調色ができるものをセレクトして、状況に応じて色を使いわけるといいでしょう。


その他に、「二酸化炭素の濃度」が高まると、集中力や認知機能が低下するという研究がありますから、部屋の適度な換気を心がけます。また、二酸化炭素濃度チェッカーなどを導入するのもおすすめです。特に、気密性の高い住宅においては、書斎にも窓や換気扇を設置し、空気が入れ替わるようにしておきましょう。


出所=『後悔しない家づくりのすべて
出所=『後悔しない家づくりのすべて

■「宅配ボックス」で再配達をなくすことは地球環境にもやさしい


コロナ禍により注目されるようになった、宅配ボックス。対面の必要なく荷物を受けとれるのに加え、留守でも荷物を置いていってもらえるなど、さまざまなメリットがあります。


現在、「巣ごもり消費」が増加の一途を辿り、荷物を運ぶ宅配業界は人材不足に陥っています。そして、人手を要する大きな要因になっているのが、不在による再配達で、年間9万人もの労働力が無駄にかかっているといいます。宅配ボックスにより再配達をなくせば、それだけで生産性が大きく改善され、宅配業界でもよりきめ細やかなサービスが行えます。


再配達の撲滅は、地球環境にもプラスに働きます。再配達のために走るトラックから排出される二酸化炭素は、およそ42万トンともいわれます。


温室効果ガスである二酸化炭素の排出を抑えるのは、地球という「生き物の家」を守るため、私たちがやらなければならないことです。家をつくる段階から、宅配ボックスの設置を前提に、その置き場所や動線を検討してはどうでしょう。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

■ダウンライト、食洗機…埋め込みやビルドインは慎重に


「ビルドイン」や「埋め込み」の住宅設備といえば、何を想像しますか?



げげ『後悔しない家づくりのすべて』(サンクチュアリ出版)

ダウンライト、食洗機、天井埋め込みスピーカー、埋め込みエアコン、ユニットバスオプションのテレビ、など……現代の住宅には、さまざまな設備や家電がビルドインされています。


また、近年の通信技術やAI技術の発展により、近年の家電の進化には、特に目覚ましいものがあります。今後の進化を考えると、埋め込みやビルドインで家電を設置することに慎重になる必要があります。


家電をはじめとした設備は、家よりも歳をとるスピードが速く、10〜15年で交換となるケースが多いですが、そうした際に埋め込みやビルドインだと、更新する手間とコストがかかります。家を建てた当時は最先端の家電であっても、15年もすれば時代遅れになる可能性があり、新たなものに替えたいと思っても、気軽にはできないのです。


スマートフォンのアプリのように、住人が臨機応変に交換できる設備設計にしておくと、家は時代遅れになりにくいはずです。


出所=『後悔しない家づくりのすべて

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げげ(⾦⾕ 尚⼤)(かなたに・なおひろ)
一級建築士YouTuber
⼀級建築⼠事務所げげ代表。1990年⽣まれ。兵庫県出⾝。大学卒業後、新卒で積水ハウスに⼊社。6年で100棟以上の住宅・店舗設計を経験後、独⽴。「住まいの満⾜度を上げ、豊かな⼈⽣を送る⼈を増やす」をミッションに、新しい時代の常識にとらわれない家づくりを提案している。「後悔しない家づくり」の仕組みを、誰にでもわかるようにルール化したYouTubeが話題。
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(一級建築士YouTuber げげ(⾦⾕ 尚⼤))

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