勉強が続く人は知っている…働きながら司法試験に一発合格の達人が「細かい計画を絶対に立てるな」というワケ

2024年2月24日(土)10時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Olga PS

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仕事をしながら勉強を継続できる人は何をしているか。弁護士で公認会計士の佐藤孝幸さんは「社会人の勉強は『仕事をしながら』が前提でトラブルがつきものであるため、1年先、1カ月先の予定は考えてはいけない。きっちりとしたスケジュールに例外が入ってくると、人は焦る。リズムを崩し勉強するのが嫌になりかねない。そのため私は資格試験を受けるときは2年を期限にすることだけを決め、ある程度コントロールできる『明日のこと』だけ考えるようにしている」という——。(第3回/全4回)

※本稿は、佐藤孝幸『仕事と勉強を両立させる時間術』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/Olga PS
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■モチベーションがありながらやる気が出ないならやるな


本稿では「勉強があまり習慣化していない人」を想定し、仕事と勉強を両立していくための意識やコツを説明していきます。


資格勉強している方にもっとも多いのは「どうすれば仕事をしながら勉強時間を確保すればよいか?」という悩みの声です。そして、その次に多いのが「どうすれば勉強に集中することができるか?」というものです。


どうすれば集中できるか、その問いに対する答えとしては、「やる気が出ない、集中ができないことなら無理してやる必要はない」です。


先の記事で、「欲と危機感」というキーワードを出しましたが、集中できないのはこの2つが欠けているからです。つまり自分自身、それほど必要性を感じていないのです。


「そんなことをしなくとも、ある程度満足している」という言い方もできるでしょう。


たとえばTOEICでいいスコアを出せれば給料が上がるという制度を持つ会社もあります。


また、資格を取ればできる仕事が増えるとか、昇進につながるとか、転職したい、独立起業をしたい、そんな事情の人もいるでしょう。


しかしいずれにせよ、そうしたモチベーション、要因がありながらやる気が出ないというのなら、それは本当に自分のやりたいことではないのです。


また、やるべきことではないのだと思います。


■楽をして結果を出す方法は存在しない


本当はやる気もないのに、何となくだらだらと続けていくのはいいことではありません。


「結果を出さなくてもいい」というのであれば話は別ですが、そうではないはずです。


そんな中、モチベーションの低いまま続けてもコストと時間は減っていくばかりですし、それなら方向転換した方がいいでしょう。


「それでは困る」というのであれば、もっと意識を高く持ってください。


残念ながら、やる気や集中力はおまじないで高めることはできません。自分自身でコントロールしなければならないものなのです。


と、あえて突き放した言い方をしましたが、まずは「楽して結果を出そう」なんていう考えは捨てなければいけません。自分に合ったやり方というのはいくらでもあるでしょうが、努力をしないで結果を出す方法などありません。


可能なのは、結果を出すための労力と、そこにかける時間を必要最低限にすることです。


適切にポイントをおさえ、労力のかけ方を変えれば、結果が出るまでのスピードも変わります。


結果を出している人で、努力を怠っている人、ずるをしている人などいません。


いたとしても、それで結果を出し続けることは不可能です。自分や自分の目標にとって必要な努力を果たしているからこそ、彼らは結果を出しているのです。


出典=『仕事と勉強を両立させる時間術

■ためらっている時間も惜しめ


アンソニー・レゲットという研究者をご存知でしょうか? 2003年にノーベル物理学賞を受賞したアメリカの大学教授です。あるとき日本で行われた彼の講演を聞きに行ったのですが、題目は「ノーベル賞への風変わりな道のり」というものでした。


どんなふうに変わっているかというと、レゲット教授はそもそも、物理学者ではなかったのです。物理学者に転向したのはオックスフォード大学で哲学やローマ史を学んだあと。


興味のおもむくままに勉強していった結果が、「超伝導体と超流動体研究」だったそうなのです。その講演でレゲット教授は、「ある分野で一流になるには、興味を持ったことをどんどん勉強していけばいい。その勉強は決してムダになることはない」と仰っていました。


私もレゲット教授の意見に賛成で、興味があるのならチャレンジすべきだと思います。


これまで私は外資系企業への就職からはじまり、USCPAの資格、アメリカの公認会計士事務所、司法試験、弁護士というキャリアを歩んできました。そして、弁護士をしている今も1年に1度くらいのペースで資格取得を目指し勉強をしています。


それは、ある仕事をしていたり勉強をしたりしていると、ふと「あ、自分にはこの分野の知識が足りていない」とか「この分野の知識をつけたら仕事も楽になるなぁ」とか、そういうことに出会う機会があったからです。


たとえば06年に取得した「公認内部監査人(CIA)」という資格があるのですが、これは08年4月から「金融商品取引法」という法律が改正され、上場企業の監査が強化されるだろうとわかっていたので、それなら今のうちに知識をつけておこうと勉強をしました。


さらにその勉強過程で「公認金融監査人(CFSA)」という、「公認内部監査人」よりも専門的な資格があることを知り、これも07年に取得することができました。


このように、ある得意分野を1つ自分の中に身につけると、あとは数珠つながりに得意分野が広がります。結果効率的に勉強することが可能になり、時間が圧縮されるのです。


出典=『仕事と勉強を両立させる時間術

■個人を「コングロマリット化」することでリスクが減る


これまで私が資格を取ってきたのには、自分を「コングロマリット化」しようという意識があったからです。コングロマリットとは1つの企業が複数の事業を抱えていること。「複合企業」と呼ばれています。


