「砂漠を旅する人」に水を売るのは三流…一流営業マンが知っている"本当に欲しいもの"の見抜き方

2024年2月21日(水)7時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fbxx

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営業力が高い人にはどんな特徴があるか。経営コンサルタントの河田真誠さんは「客が欲しいと思っているものを売るのは簡単だが、営業力がある人は商品の価値に気づいていない客に売ることができる。営業のある人は、砂漠を旅する人に水を売るのではなく、本当に必要なものを見極めることができる」という——。(第1回)

※本稿は、河田真誠『売らずに売れる技術』(ワン・パブリッシング)の一部を再編集したものです。


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■水、ラクダ、地図、方位磁石、食料…はダメ


お客様には「困っているから買いたくなる」という傾向がありますが、実はお客様には2種類のタイプがあります。この違いを理解していないと、売上を上げていくことが難しいので、じっくりお伝えしますね。まず、両者の違いを理解していただくために、簡単な質問をします。あなたの答えを書き出してみてください。


Q.砂漠を旅する人向けのお店を開くことになりました。何を扱えば、儲かると思いますか?

この質問は、今まで、研修や講演などでも多くの人に投げかけてきました。みんなからあげてもらった答えを、僕のほうで、AとBの二つのグループに分けてみたのですが、何を基準に分けたと思いますか?


■Aグループの答え……水、ラクダ、地図、方位磁石、食料、洋服、車、簡易トイレ
■Bグループの答え……スーツ、毛布、保険、「砂漠の楽しみ方」という本、インスタ映えポイントの紹介、砂漠ダイエット教室

完全に僕の主観なのですが、Aグループは「言われなくても、買おう! と気づいていたもの」。Bグループは「言われてみれば、たしかにいいな! と気づいたもの」です。砂漠に行くときにスーツなんて、僕は思いつきませんでした。


でも、この答えを教えてくれた人が言うには、砂漠を旅するときにもっとも適した服装がスーツなんだそうです。あるマンガに書いてあったそうです。その真偽はさておいて、ここで伝えたいことは、お客様には、自分が必要なものに「気づいている人」と「気づいていない人」がいるということです


■どうすれば「欲しい気持ち」を引き出せるか


たとえば、僕は「ルイボスティー」が大好きなので、ルイボスティー屋さんを始めたとしましょう。「どうすれば売れるだろうか?」と考えるとき、ルイボスティーの価値に「気づいている人」と「気づいていない人」の2種類のお客様がいて、それぞれ売り方が変わってきます。


ルイボスティーの価値に「気づいている人」には、「他のルイボスティーとの違い(特長)」をつくり、それを訴求していけばいいですよね。では、ルイボスティーの価値に「気づいていない人」に対してはどうすればいいでしょう?


気づいていない人というのは「まだ飲んだことがない人」か、「これまでに飲んだルイボスティーはおいしくないと思った人」ですよね。そういう人には、「僕のルイボスティーの価値や魅力に気づいてもらう」ということが必要です。簡単に言うと、商品の価値に気づいている人には「他者(社)との違い」を、気づいていない人には「この商品を買うことで幸せになれること」を伝えていくといいですね。


そうすることで「欲しい気持ち」を引き出すことができます。


たとえば、僕は「上司向けの質問力」という研修プログラムを企業に提供しています。「上司が指示命令をやめて、問いかけをすることで自分で考えて行動する部下を育てていく」という内容です。僕の本などで勉強されている経営者や人事部の方などは、「なぜ、上司に質問力が必要か」をすでにご存知なんですね。「気づいている人」です。こういう方には、研修プログラムの提案書をお送りするだけで契約が成立します。


■「気づいている人」に売るのは簡単


一方、偶然出会った方や、人づてにご紹介いただいた方などは、「なぜ、上司に質問力が必要か」をご存知ありません。まだ「気づいていない人」です。こういう方には、面談の時間をいただいて、1時間くらい対話をして「上司の質問力」の必要性に気づいてもらい、「欲しい!」を引き出しています。


商品の価値に「気づいている人」と「気づいていない人」がいるというお話をしました。もちろん、両方に売ることができるといいのですが、僕は、「気づいていない人に売る」ことに力を入れていくほうがいいと思っています。たしかに、「砂漠を旅する人に水を売る」といったように、商品の価値に「気づいている人」にそれを売るのは比較的簡単ですよね。本人も「欲しい」と思っているのだから、会話をする必要もないかもしれません。