要は、自分の会社に複数の事業を持っておけば時代の変化にも対応しやすくなるのです。


変化の多い現代では、その時々社会に必要とされる分野は変わります。


だからこそ企業はコングロマリット化し、自社が複数持っている事業の中で社会にアピールする分野を変えていき、時代に適応させていこうと考えるわけです。


何も企業に限った話ではなく、このことは個人にも当てはまります。


めまぐるしい時代の変化の中で、どんな状況になっても社会で自分の能力を発揮していくには「これは負けない」という分野をたくさん持つことなのです。


そして、時代に合わせて必要とされる得意分野を切り替えていけば、とりあえず「食うに困る」という状況はありません。


自分のいる会社、自分のいる業界、自分自身の5年先も見通しが明るくない……。


そういう方は以前にもまして増えているのではと思います。ですがお伝えしたように、20年前には私もバブル経済の崩壊、会社の業績悪化に直面し、焦りと不安を覚えました。


そして、その漠然とした不安を振り払ってくれたものの1つが資格でした。


■教養と知識を分別しロスを減らせ


今社会に求められる人材は、会社の指示通りに動くサラリーマンではありません。


個人事業主のような自立した考え方、スキルを持ったビジネスマンなのです。


ですから、どうせ勉強をするのであれば自分の今持っている力を底上げしてくれるようなものがいいでしょう。自分の精通している分野をさらに深めるのも1つだと思いますし、間接的に関係してくる分野の知識を身につけるのもいいでしょう。


その意味で資格というのは到達点が見える分目標と期限が立てやすく、専門知識を深めるという意味でとても適しているものだと私は考えています。


もちろん本書の主題は「いかに時間を効率よく使うか」ですし、私自身「簿記を取れ」とか「司法試験を受けろ」とか言うつもりはまったくありません。


前述したように、これから勉強をはじめるという場合はとりあえず興味のある分野を勉強してみることをおすすめします。


そして、勉強の先に資格のようにかたちの見えるものがあるのなら、それをとりあえずの目標として勉強をしてみるといいでしょう。知識がすぐに身になることはなかなかありませんが、いつどんなところで役立つかわかりません。


ある分野に違った分野の考え方や知識を織り交ぜることで新たな化学反応が起こる可能性はあり得ます。


ただ、趣味の「教養」と、勉強して身につける「知識」の線引きをして、必ず目標と期限の設定を忘れないでください。


無意味に時間を使ってしまうことだけは避けましょう。


出典=『仕事と勉強を両立させる時間術

■細かい行動スケジュールは立てるな


私が資格試験を受けるときは2年を期限にするという話をしましたが、その際、それ以外のことは決めないようにしています。


というのも、日々のスケジュール(特に勉強スケジュール)を立てるうえで必要なのは、「明日」のことを考えることなのです。反対に、1年先、1カ月先のことは考えません。



佐藤孝幸『仕事と勉強を両立させる時間術』(クロスメディア・パブリッシング)

なぜなら、一日中勉強に時間を使える学生とは違い、社会人の勉強は「仕事をしながら」が前提だからです。


突然の打ち合わせ、客先とのトラブルなど、仕事にはトラブルがつきものでしょう。


自分の仕事はコントロールできても、相手の都合はコントロールできません。家庭で家事をしている人なら、家族が病気になることもあるでしょう。


きっちりとしたスケジュールにそうした例外が入ってくると、人は焦ります。焦るあまり、無理をしてリズムを崩すことがあるかもしれません。


あるいはスケジュールどおりにいかないのが嫌になり、「どうせうまくいくわけない」なんて考えて、勉強に対するモチベーションを下げてしまうこともあるでしょう。目標のために立てた計画のせいで、目標が達成できなくなる。それでは本末転倒もいいところです。


綿密に立てた計画であればあるほど、それは自分の中での理想的なスケジュールになりやすく、現実味がなくなってしまいます。かといって、多少ゆるめのいいかげんなスケジュールを立てたところで、予期せぬトラブルが続くことで結局“なぁなぁ”になってしまいます。


ですが、今日やるべきこと、あるいは明日やるべきことくらいまでであれば、ある程度はコントロールできます。


勉強で大切なのは、ペースを守り、とにかく続けることです。


融通の利かないスケジュールを立てるくらいなら、トラブルにも臨機応変に対応できるやり方で進めていくべきでしょう。


出典=『仕事と勉強を両立させる時間術

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佐藤 孝幸(さとう・たかゆき)
弁護士、米国公認会計士
公認内部監査人(CIA)・公認金融監査人(CFSA)・公認不正検査士(CFE)。早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系銀行に就職。職場における資格の強さを実感し、米国公認会計士資格の取得を目指す。働きながら勉強を開始し、わずか1年で米国公認会計士試験に合格した。その後、米国の大手会計事務所に就職し、渡米。帰国後を視野に入れて、米国在住のまま司法試験の受験勉強を開始。2年間の独学で、帰国後に一発合格、弁護士となる。現在、弁護士業務のかたわら、資格取得を目指す方の「資格勉強お悩み相談」を受け付けている。
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(弁護士、米国公認会計士 佐藤 孝幸)

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