「この水の特長」と「価格」を伝えればいいですよね。相手はそれで買うか、買わないかを判断することができます。ただし、これには大きな問題もあります。ライバルが多くなるのです。選ばれるために自分の店の特長などを打ち出し、その違いがいいものであればあるほど、すぐに他店もマネをします。そうなると、最終的には価格の競争になり、お客様を奪い合うことになります。そこで、大切になるのが「気づいていない人に売る」ということです。


写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■「気づいていない人」に売れば市場が広がる


「気づいていない人」に広げていくことができると、新しいお客様が生まれ、市場全体を拡大することができるので、競合とお客様の奪い合いをしなくていいのです。ライバルたちが奪い合っている中、自分だけは新しいお客様に目を向ければいいのです。


ここまで、売れるためには相手の欲しい気持ちを引き出すこと、価格競争に陥らないためには商品の価値に「気づいていない人」に気づいてもらうことが必要だというお話をしました。この「引き出す」「気づいてもらう」ために必要なのが、相手との「対話」なのです。


売れる技術
商品の価値に「気づいていない人」に気づいてもらう

お客様と対話をするときの僕のオススメの方法が「聞く」「問う」「話す」を意識して行うということです。突然ですが、質問です。


Q.最近、「うまくいっていないな」と思うことは何ですか?

一旦この記事を読むのを中断して、ノートに書き出してみてください。


「朝起きるのがツラい」
「仕事がたまっている」
「人間関係が少しギクシャクしている」

など、どんなことでもいいので、素直な答えを書いてみてくださいね。


■説得して売っても満足にはつながらない


今、あなたは、自分の問題や課題を自分の言葉で書き出しました。そこに書かれていることは、自分で書いたことなので、深く納得できますよね。しかし、そこに書かれたことを「これがあなたの問題や課題ですね」と他人から指摘されたら、どう思うでしょうか?


信頼関係ができていたら、素直に「たしかにそうだね」と思えるかもしれませんが、多くの場合、「そんなことないよ」と言いたくなるでしょう。つまり、他人から言われるよりも、自分で考えたり話したりするほうが、自分の気持ちに気づき、深く納得できるのです。


同じように「欲しい」という気持ちも、他人から伝えられるよりも、自分の言葉で話すほうが、自分で自分の気持ちに気づき、納得感が高まります。そのためには、「聞く」や「問う」が必要です。「聞く」や「問う」で、相手の「欲しい」を引き出すことをせずに、相手を説得して売っていたのでは、お客様の本当の満足にはつながっていきません。「聞く」と「問う」は違うんですよね。


「聞く」は、相手の話を受け取ること。相手は自分が理解していること、意識していることを話してくれます。話題も相手次第になります。そこで、「問う」ができると、もう一歩、踏み込んだ話題になります。「問う」は、価値観や気持ちなど、相手が意識していないことまで引き出すこと。「自分にこんな問題や思いがあったんだ」と気づいてもらうことができます。これが営業や商談においてはとても大切なのです。


写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

■「聞く」「問う」「話す」で「欲しい」を引き出す


「聞く」と「問う」で相手にたくさん話してもらい、「欲しい」という気持ちを引き出すことができたら、次はこちらが「話す」番です。「聞く」と「問う」でできることは、相手の気持ちや考えを引き出すこと。しかし、「聞く」と「問う」ではできないこともあるのです。それは、「相手が知らないこと」に気づいてもらうことです。



河田真誠『売らずに売れる技術』(ワン・パブリッシング)

どれだけ聞いても、どれだけ問いかけても、「相手が知らないこと」を引き出すことはできません。そこで、こちらから話すことで、「こういう考えもあるよ」「こういうものもあるよ」「こんな未来が待っているよ」と伝えることが必要です。それによって、相手の「欲しい」という気持ちを大きく育てていくことができます。


ここまでをまとめると、売れるためにすることは、「聞く」「問う」「話す」で相手と対話をし、相手の「欲しい」を引き出し、大きく育てていくということです。これはとても大切なので、覚えておいてくださいね。


売れる技術
「聞く」「問う」「話す」で、お客様の「欲しい」を引き出し、育てる

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河田 真誠(かわだ・しんせい)
経営コンサルタント
1976年生まれ。広島でデザイン会社を経営後、2010年より東京を中心に、企業へのコンサルティングや研修、小中高校大学での講演、起業家や士業のサポートなどをする。主な著書に『革新的な会社の質問力』(日経BP)、『人生、このままでいいの?』(CCCメディアハウス)、『悩みが武器になる働き方』(徳間書店)、『悩み方教室』(CCCメディアハウス)、『売らずに売れる技術』(ワン・パブリッシング)などがある。
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(経営コンサルタント 河田 真誠)

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